技術広報誌 OKIテクニカルレビュー

産業を支えるDX

軽量化店舗を実現するオンラインタブレット

人口減少や労働力不足、新型コロナの大流行などによる労働環境の変化を背景に、実店舗を持つ業態では店頭デジタル化による業務効率化、コスト削減など収益力確保に向けた検討が進められている。

金融機関でも同様な検討が進められているが、店舗内で発生する事務処理の内、行員がオペレーションしなければならない勘定処理や伝票の現物管理などはデジタル化が進んでいない場合が多い。金融機関の店舗にいる行員は、お客様が記入した伝票や申込書をもとに専用端末で金融機関ホストへ取引オペレーションを実施している。また行員のオペレーションミスをチェックするために、第三者がオペレーション内容を検証し、取引の堅確化を図っている。さらに、取引に使用された伝票は現物保管が必要なため、膨大な保管コストがかかる上に、取引後の後方事務に時間を要している。このように、取引1件に対して発生する事務が多岐にわたり、店舗内の行員は、そうした事務に労力を割き、お客様を相談業務へトスアップさせる余力がなく、収益確保を効率よく実施できない傾向にある。

また、金融機関の取引に必要な端末は一般的に専用機能を持つ特殊端末であり、全店舗同一の構成が基本となっているため、小規模店舗に重厚な機器が設置されるケースも発生し、機器数・種類ともに過剰な状態となっている。

これらの課題を解決するために、金融機関では店頭デジタル化により店頭事務をお客様へセルフシフトし、その上でお客様へ提供するサービスの劣化を最小限におさえ、店舗設備・機器コスト、人的リソースを最小限にし、収益力を確保できる「軽量化店舗」の実現を目指して、さまざまな施策や取組みがされている。

本稿では、金融機関の軽量化店舗施策に対するOKIの取組みとして、接客支援ミドルウェア「CounterSmart」を搭載した窓口業務のデジタル化を支援する「オンラインタブレット」(参考文献1)の仕組みや提供する機能を紹介する。

金融機関での軽量化店舗実現に向けた動向

現在、多くの金融機関では軽量化店舗の実現に向けて、店舗運営の見直しを図っている。一般的には、店舗内で多くの行員が働くような従来の大型店舗を減らし、少人数制の店舗やコンサルティング業務に特化した店舗へのシフトを図り、軽量化店舗の実現を目指している。軽量化店舗へシフトする手段は、インターネットバンキングサービスなどの非対面チャネルの拡充だけでなく、デジタル化された対面チャネルの導入も必要である。

店舗軽量化のためのデジタル化手段はさまざま存在するが、多くの金融機関では「セルフ化」「ペーパーレス」「印鑑レス」などをコンセプトに店頭デジタル化を検討し、その一つに店頭事務をセルフ化する店頭タブレットがある。店頭タブレットとは、従来窓口行員が行っていた取引をお客様自身で実施いただくためのソリューションである(図1)。お客様が操作しやすいタブレットを用いて取引内容を入力することで、取引のセルフ化を図る。行員とお客様との間で取引内容の確認が発生した際にも、手交(しゅこう)が容易なタブレットで賄えるため、運用のしやすさもある。さらに、タブレットは従来の専用端末と比較し安価なデバイスであり、導入ハードルが低いことも特徴の一つである。


図1 タブレット端末による店舗軽量化の動向

オンラインタブレットを利用した店舗軽量化へのOKI取組み

店舗の軽量化を図るために、多くの金融機関ではタブレット端末の導入を進めている。しかし、多くのタブレット端末は取引情報の入力までに留まり、金融機関ホストへの取引連携、サブシステムへのデータ連携などは、既設のホスト専用端末でオンライン取引を実行する仕組みとなっている。そのため、行員が実施しなければならない事務が残存し、完全にはセルフシフトできていない場合が多い。

OKIが提供するオンラインタブレットは、ホスト接続用API基盤との連携により、金融機関ホストとの接続も容易で、来店したお客様の取引情報入力からホスト処理までを同オンラインタブレット端末上で完結することが可能であり、行員によるオペレーションが不要となる(図2)


図2 オンラインタブレットによる取引の流れ

またOKIが提供する現金セルフ入出金ソリューション「SmartCashStation®(注1)(参考文献2)とタブレットを連携させることで、現金の支払いと受領もセルフシフト可能である。さらに遠隔受付相談ソリューションと連携して、タブレット利用が不慣れな利用者の操作案内を遠隔地で集中して行うことで、店舗の省人化が期待される(図3)


図3 オンラインタブレットを利用した店舗軽量化への取組み

オンラインタブレットと次世代金融営業店デジタルプラットフォームの提供

OKIが提供するオンラインタブレットは、「次世代金融営業店デジタルプラットフォーム」上で稼働する。本プラットフォームは、オンラインタブレットに搭載している業務アプリケーションの稼働に必要な基本機能と、金融機関向けのオンライン機能やサブシステム連携機能、イメージファイリング機能などを搭載する。たとえば、店舗軽量化のために、口座開設業務のオンラインタブレット化と取引に付随する帳票のペーパーレス化を図りたい場合、金融機関は口座開設の業務テンプレートと、本プラットフォームのペーパーレス機能、オンライン機能を選択することで実現可能である(図4)

