Yumeトーク第53回
DXソリューションで社内と社会の課題を解決する(前編)
SUMMARY
OKIはSociety5.0に向けた成長を支える「DX-Ready」な企業として、2021年7月に経済産業省より「DX認定事業者」の認証を得て、パートナーとともにDXの社会実装とビジネスの拡大を推進しています。今回は、その司令塔となるソリューションシステム事業部・DX事業推進センターのキーパーソン6名に藤原CINO兼CTOが、前編・後編の2回にわたりOKIのDX事業戦略とDXソリューションについてインタビューします。

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組織の壁を打破し、DX事業とDXソリューションの売上倍増を目指す
藤原お忙しいところ、OKIのDX事業とDXソリューションを支える錚々たるメンバーにお集まりいただき、ありがとうございます。
今日のテーマはOKIのDX事業とDXソリューションです。早速ですが、DX事業推進センター設立の経緯から聞かせてください。まずは浜口センター長にお願いします。
浜口私たちの組織の前身は、2017年に結成されたIoTアプリケーション推進部です。ちなみに、その時のリーダーは、ここにおられる藤原さんです。そこからフライングビューなどの商品化・事業化検討がスタートしました。その後、2019年にIoT事業推進センターとして組織を拡大。そして、今年(2021年)度からDX推進センターとしてリスタートしました。課せられたミッションは「中期経営計画(中計)2022」で掲げた、DX領域での売上倍増という目標達成です。
藤原DX領域の売上倍増のために、どのような活動をされていますか?
浜口まずは、事業本部と営業本部が一体となったDX活動の推進、共創パートナーとのエコシステムの活用やトップリレーションの強化、社内的にはDX管理ツール導入による進捗状況の見える化、イノベーション・マネジメントシステム(以下、IMS)プロセスへの対応。次に、AIエッジや5G、スマートシティ、海洋・音響などOKIが得意とする技術を組織の枠を超えて案件化する、本部横断テーマ活動の推進。そして、共創パートナーとの社会実装事例など、DX拡大のための積極的な情報発信。以上の3つを活動方針としています。

藤原OKIという組織は良くも悪くも歴史が長く、変わったといえども、未だに縦割りの弊害も残っています。そこで、本部横断テーマ活動をどのように推進しているのでしょうか?
浜口たとえば、イノベーション推進センター(以下、IPC)が、ある仮説をもとにイノベーティブな事業シナリオを描いたとします。しかし、これを事業部に落とし込もうとしても事業部のリソース不足や、1事業部だけでは完結できない案件などの理由で、事業部が引き受けられないケースも多々ありますよね。そういう時は、私たちDX事業推進センターが一旦引き受け、コアとなる技術やソリューションを整理し、本部横断テーマの事業化案件として、各事業部へ引き渡します。
藤原そうですね。まさにIPCとDX推進センターは一心同体のようなものだと常々言っているわけですね。このように、組織間のリレーションもかなり改善されました。その他にも、前身であるIoTアプリケーション推進部が発足した時と、現在と比較して、変わったと思う点はありますか?

浜口IMSというイノベーションへの取り組みが定着して、メンバー個々の意識が変わっってきているということでしょうか。それと、DX領域の売上倍増という具体的な数値目標が掲げられたのも、意識変化の大きな要因だと思います。
藤原では、DX事業推進センターは、どのような組織体制で運営させていますか?
浜口事業領域別の3つのSEチームとプロモーションチームに加え、共創パートナー活動の統括役という体制で、事業部、営業、IPCと連携してDX事業拡大を推進しています。
『機会の特定』と『コンセプトの創造』の試行錯誤がイノベーション成功のポイント
藤原それでは、それぞれのチームの役割やミッションなどを聞いていこうと思います。まずは、共創パートナー統括の小川さんからお願いします。
小川私は営業出身という経験を活かして、共創パートナーとの新事業創出に向けた諸々の活動と共に、活動の見える化ツールの構築をしています。
具体的には、OKIが現在、展開している100社を超える共創プロジェクトそれぞれの活動・進捗状況をDX管理ツールというシステムでイノベーション活動全体の動きから個別案件までを見える化しています。この仕組み自体がイノベーションと思っていますが、これはIPCの小杉さんと一緒に“社内共創”で作っています。これによりIMS(イノベーション・マネジメントシステム)の国際規格であるISO 56001認証取得に向けた管理の有用性を確保することができます。またIMSで適切にマネジメントすることこそが、OKIを次々にイノベーションを生み出す企業に変身させる最重要の戦略と考えています。

