OKIの「Advanced M&EMS」の拠点である本庄工場では、情報通信、計測、産業に加え、医療機器の生産受託に参入。ISO13485(注1)
の認定、薬事法製造業の許可を取得し、そのハイレベルな品質・生産管理により医療機器の分野でも数多くの実績を誇っています。
今回は、医療機器の生産サービス立ち上げに尽力し、現在も製造現場の第一線で活躍する、ものづくりの匠・木村高雄が医療機器のものづくり最前線を語ります。
EMS事業に参入する以前のOKI本庄工場では、ハイエンドな情報通信機器の生産を手掛け、高い信頼性や品質の確保に注力し、市場の厳しいニーズに対応してきました。こうした中、生産効率向上を目的として、1990年代からJIT方式を導入しました。
私自身も某自動車会社に出向し、実際にものづくりの現場で働くことで、多くのノウハウを吸収しました。こうした体験を活かしつつOKIの現場を磨き上げることで、生産性と高品質・高信頼性の両立を図り、現在のEMS事業のベースとなる競争力あるOKIの国内生産体制の確立に貢献してきました。そんなOKIがEMSサービスを開始したのは2002年のことです。
OKI-EMSでは設計から受託する「設計一貫受託サービス」、生産のみを承る「生産一貫受託サービス」。そして海外から日本市場向けへ輸入した製品の最終検査を代行する「ステージングサービス」を提供しています。私自身はこのステージングサービスを立ち上げ、不具合や故障が許されない、日本のライフラインを支える装置の最終検査を高品質で実現しました。こうした礎がある中で、高い品質が求められる医療機器分野に参入したことは、ごく自然なことであったと思います。
医療機器は、不具合が人命に関わる大事故につながりかねないため、極めて高いレベルの作業基準の遵守が求められます。私自身は情報通信機器に携わった経験から、高品質のものづくりには相応の自負がありました。しかし、医療機器では情報通信機器の常識と異なるものづくりが必要でした。
それを痛感したのが、初めて医療機器を立ち上げるため、実際にお客様の製造現場にお伺いし、トレーニングを受けた時です。
そこで目にしたのは、我々が想像した以上の、お客様の品質にかける思いでした。
一例を挙げると、使用した部品点数と在庫点数を庫出の都度照合する作業です。小さなネジ1本が不足していれば、全員で見つかるまで探すという徹底さ。製造品目が変われば、その視点も変わることを改めて痛感しました。
かなりのカルチャーショックでしたが、人命を預かる医療機器をつくるという価値観の向上と使命感に目覚めました。トレーニング完了後、最初に医療機器のラインを立ち上げた際は、お客様に合格をいただけず、苦悩の日々が続きました。トレーニングで理解したつもりでいた、今では当たり前に理解している医療機器製造の常識に対し、どうしても今までの経験で培った常識が邪魔をしました。それでも生産現場全員が一丸となって、問題のひとつひとつを克服し、2ヵ月後に量産化を達成し新たな医療機器の製造体制を確立しました。
医療機器の量産開始以降も私たちは、さまざまな挑戦を続けています。そのひとつが現場スタッフの教育です。新人スタッフには、現場配属前に研修期間を設け、作業手順やルールを徹底して指導しています。また、高品質な製品をより早く、より安く造るため、生産現場全員から寄せられる「草の根活動(カイゼン提案)」も積極的に採用しています。幸い、人の生命に関わる機器を製造するという現場の士気も高く、毎月多数の提案が寄せられ、それに基づいた独自の冶具を考案するなど、日々、創意工夫を重ねています。
製造の現場では、このような地道な「草の根活動」が重要で、ほんの数秒の時短の試みを積み重ねることで、生産性の向上につながります。実際、これまでさまざまなカイゼン提案を具現化したことと、現場スタッフのスキルアップにより、現在、生産効率は量産開始当初より、3倍以上向上しています。
今後は、ますます高度化するお客さまのニーズに即応できる生産体制を構築していくつもりです。また、工場内のあらゆる部門と連携し、さらなるコストダウンにも取り組み、日本型EMSの優れた信頼性と品質を確保しつつアジアンプライスに対抗できる製品づくりを目指します。
医療機器の品質保証のための国際標準規格