技術広報誌 OKIテクニカルレビュー

巻頭言

「AIエッジを強化する技術」特集号に寄せて







執行役員
イノベーション責任者(CINO)兼 技術責任者(CTO)
藤原 雄彦

OKIのイノベーション戦略

OKIは社会に貢献する新しい事業や商品を、継続的に創出し続けるために中長期的な事業創出を目指した具体的なロードマップとアクションプランを「イノベーション戦略」として発表しました(参考文献1)。これはISO 56002に基づいたイノベーション・マネジメントシステム(IMS)の「機会に関する意図」に相当するものです(図1)。これを実現するため、IMS「Yume Pro」を全社のマネジメントシステムへ取り組む「全員参加型のイノベーション」を推進し、お客様の困りごとに着目した新しい価値創出の仕組みを規定化することにより、グループ全体に適用した「IMS Ready」な会社となることを宣言しました。ISO 56002をベースに企業文化改革、機会の特定からソリューションの導入に相当するイノベーション創出活動の規定化策定を進めています。「イノベーション戦略」では、中期経営計画2022(参考文献2)で示した七つの社会課題(老朽化問題、自然災害、交通問題、環境問題、労働力不足、労働生産性、感染症拡大)の解決に向けた具体的なアクションを注力分野としてブレークダウンし、「Yume Pro」のプロセスに則ったイノベーション・ロードマップを「目指す姿」からバックキャストすることによって設定しました。

この「イノベーション戦略」は、世の中の変化や状況に合わせて、年に一度、事業部門との擦り合わせ、見直しを実施しています。2021年度は、各分野での活動方針や環境変化などを考慮し、さらに脱炭素視点や社会インフラに対する取組みの具体化などを更新しました(参考文献3)(図1)



図1 イノベーション・マネジメントシステム





図2 注力分野のイノベーション・ロードマップ

技術戦略

注力分野のイノベーション・ロードマップ(図2)を実現するため、注力技術の技術戦略を定めました。OKIは創業以来、ネットワーク技術や端末技術のデジタル技術によって自動化・省人化を強みに社会インフラ高度化に貢献してきました。OKIの技術は、特にエッジ(現場)領域にインストールされて培われてきました。このことから、近年のAI関連技術の進展を取り込み、中期経営計画2022で、注力技術の主軸を「AIエッジ」と定め、これを強化する五つの先端的な技術領域を「センシング」「ネットワーク」「インテリジェンス」「ロボティクス」「ユーザー・エクスペリエンス」と定義しました。17の研究開発項目(詳細は本特集号「総合報告」をご覧ください)による提供価値を軸に、中長期にわたって「進取の精神」で先端技術を研鑽・強化させ、既存技術とも連携させ事業創出を加速させていきます。

AIエッジを強化する五つの技術領域

AIエッジは、ネットワークのエッジ領域(現場)でリアルタイムにAI処理し、遅延なく課題解決に対応可能となります。特に自然災害や交通情報など人命に関わる現場では、リアルタイム性が重要ですが、画像データや大量のリアルタイムセンサーが取得した大量のデータを、ネットワークを介してクラウドで処理していては遅延が発生してしまいます。その点、現場でAIにより大量のデータを迅速に処理し、その結果だけをクラウドへ送ることによって、遅延発生を極力回避できます。OKIの強みであるネットワーク処理だけでなく、現場で処理するリアルタイム・インテリジェンスにより迅速な課題解決が可能です。

OKIは、2019年10月に、「AIエッジコンピューティング戦略」を発表しました(参考文献4)。エッジ領域を社会の隅々まで拡大し、安全・安心で持続可能な社会インフラの高度化を目指します。そのため、五つの技術領域対してそれぞれの提供価値と研究開発項目(詳細は本特集号「総合報告」をご覧ください)を設定しました。

「AI-Ready」な企業に向けて

OKIでは、AIエッジを強化させていくため、人材・ガバナンスの視点で環境整備を「AI環境整備」として全社活動として推進しています。AIには、倫理や品質保証など、これまでの技術と異なる新たな課題が伴います。この課題に対応し、お客様にAIを安心して活用していただけるようAIを活用した技術や商品・サービスなどの開発・提供における原則を示す「OKIグループAI原則」を制定しました(参考文献5)。この原則に基づき、AIを適切かつ高度に利用するために「AI-Ready」な企業として、必要な環境整備をOKIグループ全体で実施しています。

OKIは、全員参加型のイノベーションを加速させ、お客様と共に「社会の大丈夫をつくっていく。」ことを具現化し、持続的な成長を目指します。

  

参考文献

(参考文献1)OKIプレスリリース、2030年までの「イノベーション戦略」を発表、2021年1月27日
https://www.oki.com/jp/press/2021/01/z20106.html
(参考文献2)OKIプレスリリース、「中期経営計画2022」の策定について、2020年10月29日
(参考文献3)イノベーション・ロードマップ(改訂版)、2022年3月10日
https://www.oki.com/jp/yume_pro/cino/archives/20220310/pdf/pdf01.pdf [5.6MB]PDF
(参考文献4)「AIエッジコンピューティング」戦略発表会開催、2019年10月3日
https://www.oki.com/jp/topics/2019/1003/
(参考文献5)竹内晃一、伊加田恵志:OKIグループAI原則、OKIテクニカルレビュー234号、Vo.86 No.2 pp.12-15、2019年12月

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