以下に、OKIが提供するオンラインタブレットの特長を述べる。


図4 OKI 次世代金融営業店デジタルプラットフォーム

(1)ホストAPIを利用したタブレット完結型のオンライン取引

OKIはこれまで多くの金融機関への営業店システムの導入実績があり、数々の金融機関ホストと他システム間を接続する技術を提供してきた。その技術を活かし、OKIが提供するプラットフォームが金融機関のホスト接続用API基盤へ接続し、ホストAPI仕様に合わせてAPIを実行することで、タブレット完結型のオンライン取引を実現する。また同プラットフォームがホスト通信機能を担うことで、金融機関では、労力をかけずにホストへのオンライン通信がタブレットで実現可能となる。

(2)既存サブシステムとのデータ連携

金融機関内のシステムはホスト以外にも、さまざまなサブシステムで構成されている。印鑑システムや本人確認システム、諸届管理システム、帳票データを保存するイメージファイリングシステムなど、多岐にわたる。図5のとおり、オンラインタブレットは、取引に付随して利用するサブシステムとのデータ連携を可能とし、後方事務での現物送付の手間と紛失リスクの軽減に加え、他システムへのデータ登録作業の効率化を可能とする。


図5 オンラインタブレット端末と既存サブシステムとの接続

(3)セルフ操作向け業務テンプレートの搭載

オンラインタブレットを導入している金融機関との共創により、セルフ操作向けの業務テンプレートを開発し、タブレットに搭載した。口座開設、諸届、定期性取引などのローカウンター業務をはじめ、入出金、振込、公金収納などのハイカウンター業務をテンプレート化し、セルフ操作が可能な画面レイアウトや画面フローを提供する。

また、OKIはシステム管理者向けにタブレットの業務画面メンテナンスツールを提供している。本ツールを利用することで、システム管理者がタブレット業務メニューの表示内容やデザインを自由に変更することが可能となる。

(4)オンラインタブレットとセルフ現金処理機「SmartCashStation」との接続による行員現金タッチレス運用

従来の金融機関の店舗では、現金取引に伴い、行員による現金取扱事務が発生し、多大な労力がかかっていた。軽量化店舗では現金取引をセルフ化し、行員の現金タッチレスにより現金取扱事務を削減する必要がある。

OKIはオンラインタブレットとセルフ現金処理機SmartCashStationを連携させることで、現金処理を含めた取引をお客様自身が実施し、行員の現金タッチレス運用を実現する(図6)


図6 オンラインタブレットとセルフ現金処理機の接続構成

オンラインタブレットの導入事例

OKIのオンラインタブレットは既に複数の金融機関へ導入し、店頭事務の効率化を実現、店舗軽量化を促進している。以下に、導入事例を紹介する。

(1)A銀行導入事例

A銀行では、オンラインタブレットを共有し、お客様と行員が協調操作により手続きを完結するスタイルで導入し、ホストAPIを利用したタブレット完結型のオンライン取引を実現している。

また、搭載している業務パッケージは、同一ホストシステムを利用している金融機関へ共通パッケージとして展開し、業務追加の共同開発や他の金融機関で搭載した業務を容易に搭載することが可能である(写真1)


写真1 オンラインタブレットのシステム画面

(2)B銀行導入事例

B銀行では、オンラインタブレット取引後、同オンラインタブレットで生成した帳票イメージデータを事務集中センターへ送信し、店頭で実施していたオペレーションを事務集中センターへ集約し、店頭事務の削減を図っている。また、センターの行員はオンラインタブレットから送信された帳票イメージデータを専用端末で読み取り、端末へ自動で取引内容の入力が可能となり、端末入力作業の効率化も実現している。

オンラインタブレットの今後の展望

本稿では、金融機関の軽量化店舗施策に対するOKIの取組みとして、オンラインタブレットの仕組みや提供する機能を述べた。次世代金融営業店デジタルプラットフォームと併せて、OKIの強みであるエッジ領域の接続技術や現金処理機のデバイス提供まで一貫したシステム導入が可能となり、金融機関の店舗軽量化を支えることが可能である。

現在、OKIは現金処理のセルフシフトを促進するために、ハイカウンター業務(入出金、振込、定期入金など)を搭載したオンラインタブレットを開発中であり、業務テンプレートの充実化を図っている。

今後もお客様の課題解決の取組みを通して、OKIの開発実績や技術により、お客様の理想に近い形態の軽量化店舗の実現に向けてソリューション提供を推進していく。

参考文献

(参考文献1)OKIプレスリリース、タブレット端末を利用した取引情報入力により銀行窓口業務の負荷を軽減する「店頭タブレットシステム」を発売 2021年7月15日
https://www.oki.com/jp/press/2021/07/z21028.html
(参考文献2)山崎雅文:セルフ操作型軽量化現金処理機「SmartCashStation」、OKIテクニカルレビュー第234号、Vol.86 No.2、p48-51、2019年12月

筆者紹介

石津祐馬:Yuma Ishizu. ソリューションシステム事業本部 金融・法人ソリューション事業部 金融ソリューションSE部
保坂康弘:Yasuhiro Hosaka. ソリューションシステム事業本部 金融・法人ソリューション事業部 DXソリューション開発部

用語解説

API
「アプリケーション・プログラミング・インターフェース」の略語。ソフトウェアからOSの機能を利用するための仕様またはインターフェースのこと。
ローカウンター業務
金融機関で、新規口座開設、各種変更手続きなど対話や必要書類の多い窓口業務のこと。
ハイカウンター業務
金融機関で、預金の入出金や振込、両替、公金収納などの窓口業務のこと。





  • (注1)SmartCashStationは、沖電気工業株式会社の登録商標です。
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