ほぼ週刊 CINOのつぶやき(チノつぶ) 第27号
「価値デザイン社会を実現する」(その4)

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知財戦略本部の「価値デザイン社会実現に資する実質的なオープンイノベーションの実施に関するタスクフォース」(OITF)は、4月5日に第5回会合を開催し、報告書の検討を行いました。これまでは、グループに分かれたワークショップ形式で検討を進めてきたため(※チノつぶ第11号、18号および23号で紹介)、委員と事務局がテーブルを囲んで質疑を行うという、通常の審議会スタイルが新鮮に感じる会となりました。
誰に何を伝えたいのか?
今回のタスクフォースにおける議論の焦点は、「価値デザイン社会実現に資する実質的なオープンイノベーション」を世の中に広めていくために、誰にどのようなメッセージを伝えたいのか、伝えるためには、どのような手段が効果的なのかという点でした。さまざまな意見があり議論は尽きませんでしたが、私が指摘したのは、目指すべき「価値デザイン社会実現に資する実質的なオープンイノベーション」をクリアに伝えることが必要ではないかということ。
「マーケットアウト」型のイノベーション
たまたま、事務局から守屋実委員の取り組みについて紹介があって、これではないかと感じたのが「マーケットアウト」型のイノベーションというキーワード。五十音順の座席配置のため、私の隣に守屋実さんが座っておられたのですが、守屋さんが勤めていたミスミの創業者、田口弘さんが生み出した概念とのこと。20回以上の新規事業開発の経験を持つという守屋さんが大切にしている原則の1つです。
生産ありきで自分が作りたいものを作るプロダクトアウト、それをどう売るかを考えるマーケットイン。それぞれ、オープンイノベーションで他社リソースを有効活用する取り組みも数多く見られます。社内で解決困難な技術課題をナインシグマ(※1)のような仲介機関を活用して技術探索を行い、積極的に活用することで開発スピードを大幅に短縮するといった事例がこれに該当します。
※1:ナインシグマは、アジア、アメリカ、ヨーロッパを拠点に、世界中のオープン・イノベーション推進活動を支援する企業。 https://ninesigma.co.jp/company/information/
実質的なオープンイノベーションとは?
これに対して、マーケットアウトは、完全に顧客の側に立って、必要とされるものを実現する取り組みです。つまり、お客様のお困りごと、社会課題を解決するために必要なものを提供する活動となります。マーケットアウト型になると、そもそも自社のリソースだけで課題解決を行うことは、ほぼ不可能になるため、オープンイノベーションとならざるを得ないことになります。
タスクフォースでは、「えせオープンイノベーションの類型」を示しつつ、何が「実質的なオープンイノベーション」なのか、気づきの機会を与えてはという議論も行っていますが、ストレートに「これからは、マーケットアウト型のオープンイノベーションの時代」というメッセージを出した方がわかりやすいのではないでしょうか。
次回タスクフォースは、Yume STで開催
次回のタスクフォースは、OKI本社2階に設置されているイノベーション・ルームYume STに招致しました。OKIのイノベーション推進部が取り組んでいるYume Proは、まさにマーケットアウト型のオープンイノベーションですが、タスクフォースにおける議論を積極的に吸収していきたいと考えています。
(2019年4月15日、チーフ・イノベーション・オフィサー(CINO)横田 俊之)