EMS(設計・製造受託サービス)

EMSの匠

久保田 英久(くぼた ひでひさ)、OKIエンジニアリング 信頼性解析事業部 解析センター サブセンター長
電子デバイスの信頼性・品質向上に貢献する 「LSIプロセス診断」の匠

OKI-EMSの一翼を担うOKIエンジニアリングは、電子機器や電子部品などの信頼性に関する各種の試験・解析・評価サービスを提供しています。
その1つである「LSIプロセス診断」は、IC/LSIの潜在的欠陥を洗い出し、将来の故障を未然に防ぐ策も提示することで、EV化の進む自動車業界をはじめ"モノづくり"を手がけるさまざまなお客様が追求する製品の品質維持・向上や安全安心の保持を強力にバックアップしています。
今回は、入社以来15年にわたり「LSIプロセス診断」に携わってきた久保田英久が、同サービスの特長や優位性、今後の可能性について語ります。

お客様の声に応えウェーハプロセスからアセンブリプロセスへと診断範囲を拡張

「LSIプロセス診断」は、電子部品の潜在的欠陥を調査する「良品解析」の手法をIC/LSI向けに応用したサービスで、検出した不具合要素の危険度を数値化し、その改善案も提供する点が大きな特長です。当社で実施した故障解析事例や学会の報告文献、OKIグループに蓄積された半導体設計・製造に関する知見などをもとにした独自の評価項目・評価基準を用いて、不具合要素を減点法で採点することにより、定量的な診断・評価を可能にしています。
サービス開発のきっかけは、宇宙・航空分野のお客様からの委託で、民生用の半導体を宇宙用電子部品として使用できるかどうかを調査する手法の研究に取り組んだことでした。サービス開始当初はウェーハプロセス(ICチップをウェーハ上に作り込む工程)の診断・評価を行う「ウェーハプロセス診断」として提供していましたが、自動車関連のお客様から「アセンブリプロセス(パッケージ組立工程)の診断・評価もできないか」とのご要望を受け、サービス内容を拡充して「LSIプロセス診断」へと進化させました。

10種の検査で欠陥を精査し診断書と処方箋を作成

「LSIプロセス診断」で実施する検査は、アセンブリプロセスで6種(外観、X線、超音波、パッケージ断面、内部、クレータリング)、ウェーハプロセスで4種(チップ表面、断面SEM、断面TEM、界層解析)の計10種を基本としています。


LSIプロセス診断サービス 検査内容

検出された不具合要素については、複数の検査で欠陥の状態などを精査し、すべての検査を終えたうえで危険度を総合的に判断します。
危険度の診断基準はクラス1~5の5段階で、各クラスに1000点満点からの減点の幅を設けています。検査結果を踏まえて欠陥の程度に応じた減点を行い、クラス2以下(マイナス10点以下)であればコメントを記述した報告書を、クラス3以上(マイナス11点以上)に該当する場合は報告書に加えて、診断書と処方箋を作成し、お客様にお渡しします。

診断書は、欠陥の発生状況や推定原因、信頼性への影響などが記載されます。

診断から報告までの流れ

処方箋には、お客様が製造会社に確認すべき項目や製造工程の改善要求案、欠陥に着目した試験方法などを記載しています。この際の試験は、お客様自身でも製造会社側でも、あるいは当社が受託することも可能です。そして、お客様と製造会社との確認作業を経て、欠陥は問題なしと判断あるいは工程改善によって解決にいたれば、当社が最終的な再採点を行う流れになっています。
IC/LSIの欠陥を検査するサービスは同業他社も提供していますが、「LSIプロセス診断」のように各種の検査を組み合わせて製造工程全般をトータルに診断・評価するサービスは他には見当たりません。

高度で確かな加工技術が観察・分析の精度を上げる

私は2005年に入社し、当時はお客様からの委託研究の最終段階にあった「LSIプロセス診断」業務に就き、諸先輩から知識と技術を学び、実務を通じてさまざまなスキルとノウハウを身につけてきました。
実務においては、観察・分析技術もさることながら、デバイスの加工技術(パッケージの開封や断面作成など)が重要なポイントになります。欠陥に対する的確な診断・評価をするには、適正な観察・分析結果を得る必要があり、そのためには正しい加工による精度の高い検査を行わなければならないからです。裏返せば、加工の仕方によって観察・分析の精度を上げることができます。実際、検査中に「内部構造をより詳細に確認するため、(定番の加工ではなく)こういう加工を施してみよう」と考えながら作業を進めることも間々あります。
加工や観察の精度は個々人のスキルによるところも大きいですが、当社では実務におけるクロスチェックや意見・情報交換も 活発に行っているので、部門全体のスキルも高いレベルを保つことができていると思います。

マーケットも対象デバイスも領域拡大を積極的に推進

「LSIプロセス診断」を利用されているお客様は、宇宙・航空・防衛、産業機器、自動車・車載機器、半導体製造など幅広い業界にわたり、デバイスの種別もパワー系IC、汎用IC、マイコン、ASIC、メモリーなど多種多様です。お客様からは、キーデバイスの信頼性評価などに関して作業負荷・コストを削減できること、新規のデバイス選定時にも複数製品の品質を数値比較が判断材料に加えられることなどで高評価をいただいています。
これまでに、自動車・車載機器業界には広く認知していただき多数の実績をあげることができました。今後は、医療関連や社会インフラといった、万が一のときに人命を左右しかねない分野をはじめ、より広範な市場・需要を開拓していきます。
また、LED、太陽電池、MEMS、さらに新構造や微細化・高集積化した各種デバイスも、定量的な診断基準を確立して「LSIプロセス診断」の対象に取り込んでいこうと考えています。
私自身は、「LSIプロセス診断」をはじめとした当社のサービスで、お客様がつくる製品の品質を維持し、社会の安全安心が多少なりとも保たれることに大きなやりがいを感じています。「電子機器が原因の事故をなくすことに貢献する」という意気込みで、今後も職務をまっとうしていきます。

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