技術広報誌 OKIテクニカルレビュー

省エネ ソリューション

サブスクモデルによる太陽光発電サービス ~OKI本庄工場H1棟で提供~

2022年4月に竣工した本庄工場(埼玉県本庄市)の「H1棟」では、OKIクロステック株式会社(以下、OXT)が電気設備工事全般を請け負い、1期工事(以下、STEP1)の太陽光発電システムの導入で「H1棟」のカーボンゼロを目指す取組みに貢献した。

2期工事(以下、STEP2)では、OXTがPPA(注1)事業者となり、オンサイトPPAモデルというサブスクモデルでOKIへ再生可能エネルギーを提供する形で更に貢献している。

今回は、「H1棟」の事例(参考文献1)を用いてサブスクモデルによる太陽光発電サービスの提供方法について紹介する。

オンサイトPPAモデルの概要

オンサイトPPAモデルは、お客様の施設にOXTが太陽光発電設備を設置し、同設備から発電される電力をお客様に供給するサービスである。

お客様は消費する電力量に応じ、サービス料金を支払うだけで、設備の初期投資や維持・管理コストを直接負担することなく、太陽光発電システムを導入することができる。

図1のとおり、今後OXTでは太陽光発電システム導入の選択肢として、従来のフロー型ビジネスモデルを継続しつつ、PPAモデルのストック型ビジネスモデルへと拡張する。


図1 太陽光発電システム導入方法と仕組み

STEP2の太陽光発電システムの概要

OKI本庄工場「H1棟」の屋根上約4,000m2へOXTが太陽光発電システムを自社設備として設置する。発電設備能力は491kW、年間発電量は約468,000kWhで、年間のCO2排出量は約214tの削減見込みであり、サービスは2023年4月に開始した。

太陽光発電の余剰電力と逆潮流

OKI本庄工場内でSTEP1とSTEP2の太陽光発電システムで発電した電力が、OKI本庄工場内の消費電力よりも多くなると余剰電力となり、電力会社の送配電網側に戻るように電力が流れる逆潮流が起きる。電力会社との契約では、逆潮流が許可されない場合、逆電力継電器(Reverse Power Relay、以下、RPR)の設置が義務付けられるため、OKI本庄工場でも特別高圧設備(以下、特高)内にRPRを設置している。余剰電力が発生しやすいケースとしては、極端に消費電力が低下する休日や大型連休など工場が稼働していない日となるため、自動で制御できる仕組みが必要となる。

出力制御システム

電力会社との契約では、余剰電力が発生し、RPRの信号を受けた場合、パワーコンディショナー全体を停止させて発電を止めることになっている。しかし、STEP1の太陽光発電システムの発電量は余剰電力が発生しない設計で導入されているため、STEP2で導入されたパワーコンディショナーだけで出力を抑える台数制御を実施できるように検討した。

具体的には食堂棟にあるOXTが構築した特高監視装置を活用し、逆潮流が起きる前に出力制御を実現するシステムを設計・構築している。

図2に出力制御システムの構成を示す。
特高からのRPR用接点はSTEP1のパワーコンディショナーから特高監視装置へ取り込み、接点増幅して残りのSTEP1のパワーコンディショナーへ戻す。接点増幅したRPR信号と台数制御接点信号をシリーズ回路とした信号線をSTEP2のパワーコンディショナー2台(100kW、250kW)のRPR用接続端子へ入線することで、特高監視装置からの指示で台数制御を実現する。

STEP2で発電した電力使用量の計量は発電量を測定するメーターを設置し、遠隔でデータが取得できるように特高監視装置へ取り込む。STEP2の太陽光発電システムでは、余剰電力が発生する前に発電が停止する仕組みのため、発電した分は全て自家消費できることになる。


図2 出力制御システムの構成

パワーコンディショナー2台(100kW、250kW)の台数制御の閾(しきい)値は受電電力とし、特別高圧受変電設備で計測している受電電力(負荷電力)を使用する。図3で四つの閾値によるパワーコンディショナーの起動や停止時の順位を表とグラフで示す。工場内の負荷電力低下時に受電部が逆潮流にならないように監視し、2台のパワーコンディショナーの運転/停止制御を実施する。

停止後の自動復旧も受電電力値を監視した上で、逆潮流が発生しないように起動を実施する。

左記の方法で、STEP1のパワーコンディショナーを停止させることなく、余剰電力が発生する前に発電を抑制することが可能となる。

これらの制御技術は、OXTが設立以来培ってきたBAS(注2)/BEMS(注3)のノウハウが活かされている。


図3 パワーコンディショナーの運転/停止の閾値

発電量や電力使用量のデータ取得

今回のサブスクモデルによる太陽光発電サービスでは、お客様は消費する電力量に応じ、毎月サービス料金を支払うことになるため、月単位での計量値のデータ取得は重要となる。特高監視装置へ発電量や電力使用量のデータを取り込むことで遠隔でのデータ取得も実現する。

これらの監視技術も、OXTが設立以来培ってきたBAS/BEMSのノウハウが活かされている。

今後の展開

今後OXTは更にOKIグループ内施設へのオンサイトPPAモデルの導入を推進し、OKIグループの脱炭素への取組みに貢献していく。また、余剰発電を活用するための蓄電池の導入や自己託送制度を活用し、再生可能エネルギーをグループ内で効率的に融通し合う仕組みなどを検証し、これらから得られる知見やノウハウを活かしてお客様へ事業を展開していきたいと考えている。

参考文献

(参考文献1)OKIプレスリリース、サブスクモデルによる太陽光発電サービスを開始、2022年8月18日
https://www.oki.com/jp/press/2022/08/z22032.html

筆者紹介

鈴木康之:Yasuyuki Suzuki. OKIクロステック株式会社 SI事業本部 ソリューション事業部 GXソリューション部






  • (注1)PPA(Power Purchase Agreement):電力販売契約。PPAモデルは「第三者所有モデル」とも呼ばれ、PPA事業者がお客様の敷地や建物のスペースに、無償で太陽光発電設備を設置、維持管理して、電気を供給する仕組みのこと。
  • (注2)BAS(Building Automation System):ビル管理システム。
  • (注3)BEMS(Building Energy Management System):エネルギー消費量をモニタリングする機能。
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