光ファイバーケーブルに外部から物理的な刺激が加わると、散乱光が変化します。この散乱光をセンシングに利用し、光通信技術を組み合わせて商品化されたのが光ファイバー温度・歪み(ひずみ)センサーです。そのOKI独自技術をブラッシュアップし、新たな視点で社会課題の解決に挑む技術者を紹介します。
大学・大学院時代に高速光通信の産学連携プロジェクトで、OKIと共同研究を行った際、自由でアカデミックなOKIの雰囲気に触れました。そして、光通信に代表される社会インフラを支える製品やサービスを創造する技術力に魅力を感じ、入社を希望しました。
入社当時はインフラの老朽化や自然災害が社会課題とされ、OKIとしてはインフラなど広範なエリアを一括センシングする技術として、光通信技術を応用した光ファイバーセンサーの研究開発に着手していました。私もそのメンバーの一員となり、以来、一貫して同技術の研究開発と商品化に携わっています。
光ファイバーセンサーの最大の特長は、ケーブルが敷設されたエリア全体の分布計測ができるため、個別のポイントセンサーの設置が不要なことです。そのため、インフラなどの大型構造物を低コストで一括してモニタリングすることが可能です。特に、OKI独自の検出方式の採用により、これまで10~30分要していた計測時間をリアルタイム化することに成功しました。そして、今回、私たちが開発したのは、1mであった計測間隔を10cmまで短縮した高分解能センサーです。
用途としては、橋りょうなどの歪みを検知する「構造物監視」、熱処理装置などの「温度管理」、工場や地下ケーブルなどの「火災・異常検知」などがあり、予防保全や防災などに活用できます。特に、新開発のセンサーは、近年、発電効率向上のために進められている次世代火力発電の加圧蒸気の超高温化に対応した温度監視が可能で、エネルギーロス解消にも貢献します。
イノベーションに取り組むOKIでは、研究開発職もお客様と直接コミットする機会が増えています。そこで得た教訓としてはコスト意識の大切さです。また、開発した技術と、お客様が求める機能との乖離(かいり)に悩むこともありました。半面、お客様から直接、製品の高評価をいただけると、この上ない達成感を得ることができます。
直近の課題は、より小さな変化も捉えるために計測精度を向上させることです。また、このセンサーはAIとの親和性が高く、AIエッジ処理との連携によりスマートなモニタリングを実現させます。さらに、既存の光ファイバー通信網を利用したインフラ構造物を含む広範なセンサーネットワークを構築し、安全・安心な社会の実現にも貢献します。