技術広報誌 OKIテクニカルレビュー

巻頭言

「環境・グリーン社会に貢献するOKIの取組み」特集号によせて







常務執行役員
片桐 勇一郎

最近、カーボンニュートラル(脱炭素)というワードをよく耳にします。いうまでもなく脱炭素社会の実現は人類にとって喫緊の課題で、2020年には日本政府も2050年までのカーボンニュートラル達成を宣言し、2022年にはGX(グリーントランスフォーメーション)を重点投資分野とする方針を示しました。これらの動きを背景に、「社会の大丈夫をつくっていく。」をキーメッセージに掲げるOKIでは、グループの中長期環境目標として「OKI環境ビジョン2030/2050」(参考文献1)を策定し、環境経営を推進しています。

地球環境に対する現状認識

18世紀後半に起きた産業革命は化石燃料利用のエネルギー革命であり、それ以降あらゆる産業分野の生産性は飛躍的に向上すると同時に、新たな文化を生み出すなど人々に豊かで便利な生活をもたらしました。しかし、化石燃料の大量消費、急激な工業化や都市開発などが進んだ結果、自然破壊や環境汚染といった大きな課題を残したのも事実です。

そして、21世紀を迎える頃から人類共通の課題として特にクローズアップされたのが地球温暖化です。地球温暖化の要因としては諸説挙げられていますが、その主因として指摘されているのがCO2に代表されるGHG(温室効果ガス)排出量の増加です。実際、産業革命以降、大気中のCO2濃度に比例して、世界の年平均気温は0.74℃/100年の割合で上昇を続け、特に1990年代半ば以降は高温となる傾向が報告されています(参考文献2)(図1)。また、CO2による地球温暖化以外にも、化学物質による生態系への影響、エネルギー・森林・海洋・水などの資源枯渇、廃棄物処理など、地球規模での環境問題の解決は、喫緊の課題とされています。

IT分野の製造業であり、「社会の大丈夫をつくっていく。」事業を展開するOKIグループでは、前述の地球環境に対する現状認識と問題意識を共有し、事業を通じてより良い地球環境を次世代に継承することをミッションと捉え、環境に関連する経営上のリスクや機会を中長期的な視点で考慮した環境経営を推進しています。


図1 世界の年平均気温
出典:気象庁 世界の年平均気温 世界の年平均気温偏差の経年変化(1891~2022年)(参考文献2)

OKI環境活動のあゆみ

(1)公害対応としての活動

日本の高度経済成長期の「負の遺産」として、1960年代には大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音などといった公害問題がクローズアップされ、OKIも1970年に「環境汚染対策プロジェクトチーム」を設置し、本格的な環境活動に着手しました。しかし、当時の環境活動は、あくまでも工場などの事業所周辺や地域を対象としたローカルな公害対策というのが一般的な認識でした。

(2)環境問題グローバル化への体制強化

その後、1980、1990年代になると地球温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨、砂漠化など、地球規模での環境問題が表面化しました。OKIでは、1997年から主要生産拠点でISO14001の認証取得を開始。2004年度にはグループを統合したOKIグループ環境経営の体制を構築し、以後、ISO14001の統合認証範囲を国内外の拠点に拡大しています。

(3)2015年の「パラダイムシフト」

2015年は、環境経営のパラダイムシフトの年だと言われています。この年、フランスのパリで開催された第21回気候変動枠組条約締結国会議(COP21)での合意(パリ協定)を受けた「2050年カーボンニュートラル」をはじめ、国連総会での持続可能な開発目標「SDGs」の採択、企業の気候変動への取組みや影響に関する非財務情報開示の枠組みを検討する「TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」(注1)の設置など、企業経営にも大きなインパクトを与える地球環境に関するグローバルなアプローチが加速しました。

