Yumeトーク 特別編
中国から全員参加型イノベーション!
「非接触印刷ソリューション」の新規事業アイデアを提案
SUMMARY
OKIのイノベーション・マネジメントシステム(IMS)「Yume Pro」は、所属部署、グループ会社、海外法人を問わず、全員参加型のイノベーションを目指しています。
今回は、海外法人の社員として初めてYume Proチャレンジに応募し、見事、特別賞を受賞したOKI Data Dalian(ODD)の金剛(Jin Gang)のイノベーションに対する取り組みや意気込みに迫ります。

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デジタル制御技術を究めるためODDへ入社
子供の頃、TVで見聞きしたコンピューター技術の万能性に驚いたことをきっかけに、コンピューターサイエンスに興味を持ち、大学・大学院ではコンピューターでの機器制御やその理論を研究していました。卒業後は、地元である大連の通信機器メーカーに就職しましたが、大学時代の研究テーマに近い仕事に関わってみたいと思っていました。そうした希望がかなう会社として、2008年に知人の紹介もあってODDに転職しました。入社を決意したもう一つの決め手として、日本で技術研修を含め働ける制度の存在もあります。
入社後は、福島のOKIデータシステムズ(当時)へ2年間出向しました。この期間と中国に帰国後の2年間で、大学での学びを活かせるSIDM(Serial Impact Dot Matrix)プリンターの制御部の開発を行いました。
その後、4年間余りLEDプリンターのファームウェア開発経験を経て、2016年からスマートフォン(iOS/Android)の印刷アプリケーションの開発と印刷制御サービスのメンテナンス、2019年からWindows系のユーティリティ開発部門でのプリンターの操作・制御・メンテナンスに関するSDK(Software Development Kit)開発に従事し、プリンターとスマートフォンの連携による技術的ポテンシャルについて熟知していました。こうした経験が、今回のYume Proチャレンジ応募に結びついています。
ユーザー視点での新規事業アイデア「非接触印刷ソリューション」
OKIグループで進めている全員参加型のイノべーションの取り組みは、グローバルすべてのグループ企業の従業員にまで十分浸透しているとはまだ言えません。今回、私はこの取り組みを知り、自分事として新規事業でイノベーションを起こすことを考えるようになりました。この中で、イノベーションを実践に移していく仕組みとしてビジネスアイデア実践コンテストYume Proチャレンジを知り、「非接触印刷ソリューション」というアイデアで挑戦しました。その結果、特別賞として入賞でき、また後から聞いたことですが、海外からの初のエントリーということで、大変光栄なことと感じています。
さて、私の提案アイデアを説明する前に、まず簡単に日本とは異なる中国の印刷事情について説明します。中国では役場などの行政機関で使われる申請書類や、病院での検査結果、学校に提出する宿題・レポートなどの各種印刷物を、利用者自身が印刷する必要があります。また中国では家庭用のプリンターの普及率はとても低いので、街中にプリントサービスを行う店舗があります。このシステムは行政機関など運用者側にとっては合理的な半面、利用者にとっては不便に感じる面があります。プリントサービス利用においては、以下のような煩雑な手順を踏む必要があります。
1)印刷が必要なデータをUSBメモリやスマートフォンに保存
2)プリントサービス店舗・行政機関窓口に設置されたPCに、専用アプリを用い印刷するデータを転送
3)店舗や窓口の係員がデータを印刷
4)印刷物を受領
こうした手順は、不便さを感じるばかりでなく、データをPCに転送して係員が印刷し手渡しするため、プライバシーや情報の漏洩、さらにはコロナ禍における感染対策上のリスクなどが伴います。

これらのプリントサービスにまつわる現場の課題に着目し、利用者自身のスマートフォンを使い、専用ドライバーやアプリのインストール不要で、PC・インターネット回線も使わず、非接触のまま印刷サービスを利用できる安全安心なソリューション(「非接触印刷ソリューション」)が、私のアイデアです。
このソリューションでは、利用者は以下のステップで必要な印刷を行います。
1)利用者がプリンターに貼付されたQRコードをスマートフォンでスキャン
これにより、プリンターとスマートフォンがWi-Fi接続
2)再度、プリンターに貼付されたQRコードをスキャン、プリンターのサーバーに接続
3)スマートフォン上で印刷指示を行い印刷完了
私たちは、このソリューションのPoCを、2021年8月から大連市内の市民センター(行政機関)、10月から大連市内の大学で実施しました。利用者の方々から、衛生面、安全面、操作性、利便性などの面で高い評価を得ることができました。
加速支援でマーケティングを実践
今回、PoCの実施に際して、技術面ではプリンターやWi-Fiの制御といった既存技術の組み合わせで実現できました。しかし、重要なのはビジネス仮説の検証であり、実際にお客様の課題を解決し、価値を提供できるかの検証でした。PoCに協力してくれるパートナーの探し方、サービスのプロモーション活動など、マーケティングの知識も乏しく、大変な苦労がありました。Yume Proチャレンジでは、応募後に加速支援者が付き、アドバイスを貰いながら1つずつ課題を乗り越えていくことができます。最終的には、プリンターの販売会社であるOKI Trading(北京)の協力を得てPoCに漕ぎ着けることができました。
また、この経験を契機に、私自身、これまで取り組んできた技術開発だけでなく、コスト意識や市場開拓、マーケティング活動などの重要性も自覚し、広い視野でビジネスを理解できるようになった気がします。やはり、自分のアイデアが実際に社会実装されることで、利用者の課題を解決し喜んでもらえることは、大変嬉しく思います。このようにイノベーションに自分事として取組み、意識変革ができたのはYume Proチャレンジの効果だと思っています。
全員参加型インベーションをグローバルに広げたい
今回のPoCを通じて、大学でのカラー印刷のニーズという現場からの声がありました。今後の目標として、カラープリンターへの対応にも挑戦したいです。それと同時に、各地で行われる展示会へ積極的に出展し、プロモーション活動にも注力し、ビジネスとして成功させたいと考えています。また現在、AIを活用した画期的な印刷ソリューションの構想も練っています。再度Yume Proチャレンジにエントリーし、さらにビジネススキルも向上させていきます。
今回の私のYume Proチャレンジへの挑戦をきっかけに、中国、アジア、さらには世界中のOKIグループ企業の社員が、イノベーションを自分事と考えて活動の輪が広がっていくことを願っています。