環境経営リスクと機会
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD※1)に沿った開示情報
OKIは経済と環境の好循環の観点から2019年5月にTCFDに賛同し、気候関連のリスクや機会とそれらに対する対応策を組織的に管理するとともに、その内容の情報開示の充実を図っています。
ガバナンス |
- 気候関連リスクの取締役の監視体制と経営者の役割
- OKIグループは気候関連リスクをはじめとするサステナビリティ関連リスクを管理し、特定したマテリアリティに基づく取り組みを推進するため、2020年度に代表取締役社長を最高責任者とするサステナビリティ推進ワーキンググループ(WG)を設置しました。2023年4月には同WGをサステナビリティ推進部として専任組織化し、新たにサステナビリティ担当役員を設置しています。
- サステナビリティに関する重要事項については、経営会議において決定しています。上述の推進組織は、マテリアリティを具体化した環境・社会・ガバナンスの取り組み状況や課題について、経営会議への報告を行っています。
- 取締役会に対しては、事業に大きな影響を及ぼす事項が報告されます。2022年度は、「OKI環境ビジョン2030/2050」の改定、および「OKIグループ人権方針」の制定などについて審議が行われました。
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戦略 |
- シナリオ分析によるリスクと機会の特定および対応
- 国際機関が発行する気候変動に関するレポートなどを踏まえて、物理的/移行リスクを特定し、気温上昇が4℃になった場合の気候変動の激甚化、気温上昇を1.5℃に抑えるための社会変動を念頭にシナリオ分析を行っています。
- シナリオ分析では次ページのように気候変動、資源循環、汚染の予防の観点も網羅し、これらのシナリオ下におけるリスクと機会を特定、対応策を設定し今後発生しうる事象への柔軟な対応力の向上を図っています。(1.5℃対応の目標については、下記「指標・目標」とP43参照)
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リスク管理 |
- リスクの選別・評価プロセス
- 年に1回以上、気候変動やその他の最近の事象を抽出し、これらがもたらすリスクや機会の影響度/頻度/発生時期などを評価し重要度を特定しています。
- リスクの管理プロセス
- 上記のリスクと機会に対する対応策を検討し、環境経営のグループ全体の計画を策定し、各組織や各拠点の環境実行計画に落とし込んでいます。これら計画の実行状況は内部監査などによりチェックされ、必要に応じて是正されます。
- 総合的リスク管理の統合方法
- 社長の責任のもと、OKIグループ全体の環境マネジメントシステムにおいて統合的に管理されています。各事業本部とコーポレート本部が連携し、計画・実行・監視・是正を行っています。グループ全体のリスクを管理するリスク管理委員会が定める「共通リスク」として、顕在化予防のための施策をグループ内に展開しています。
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指標・目標 |
- 使用する指標
- 自社拠点を含むサプライチェーンにおけるCO2排出量(スコープ1+2、スコープ3-カテゴリー1と11)
- 環境貢献売上高
- スコープ1,2,3
- 本レポートのESGデータ集(OKIレポート2022の57~58ページ参照)やWebサイト上の別表に記載しています。
- 目標
- CO2排出量削減(SBT※2準拠):以下いずれも2020年度比
自社拠点のCO2排出量※3 2030年度42%削減、中間目標として2025年度21%削減
調達先と製品使用時のCO2排出量※4 2030年度25%削減、中間目標として2025年度12.5%削減
- 環境貢献売上高:対グループ全体売上高比率 2030年度50%、中間目標として2025年度35%
- 実績
- CO2排出量削減(SBT※2準拠):以下いずれも2020年度比
自社拠点のCO2排出量※3 2022年度9.8%削減
調達先と製品使用時のCO2排出量※4 2022年度12.8%削減
- 環境貢献売上高:2022年度実績は27%でした。( 算定基準の充実化を進めています。OKIレポート2022の43ページ参照にてご紹介。)
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- ※1TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):気候変動に対する企業の対応について、投資家への情報開示の必要性を勧告する提言
- ※2ライフサイクルCO2:調達→事業拠点→物流→お客様による製品仕様※→使用済み製品の廃棄の各プロセスにおけるグループ全体のCO2排出量
※お客様による製品使用=製品の想定耐用年数×年間消費電力×販売台数×排出原単位
- ※3SCOPE1(燃料由来)+SCOPE2(電力由来)
- ※42030年度SCOPE3実績の67%以上を占める、SCOPE3のカテゴリー1(購入した製品・サービス)とカテゴリー11(販売した製品の使用)の合計
シナリオ分析を踏まえた戦略
気温上昇を1.5℃未満に抑えるための社会の変化が進むと、炭素税などの法制、技術進化、市場ニーズの変化などが生じ、OKIの脱炭素ソリューションへのニーズが高まると分析しています。気温上昇が3~4℃となった場合、気候変動の影響による激甚災害に伴う物理的リスクが高まり、OKIの自社拠点を含むサプライチェーンに重大な影響が生じる可能性があります。また、激甚災害の予防策としての防災情報システムなどのニーズが高まると考えられます。
