2014年3月、OKIの「Advanced M&EMS」を支える新しいグループ企業としてOKIアイディエスが誕生しました。EMS事業において設計・開発などの上流工程を担当する同社は、OKIで培ってきたハードウェア/ソフトウェア両方の高度な設計開発技術にさらに磨きをかけ、高品質・高信頼にこだわりを持つお客様のハイレベルな要求に応えます。また、同社の設立により、EMS事業では設計~量産までをワンストップで受託可能となり、量産時のコストを意識したコンカレント設計など、お客様により良い製品を提供できる体制が整いました。
今回は、同社の得意分野の1つで、世界トップクラスの技術力を誇るFPGA設計について、豊富な経験とノウハウで設計受託実績を積み上げてきた匠、田村善康が語ります。
FPGA(Field Programmable Gate Array)は、製造後に書き換えが可能なLSIです。特定用途のために製造されるASIC(Application Specific Integrated Circuit)やASSP(Application Specific Standard Product)とは異なり、ユーザーは製造のための初期コストが不要であり、短期間での開発や市場投入後のアップデート、あるいは少量多品種の製品開発などにスムーズに対応できます。
かつては補助的な機能用途にとどまっていましたが、高集積化、高性能化、低コスト化の進展により、さまざまな電子機器で使われるようになりました。最近では、PCI Expressなど周辺インターフェースの取り込みや、CPUを内蔵するシステムオンチップも登場し、製品のコアを担うデバイスへと進化しています。
開発期間の短縮・コスト削減の他、製品開発に柔軟性も強く求められるようになったことでFPGAの領域は広がり続けており、今後の大幅な需要増が見込まれています。 現に、EMS事業でもFPGAを搭載した製品が年々増加しているようです。多品種少量製品の多いOKIのEMS事業とは親和性の高い部品であると考えます。今後、EMS事業の他のお客様にも積極的に提案をしていきたいと思います。
当社は、FPGAのトップメーカーであるザイリンクス(Xilinx)社とアライアンスを組み、そのデバイスで実現する機能の設計受託サービスを提供しています。また、FPGAに搭載する多数のIP(Intellectual Property:知的財産)もライセンス販売が可能な形態で自社開発しています。このIPを用いることで、より短期間・低コストでの開発設計が可能になります。なかでも、シリアル転送インターフェースの標準規格であるPCI Expressを使った高速・大容量データ転送の開発は、トランシーバー内蔵デバイスが市場に出た当時から開発を行ってきており、国内では当社しか手がけることができない技術分野で最も得意としています。
2013年1月にはザイリンクス社からアライアンスプログラムの最上位となるプレミア・デザイン・サービス・メンバー(開発設計会社としては国内初)の認定を受け、メーカー側とのさらに強固な連携のもと、よりスピーディなお客様提案が可能になりました。
その実例として強く印象に残っているのは、ザイリンクス社が開発したばかりのデバイスを載せて3枚だけ作成された評価ボードの1枚を当社に貸し出してくれたことです。当社は、直前に迫っていた展示会で「市場投入前のデバイスを使ったデモを披露しよう」と考え、すぐに設計作業に取りかかったのですが、開発ツールが未対応だったためにコンパイルできませんでした。そこで、米国のザイリンクス本社に直接交渉してα版の開発ツールを支給してもらい、展示会にぎりぎりで間に合わせ、来場したお客様から高評価をいただくことができました。このときの一連のやり取りから、ザイリンクス社が当社に厚い信頼を寄せてくれていることを実感しました。
ザイリンクス社のFPGAデバイス
私自身は、基板プリント配線設計業務やLSI回路設計業務を経て、2000年からFPGA設計に携わり、さまざまなお客様からの受託設計やIP開発を通じて多くの知識と経験・ノウハウを蓄積し、“機能開発の勘どころ”を身に付けることができました。
お客様からの依頼は、以前はAV機器や監視カメラなど映像機器の機能開発が中心でしたが、このところは医療機器関連の案件が大幅に増えています。お客様からは「高精細な画像をそのまま高速で転送したい」というご要望を多くいただきます。ミスの許されない分野で高品質・高信頼を求めるお客様が、当社の技術力を評価してくれているのだと思います。
また、昨今の進化に伴ってデバイス内の回路は微細化が進み、より大規模な開発、かつ設計作業は難易度を増しています。そのため、お客様がご自身で設計を行ったものの思うように行かないこともあり、当社にご相談をいただくケースもあります。そうしたFPGA設計の駆け込み寺的な存在としても、当社の高い技術力を期待されている事を感じ、お客様のお役に立てていることを改めて嬉しく思っています。
FPGAの今後を見通すと、やはり先述したシステムオンチップが主流になっていくと考えられます。そうすると、CPUのプログラミングを担うソフトウェア技術者も揃っている当社の強みがますます発揮できるのではないかと思います。ハードウェアとソフトウェアでうまく機能分担すると最適な性能を引き出すことができるので、そうした設計開発も当社なら効率的に行えます。
もちろん、ハードウェアとソフトウェアの両方の技術を持つ優位性は、FPGA以外の設計開発でも生きてきます。お客様に対して、OKIのEMSグループで部品調達、製造組み立て、試験、保守までトータルにご支援することも可能です。このような、ものづくりの川上から川下までの一貫受託体制によってご提供できる付加価値を、多くのお客様に有効活用していただきたいと思っています。
社名 | 株式会社OKIアイディエス |
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本社所在地 | 〒370-8585 群馬県高崎市双葉町3-1 OKI内 電話:027-323-2813(代表) |
事業内容 | 映像・音声・通信のファームウェア/ハードウェア開発・販売・コンサルティング、産業用機器、医療用機器の製品開発 |
ホームページ | http://www.oki-oids.jp/ |