(4)2019年以降の環境経営

この流れを受け、2019年には新たな環境施策に着手しました。

OKIでは2015年よりGHGプロトコルに則したSCOPE1~3(バリューチェーン全体のCO2排出量)の開示を開始し、2019年にはTCFD提言への賛同を表明。同年には「OKI環境ビジョン2030/2050」の第1版を発表しました。こういった新たな環境経営ビジョンを具現化するにあたり、OKIではISOとTCFDの考え方の共通性に着眼し、両者の融合を図りました。その一環として、環境経営に対する事業部門のコミットを深める活動「ひざ詰め議論」を実施しました。

ここでは、OKIグループの事業部長や、グループ会社の社長などと、OKIのサステナビリティを推進する部門との間で、ISOとTCFDが共通に対象とする気候変動をはじめ、TCFDが範疇(はんちゅう)としない、省資源、化学物質などのリスクと機会とその対応について幅広い議論が交わされました。また、ISOの審査機関などから高い評価を得ています。さらに、2020年には、前年度の環境貢献売上高比率の算出と公開を行いました。

(5)「2050年カーボンニュートラル宣言」を受けて

2020年10月、日本政府は2030年までにCO2排出量46~50%削減(2013年比)し、2050年までにCO2排出量実質ゼロにすることを宣言しました。これを受け、OKIでは「中期経営計画2022」で、2050年までに自社拠点のCO2排出量実質ゼロの方針を掲げました。

また、2021年6月に着工した本庄工場は、設計段階でのエネルギー削減率133%(一次エネルギー消費量を51%削減+太陽光発電82%)を達成することが認められ、大規模生産施設で国内初となるZEB(Net Zero Energy Building)(注2)認証を取得しました。

OKI環境経営の現在

現在、ISO14001統合認証を取得。一部の子会社(国内、海外)では独自に認証を取得し、網羅率は生産金額ベースで、OKIグループ全体で概ね100%を達成しています。

また、企業・団体に対して環境に関する取組みを質問し、回答を評価・公表するCDP(注3)スコアでは、8段階評価で2番目の「A-」の評価(2021年及び2022年の評価)を得るなど、外部の環境評価機関から高い評価を得ています。

今後のOKI環境経営

OKIグループは、情報社会の発展に寄与する商品・サービスの提供を通じて、次世代のために、より良い地球環境を実現し、それを継承することを目指した環境方針を掲げ、省エネ、省資源、化学物質管理、法令順守、情報開示などを推進しています。

また、2022年9月には、2019年に発表した「OKI環境ビジョン2030/2050」の温暖化防止(脱炭素化)目標値をSBT(Science Based Targets)(注4)基準に沿って改定し、より野心的な環境目標を設定しました。

そして、こうした長期目標を達成するため、3ヶ年の「環境中期計画」と、年度ごとの目標を定めた「年度計画」を策定し、積極的な情報開示と環境活動を続けています(図2)

今後もOKIグループ全体としての環境ガバナンスの強化を図っていきます。


図2 環境方針種/環境ビジョン/環境中計/年度目標の関係

なお、本特集号では、環境・グリーン社会に貢献するOKIの取組みについてご紹介します。

参考文献

(参考文献1)OKIグループ中長期環境目標「OKI環境ビジョン2030/2050」
https://www.oki.com/jp/eco/management/vision.html
(参考文献2)気象省:世界の年平均気温
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/an_wld.htmlopennew_gray(外部サイト)






  • (注1)気候関連財務情報開示タスクフォース
  • (注2)快適な室内環境を実現しながら、再生可能エネルギーによる創エネルギーと、断熱性を高めた構造やセンサーなどを駆使した省エネルギーにより、建物で消費する一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物。
  • (注3)投資家、企業、国家、地域、都市が自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営する国際的環境非営利団体(NGO)で英国に本部を置く。「Carbon Disclosure Project)」は旧名称、現在は、炭素(カーボン)以外にも水セキュリティ、フォレストも対象。略称のCDPが正式名称。
  • (注4)パリ協定で定められた「2℃目標や1.5℃目標(産業革命以降の気温上昇を1.5~2℃に抑える)」達成に向け、企業などに科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標の設定を促す国際的取組み、及び、その目標設定基準。
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