ほぼ週刊 CINOのつぶやき(チノつぶ)第84号
「御社の新規事業はなぜ失敗するのか?」

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2018年11月から2019年4月まで、私は内閣府知財戦略本部の「価値デザイン社会実現に資する実質的なオープンイノベーションの実施に関するタスクフォース」の委員をしていました。その際、一緒に委員をしていた仲間の一人に、田所雅之さんがいらっしゃいます。
田所さんは、日本でスタートアップ3社、米国でECプラットフォームのスタートアップを起業するなどの活動をされ、現在は株式会社ユニコーンファームのCEOとして活躍されています。その田所さんから、今年の2月に出版された著書「御社の新規事業はなぜ失敗するのか?」を送っていただきました。イノベーションに取り組んでいるOKIとしては大変興味深い内容でしたので紹介します。
*田所 雅之氏(https://twitter.com/tadokoromasa)
大企業からイノベーションを興す
田所さんには、ベストセラーとなった「起業の科学」などの著作がありますが、今回は、大企業からのイノベーション創出にフォーカスしています。4つのフェーズと8つのステップからなる「企業発イノベーションマップ」を示して、何がネックになっているのかというチェック・ポイントを提示しています。
イノベーションに関する理解(ステップ1)から始まり、イノベーションを会社の文化にする(ステップ8)ことがポイントだと指摘しています。このほか、具体的な事例に基づく示唆に富んだ話が盛り込まれていますが、特に共感したポイントの中から、2つ紹介します。
スタートアップにない大企業のハードル
大企業は、安定的な中核事業を持っているため、未来より短期の視点が重視されてしまう傾向があります。このため、新規事業担当者に対して、「『あいつらは大して稼いでもいないくせに・・・・・・』とか『結果も出さずに遊んでばかりいる・・・・・・』といった言葉が飛び交うようになる。」という状況になりがちです。これは、チノつぶ第41号で紹介した通り、Yume Proをスタートする前のOKIも全く同じ状況でした。
スタートアップは新規事業一筋なので未来志向なのに対して、大企業は目先しか見えなくなってしまいがちです。これは、チノつぶ第69号で紹介したイノベーション近視眼でもあります。Yume Proでは、5年間で「イノベーションが日常的な活動となる」ことを目標に取り組んでおり、我々の目指すイノベーション・マネジメントシステムの重要なポイントです。
すべての事業は顧客起点で始まる
田所さんは、「『自社』起点から始まってしまうと、『自社リソース』『自社の利益』『自社プロダクトの機能拡充』のみに焦点が当たってしまう。結果として、少し先の未来にある『顧客のあるべき体験』『顧客の成功』を、自社の視点で『でっち上げ』てしまうケースが、しばしばみられる。」と指摘しています。外部環境の変化によって、顧客の求める価値も当然変化するため、社会の変化を俯瞰する力が求められます。
OKIでも同様です。チノつぶ第45号などで説明していますが、Yume Proは、課題解決型のイノベーション創出活動を目指しています。新規事業を興していくために、マーケットの鳥瞰図を持ちながら、顧客起点を徹底することが課題となっています。そのため2020年度はこれまでの活動を振り返りつつ、この点を強化するための新たな研修プログラム立ち上げなどを行う予定です。
さまざまな課題はありますが、一つずつ地道に克服しながら、OKIはイノベーションを輩出する企業となることを目指して、取り組んでいきたいと思います。
(2020年7月13日、チーフ・イノベーション・オフィサー(CINO)横田 俊之)