ほぼ週刊 CINOのつぶやき(チノつぶ)第69号
「イノベーション全書」

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イノベーション活動の手引き
OKIのイノベーション・パートナーであるJapan Innovation Networkのチェアパーソン理事紺野登先生が、「イノベーション全書」という本を出版されました。イノベーションの「フィールドガイド」(活動手引き)をコンセプトとして書かれています。
イノベーション実践のためのヒントを提示することが目的とされており、実際に多くの気づきをいただきました。特に印象に残った点をいくつかご紹介したいと思います。
離見(りけん)の見
これは、世阿弥が能楽論書「花鏡」で述べた言葉だそうですが、「能の演者はあらゆる方向から自身の演技を見る意識を持たなければならない、という心得」のこと。演者自身が見る己の姿は「我見(がけん)」のため、離見、すなわち観客と同じ目で見なければ、自分の舞を見極めることができないという教えです。
Yume Proにおけるイノベーション創出活動においても、様々なビジネス・アイデアについて議論しますが、我見の人が多く、世の中が見えていないと感じることが少なからずあります。ビジネスモデルを磨いていく際には、「離見の見」で自分がどの様な立ち位置にいて、世の中から評価されているのかを押さえることが必須です。
「イノベーションはビッグピクチャーから始まる」
多くのイノベーティブな企業を輩出した日本ですが、最近では、多くの企業が「イノベーション近視眼」になっていると紺野先生は指摘します。近くのモノばかり見ていると近視になってしまいます。これと同じで、企業が自分の強みだけに意識を集中していると世の中の環境変化が見えなくなってしまうという喩えです。
イノベーション近視眼を矯正するために必要なのは、大きな目的を掲げること。誰にどんな価値を提供し、社会にどの様なインパクトを与えようとするのかという原点に立ち返ると、「ビッグピクチャーの時空から、今の自分たちを見ることで、なすべきことが見えてきます」と説いています。
遠くを眺める癖をつけて近視を矯正しようとして、気がつくと目の前しか見ていないということになりがちです。これと同じで、イノベーションもいつも目的に立ち返ることが大切だと改めて感じました。
「イノベーションとダイエットには共通点がある」
イノベーションもダイエットもマニュアルや事例集はあふれているものの、成功したという話はごくわずかです。双方の問題点として指摘しているのが「心のカベ」の存在です。
紺野先生は、このカベを打ち破るために、「目的」と「共感」と「場」の必要性を指摘しており、これが「イノベーション全書」のテーマとなっています。イノベーション創出活動は、既存事業のやり方と異なるのですが、人は誰しも、これまでの仕事のやり方が心地よいコンフォート・ゾーンで生きています。
現状維持を脱して、新しい観点で活動しようとしても、会社全体は一気に変わりません。このため、起点となる「場」を作り、ここに「目的」に「共感」した仲間が集まって活動を行い、徐々に全体に広げていくことが必要です。
Yume Proも、SDGsに掲げられた社会課題解決を目的に掲げ、イノベーションルーム「Yume ST」を拠点として様々なトライアル・アンド・エラーを重ねてきています。グループ全体で、「イノベーションが日常的な活動になる社会文化」の実現を目指して取り組んでいきたいと思います。
(2020年3月13日、チーフ・イノベーション・オフィサー(CINO)横田 俊之)