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時代とOKI

第1回 創業 沖 牙太郎の挑戦

黒船来航。1853年(嘉永6年)、マシュー・ペリー提督率いるアメリカ海軍に所属する4隻の東インド艦隊が江戸湾浦賀沖に来航し、江戸幕府に対して強硬な姿勢で開国を迫ります。これを契機に日本は世界の波に巻き込まれ、憂国の志を持つ多くの人々の考え方がモザイクのように交錯しながら、明治維新へと突き進んでいきます。

技能で身を立てたいとの思い


沖 牙太郎

この黒船来航から5年遡る1848年5月10日(嘉永元年4月8日)、当社の創業者である沖 牙太郎は、広島県沼田郡新庄村(現在の広島市西区新庄町)で生まれました。父は太郎、母はノブで、6人兄姉の末っ子でした。

自然に恵まれた環境の中で、牙太郎は穏やかな幼年期を過ごします。ただ、彼は2つの点で他の子どもたちとやや違っていました。1つは、極めて負けず嫌いな性格であったこと。特に相撲が好きで、その際、「負けたら最後。相手の肩先に食いついて離さなかった」(『沖 牙太郎』)という幼馴染の述懐が残っています。

もう1つは、「百姓は嫌だ。大工になる」と言い張っていたことです。斜陽気味とはいえ、沖家は多くの人を使う大農でした。それだけに「貧しい」ことを理由に百姓を敬遠していたとは考えづらく、むしろ技能で身を立てる職業の象徴として、大工に憧れていたと推測できます。この2つのエピソードには、後に牙太郎が技術者として、事業家として活躍する天賦の才の一端が隠されているように思えます。

青雲の志を胸に上京

彼が20歳を迎えた時、時代は明治へと突入します。江戸から改められた東京へは、全国から若者たちが押し寄せていました。街にはザンギリ頭の風情が闊歩し、1872年(明治5年)には新橋・横浜間で陸蒸気が汽笛を鳴らしました。

青雲の志を胸に牙太郎は上京を決意し、単身、東京へと旅立ちます。海路を通じて横浜へ、陸蒸気で新橋に降り立ったのは1874年(明治7年)、27歳の時でした。

その時の思いを「(中略)憧れの帝都・新橋駅に降り立った時はまさに茫然自失、さながら夢境をさまよう心地であった」(『沖 牙太郎』)と表しています。

実はこの年、日本の情報通信の行方を左右する大きなエポックがありました。北は北海道から南は九州までの幹線電信網が完成したのです。また、政府が「勧業建白書」をまとめ、産業政策の基本を天下に示しています。そのベースとして、政府は1870年(明治3年)に工部省を設立、さらに1873年(明治6年)、電信機の修理・製造を目的に、工部省内の電信寮に製機所が設けられています。後の牙太郎の軌跡を思えば、彼の上京は天の配剤ともいうべき、絶妙なタイミングであったといえるのです。

工務部製機所に入所


シェーファーとその家族

確たる当てがなかった牙太郎は、同郷の先輩で、当時、工部省電信寮の修技科長をしていた原田 隆造のもとを訪ねていきました。原田は彼を住み込みの書生として採用します。主人の弁当を持って汐留の電信寮に通うのが牙太郎の日課となりました。

そこには電信機の操作を教える修技校と、電信機を製作する製機所がありました。銀細工師だった牙太郎は、次第に後者に惹かれ、いつの間にかヤスリを持って、製機所の手伝いをする日々が増えていきました。

手伝いに励む牙太郎の情熱と誠実な人柄、そして天賦の才は一際輝いていたのでしょう。彼は周囲の推薦を受けて正式に製機所の門をたたきます。その際、牙太郎は自作の銀かんざしを添えて履歴書を提出したといいます。

製機所のボスは、ルイス・シェーファーというスイス人技師でした。1本のドリルやバイトを作るにも極めて入念に加工し、焼き入れの程度を見るだけでそれと識別できたシェーファーの技は、まさに神業に近いものがありました。そのシェーファーに熱意と勤勉さ、そして技能を認められた牙太郎は、旋盤を前に入念の技をたたきこまれる日々が続きます。1875年(明治8年)の冬、シェーファーは日本政府との契約を終え、製機所を去ります。その置き土産として、牙太郎には主に旋盤を担当する技工の地位が与えられたのです。

1877年(明治10年)、官制改定で電信寮が電気局になった際、牙太郎は工部九等技手二級へと昇進します。1本のヤスリを手に上京してから約3年、雑役として製機所に入所してから2年4カ月で工部省技手の辞令を手にする異例の昇進でした。製機所との出会いは偶然だったのでしょう。けれど牙太郎の資質なくしてはこうしたチャンスを決して引き寄せられなかったに違いありません。

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