シナリオ分析 |
戦略・施策 |
カテゴリー |
想定する事象 |
リスク/機会 |
将来の財務への影響 |
時間軸※3 |
気候変動 1.5℃シナリオ※1 【移行リスク】 |
脱炭素ニーズの一層の高まり、広範囲化 |
リスク |
- ハードウェア製品に対する省エネ基準や顧客要求未達による販売機会の喪失
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短期 |
- SBT1.5℃に準拠したCO2排出量削減目標の設定と以下の施策の推進
- 商品:ハードウェア製品の省電力化
- 規制強化を先取りした開発目標の設定
- 研究開発や技術開発の強化および商品化の加速
- 拠点:CO2排出ゼロ(ZEBなど)に向けての下記の施策を推進
- 省エネの徹底:拠点の生産設備、ファシリティの高効率化、全業務の効率化
- 再エネの導入:自拠点での再エネ設備設置、再エネ由来の電力契約など
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- 製造プロセスに対するお客様からの再生可能エネルギー使用の要請への対応、化石燃料賦課金(炭素税)の影響
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中期 |
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短期 |
機会 |
- OKIグループの以下の商品に対する需要の拡大
- 脱炭素/省力化ソリューション
- 再生可能エネルギー普及を支援する技術
- ハードウェア製品に対する再生可能エネルギー駆動型製品
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短期 |
- 商品:環境貢献商品の拡大と創出
- 環境貢献売上高の見える化と訴求
- IoTやAIを活用した脱炭素/省力化ソリューションの創出
例: 交通分野、建設/インフラ分野、金融分野、流通分野、海洋分野、ビジネスコミュニケーション分野、ビルエネルギー管理分野
- 業務受託によるお客様業務の効率化支援
例:ATMのフルアウトサービス
- 再生可能エネルギー駆動型ハードウェア製品の拡大
例:ゼロエナジーゲートウェイ
- 研究開発の強化(AI軽量化など)
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気候変動 4℃シナリオ※2 【物理的リスク】 |
異常気象の増加と激甚化(風水害の増加/極端な熱波・寒波/落雷増加) |
リスク |
- 拠点・調達先:工場や調達先の被災による、事業所資産の損失/稼働停止/サプライチェーンの寸断
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短期 |
- 拠点:気候変動BCP/BCMの強化
- 止水板の設置、設備の嵩上げ
- 製造設備の落雷時停止装置
- 検査装置における空調設備の冗長化
- 調達先:調達BCPの強化
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短期 |
機会 |
- 商品:OKIグループの防災・減災高度化対応商品への需要の拡大(防災分野、海洋分野)
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中期 |
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化学物質による汚染の予防 |
対象法令物質の拡大、複雑化 |
リスク |
- 商品:含有化学物質の基準違反
- 拠点:施設老朽化に伴う汚染
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短期 |
- 商品:グループ全体の運用共通化の強化
- 拠点:施設の点検・交換基準の見直し
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機会 |
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短期 |
- 商品:製品含有化学物質の分析サービス、調査システムの展開
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資源循環 |
海洋プラスチック、マイクロプラスチック対応の法令強化 |
リスク |
- 拠点:廃棄物処理費用の高騰、処分業者による引き取り拒否
- 商品:資源の枯渇リスク、部材の供給不足リスク
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中期 |
- 拠点:廃棄物削減
- プラスチック梱包材のリユース
- 金属素材からの採取率向上による廃棄率削減
- 商品:広域認定処理制度を活用した使用済み製品からの部品回収とリユース
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機会 |
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中期 |
- 商品:お客様設備の長寿命化ソリューションの提供、広域認定処理制度を活用した使用済み製品回収によるお客様負担の軽減
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- ※1IEA NZE 2050を参照
- ※2IPCC RCP8.5を参照。
- ※3長期=10年以上/中期=3~10年以内/短期=1~3年以内