社会
OKIグループは、企業理念に掲げた「進取の精神」のもと、社会課題解決への貢献を目指す企業として、業務を通してつながる一人ひとりの人権に配慮することが、あらゆる活動の基盤と認識しています。「国連グローバル・コンパクト」の署名企業として、「国際人権章典」「労働における基本原則および権利に関する国際労働機関(ILO)宣言」などの人権に関わる国際規範を尊重し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた取り組みを推進します。
こうした考え方について、グループのすべての役員・社員、そしてOKIグループの事業、製品やサービスに直接関わるサプライヤーその他の関係者にも理解をいただくべく、2022年度に国連「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」を踏まえた「OKIグループ人権方針」を制定しました。
人権に関する取り組みは図に示す通り、サステナビリティ推進体制の中でテーマごとに推進しており、「OKIグループ人権方針」に則った人権デュー・ディリジェンス(人権DD)の仕組みを構築・運用しています。
なお「是正と救済」については現在、内部通報制度に基づく通報・相談窓口に加えて「ハラスメント相談窓口」を設置し、通報者・相談者の保護を含めた対応手順を定めて運用していますが、これに加えてグループ外のライツホルダーを対象とした窓口の設置を引き続き検討中です。

2024年度の主な取り組み
OKIは「中期経営計画2025」とともに発表したマテリアリティ「持続的成長を支える経営基盤強化」の構成要素として「人権尊重の徹底」を掲げ、取り組みを推進しています。
「OKIグループ人権方針」の制定後、2023年1月には国内外の全製造子会社、2024年8月にはOKI本体の製造拠点や一部の国内製造子会社に対し、人権に関する取り組みや課題を把握するための調査を行いました。いずれも各種国際規範や「OKIグループサプライチェーンCSR推進ガイドブック(※)」に掲げた項目をふまえ、人権(強制労働・児童労働・差別の禁止、結社の自由、労働時間、賃金など)および安全衛生(労働安全、産業衛生、緊急時の備えなど)の取り組みなどについて、書面によるアンケート方式で調査したもので、日本国内の製造子会社に対しては外国人労働者の雇用状況についてもあわせて確認を行いました。特に2024年8月に実施した調査は、RBA(Responsible Business Alliance)に準拠したものとなっています。
こうした準備を経て、2025年1月に、人権デュー・ディリジェンス対応のうち「負の影響の特定・評価」の一環として「人権リスクアセスメント」を実施しました。OKIグループが引き起こす可能性のある人権への負の影響(潜在リスク含む)を洗い出し、優先的に取り組む課題を特定しました。
企業には、自社・グループ会社およびサプライヤー等における人権侵害等を特定し、防止・軽減し、取り組みの実効性を評価し、どのように対処したかについて説明・情報開示していくために実施する「人権デュー・ディリジェンス」の取り組みが求められています。これは、ステークホルダーとの対話を重ねながら、人権侵害等を防止・軽減するための継続的なプロセスです。

出典:責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス
2025年1月、社外有識者を招き、国際機関発行文書、政府発行文書、NPO等による報告等を参考にした人権侵害リスクの洗い出し、深刻度と発生可能性を軸にスコアリングした人権影響リスク評価、優先的に取り組むべき人権に関する課題の特定というステップで人権リスクアセスメントを行いました。その結果に基づき、優先して取り組むべき課題を以下の3領域に特定し、負の影響の防止・軽減に向けた取り組みを関連部門と協議の上、推進しています。
① サプライチェーン上の現場労働者の雇用・就労環境に関する人権侵害
② OKIグループにおける安全で健康的な就業環境の侵害
③ 生産拠点の従業員の労働環境・労働条件に起因する人権侵害
| 代表的なリスク分類 | 想定される人権侵害リスクの事例(一部抜粋) | 負の影響を受けるステークホルダー | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 従業員 | サプライヤー/ビジネスパートナー | 先住民族、地域社会の人々 | お客様 | ||
| 強制労働 |
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〇 | 〇 | ||
| 児童労働・若年労働 |
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| 差別・ハラスメント |
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| 賃金未払い/適正な処遇となっていない可能性 |
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| 安全で健康的な作業環境の侵害 |
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| 過剰・不当な労働時間 |
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| 顧客や取引先企業との無理な交渉に起因する人権侵害 |
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| 結社の自由の侵害・団体交渉権の侵害 |
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| 国際規範に則った公正なビジネス慣行 |
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〇 | 〇 | 〇 | |
| 環境および地域社会への影響 |
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| 個人情報保護に関するリスク、プライバシーの侵害 |
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〇 | 〇 | 〇 | |
| 表現の自由の侵害 |
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| 紛争地域取引による人権侵害への関わり |
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〇 | 〇 | ||
| 製品・サービスに関連する人権侵害リスク |
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〇 | 〇 | ||
| テクノロジー・AIに関する人権問題 |
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〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 救済にアクセスする権利の侵害 |
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2024年度は、前年度に続き国内グループの全社員を対象に実施したサステナビリティ教育(2025年1月~2月実施、受講率99.9%)にバリューチェーンおける人権尊重の説明を組み込みました。
また、グループ内においては人権・労働関連のリスクを「共通リスク」としてマネジメントしており、人権・ハラスメントを含む「労働環境」をテーマとした国内グループ向けeラーニングを常時開催しているほか、各階層別教育に「ハラスメント」を組み込むなど、教育に力を入れています。
2024年度は、近年の環境や人権に関わる国際規範の動向などを踏まえ、「OKIサプライチェーンCSR推進ガイドブック」を、JEITA「責任ある企業行動ガイドライン」(Ver.1.1)をベースに、RBA行動規範(Ver.8.0)などを参照し「OKIグループサステナブル調達ガイドライン」として改訂しました。お取引先には、本ガイドラインに基づき、人権、労働などの取り組みに関する調査を計画的に実施しています。
2023年8月には、人権などに配慮した「責任ある鉱物調達」を推進する「Responsible Minerals Initiative(RMI)」に加盟しました。
生成AIを中心にAI活用が進む現在、人権問題をはじめとするAIの社会的影響やリスクについても、世界規模で議論が行われています。OKIグループは「OKIグループAI原則」に則り、リスク管理・品質マネジメント・人材育成の3つの観点でAIガバナンスを推進しています。
品質マネジメントにおいては、AI関連商品の提案・開発段階で専任メンバーがリスクを評価し、結果に基づくお客様との対話などによりAI品質を高める運用を実施しています。2023年度は各事業部門で品質保証に携わるメンバーが自らAIリスクを評価できるよう、従来のAIビジネス研修に加え専門家による実践型のトレーニングを開始しました。また、グループ内のさまざまな業務において社員が生成AIを安全に活用できるよう、セキュリティ対策を徹底したグループ内向けの生成AI基盤を整備し、AIを安全に使うためのガイドライン、教育コンテンツとともに「OKI AI Chatシステム」として2023年11月に提供を開始しました。このシステムを安全かつアクティブに使いこなす「生成AI活用人材」を数千人規模に広げることで、グループとしてAIの理解を深め、事業に積極活用するマインドを醸成します。