藤原この管理ツールを活用している現場として、失敗例、成功例を含めて、さまざまなDX案件事例を見てこられたかと思いますが、イノベーションを創出するプロセスの中で、どこが最も重要と感じますか?
小川結論から言うと、前半の2つのプロセス“機会の特定”と“コンセプトの創造”だと思います。ここが不十分でスジの悪いものだと『間違ったことを正しく行ってしまう』こととなり、限られたリソースの無駄遣いになってしまいます。従って前半の2つのフェーズに対しては『脳ミソの皺から汗が出るくらい』必死に考えて、『ナルホド その手があったか!』というコンセプトを創造すべきです。
藤原その部分をしっかり固めることで、次の段階の“コンセプトの検証”もスムーズになりエビデンスも揃い、完璧な事業シナリオとして事業部へ引き渡せるということですね。
小川そうですね。またその中で重要なポイントは、お客様も気づいていない超潜在的なニーズを掘り起こすことです。そのためにも、私たちとしても、デザイン思考などの思考方法やツールなどをしっかり学び、実践することが大切だと思います。
藤原お客様の超潜在的ニーズを掘り起こすためには、機会の特定の前に、問題の発見ということが大切だと思っていますが、小川さんはどうですか?
小川当たり前を疑って、全く違う角度から見ることで“問題を再定義”することによっても、埋もれたニーズを掘り起こせる確度が高まると思います。
藤原これまでのOKIは、お客様からの要望通りの製品やソリューションを提供するだけでよかった。でも、これからは、お客様に内在する問題を先回りして見つけ、ソリューションを提案することが必要です。
小川そのためには、ひとつの技術やビジネスモデルで問題を解決できなくても、違う技術等を適用したり組み合わせたりして解決する能力も問われてくるので、幅広い知識の習得や経験を積むことも重要ですね。
SEによるDXソリューション支援で船舶IoTとスマートシティを推進
藤原さて、ここからは各現場の取り組みなどを聞いていきます。まずはソリューションSEチームの駒井TMからお願いします。
駒井ソリューションSEチームでは、DX拡大ソリューションの社会実装支援と本部横断テーマの案件化を推進しています。その主なミッションは4つです。まずは、海洋分野、中でも船舶IoTを中心とした案件の獲得。次に、スマートシティ実現に向け地方自治体をターゲットとした市場開拓。そして、後にご紹介するプロダクトSEチームと連携し、OKI独自技術であるフライングビューやAIエッジ処理などを活用した新たな共創スキームの発掘。さらに、社会インフラソリューション事業部が提供する金融・法人向けDX事業化案件とDXソリューション案件の支援です。

藤原船舶IoTということで、現在、海運業のお客様で一番困っていることは何でしょうか?
駒井どの業種も共通ですが、人手不足と高齢化が深刻です。特に、日本の生命線である大型タンカー、コンテナ船などの乗組員の大半は外国人に依存しているほどです。それに加え、近年では欧州をはじめ各国の環境規制が厳しくなり、CO2の排出削減や燃費向上をDXの活用で実現したいというニーズがあると思います。
藤原それと船舶の安全航行を支える技術として、OKIのフライングビューも活躍できると思いますね。また、最近、政府が発表した2050年カーボンニュートラルを受け、DXの次はGX(グリーントランスフォーメーション)だと言われ始めました。そういう意味では、政府予算もつけやすい再生可能エネルギー、洋上風力発電の領域でOKIが何かできそうな気がします。
駒井OKIには風力発電の技術や実績は無いのですが、光ファイバーセンサーを使った洋上風力タワー周辺の海洋監視・警備や、電力の管理や発電所関連設備の管理などの領域では十分実績をアピールできるはずです。
藤原スマートシティに関してですが、現在、このコロナ禍で大変な思いをしている地方自治体の一番の問題は何でしょうか?
駒井地方によって深刻度の差はあるでしょうが、総じて言えば人口減少と高齢化です。人口減少問題に関して各自治体は、いかにして減少スピードを落としていくかを考えるので精一杯というのが現状です。また、高齢化という点では、移動弱者の問題解決に向けて、MaaS(※1)などの活用が検討されています。特に、山間部や僻地などのローカルMaaSでは、今後、自動走行バスなどが実用化されはじめているので、OKIのITSやETCなどの技術の活用できるはずです。そして、交通弱者の問題が解消されれば、人口減少の歯止めにもなるはずです。
藤原私も経験あるのですが、お客様に新たな提案をすると概ね「それ、イイね」と関心を示してくれます。しかし、それから先に進めるのが難しい。そこから先に商談を進めるために、駒井さんはどのような行動をされていますか?
駒井お客様自身が、何が課題何かを把握できていないケースが多いです。そこで、本当に困っている点はどこにあるかを抽出し、その具体的な解決策と、それにかかる予算、スケジュールなど錯綜するパズルを解くために、ピボットを繰り返しています。結果、検証の段階で断念するケースもありますが、Yume Proに則り、お客様の課題を解決する商品やサービスを開発しています。
後編でもさらにOKIのDX事業とDXソリューションについてご紹介します。ぜひご覧ください!
※1 MaaS(Mobility as a Service):住民個々の移動ニーズに対して、複数の公共交通機関やそれ以外の移動サービスを組み合わせ、検索から予約、決済までをワンストップで提供するサービス。マース。