ほぼ週刊 CINOのつぶやき(チノつぶ) 第37号
「ワタシから始めるオープンイノベーション」

「ワタシから始めるオープンイノベーション」の表紙
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku
/2019/openinov_tf/torimatome/siryou3.pdf
最新記事
内閣府知財本部が報告書を公表
2019年6月21日、内閣府知財戦略本部の「価値デザイン社会実現に資する実質的なオープンイノベーションの実施に関するタスクフォース」(OITF)が報告書をとりまとめました。タイトルは、「ワタシから始めるオープンイノベーション」です。7月1日付けの日経新聞でも「オープンイノベーションなぜ空回り 知財本部が報告書」という見出しで、渋谷編集委員の記事が掲載されています。
昨年11月から私もOITFの委員として議論に参画させていただいている様子を、チノつぶでも5回にわたって紹介していますので、こちらもご覧ください。
「価値デザイン社会を実現する」 (その1 チノつぶ第11号)、(その2 チノつぶ第18号)、(その3 チノつぶ第23号)、(その4 チノつぶ第27号)、(その5 チノつぶ第30号)
価値デザイン社会
報告書の底流を流れているのは、世の中のパラダイム変化です。つまり、基本的に物不足で作るモノは売れた供給主導の経済から、需要側のニーズを踏まえた価値を提供することが求められる需要主導の経済(価値デザイン社会)への移行です。これまでの作ったモノを売り込む「プロダクトアウト、マーケットイン」から、「マーケットアウト、プロダクトイン」というビジネスモデルに転換しなければ、企業が持続的に成長することが難しい時代にシフトしつつあります。
「マーケットアウト、プロダクトイン」型ビジネスを展開しようとすると、自社リソースで足りない部分は、パートナーとのコラボレーションによって充足することが必要になります。これが実質的なオープンイノベーションということになります。
経営者、新規事業担当者、既存組織のマインドが重要
報告書では、我が国で実質的なオープンイノベーションが進まない要因を経営者、新規事業担当者、既存組織の3つのセグメントに分けて分析を行っています。また、各企業の現状をチェックするため200項目の診断リストがついています。
この診断リストは、タスクフォースの中で実施したワークショップにおいて各委員がポストイットに書いたコメントの山から事務局が作成したものです。オープンイノベーションと言っても、それぞれの企業のビジネスや風土によって様々ですので、まずは、こうした診断リストを活用して現状を認識するところから取り組みに着手することが有効だと思います。
OKIを診断する
OKIでは、2年前に、当時の全役員と新規事業担当者・経験者計50名へのインタビューによって診断を行いました。Yume Proを立ち上げるに際しては、この診断結果を基に、社長と侃々諤々の議論を行い、トップと新規事業部隊が一枚岩となって、噛み合っているところが強みとなっています。(チノつぶ第2号 スピードの秘訣(その1))
残された課題は、既存組織との関係です。チノつぶ第18号でも書きましたが、新規事業と既存事業に求められるマネジメントは全く異なります。既存事業の感覚で新規事業に親切心で口出しをする「エセ正義の味方」の存在が、新規事業の足を引っ張ります。そこでYume Proでは、「エセ正義の味方」撲滅を目指し、経営層から率先してイノベーション研修を実施しています。
昨年度はグループ全体で1,059名が参加しました。今年度は、新しい取り組みも加えて進めていきます。ロードマップでは、5年間で「イノベーションが日常的な文化になる」グループ全体を目指しており、今回の報告書で理想とされるような姿を早く実現したいと思います。
(2019年7月16日、チーフ・イノベーション・オフィサー(CINO)横田 俊之)