Yumeトーク第26回
知財マネジメントという視点からイノベーションを語る。(前編)
SUMMARY
今回は、チーフ・イノベーション・オフィサーの横田と、知的財産部の村谷正之、岡本晃、吉田敏之が、Yume ProにおけるOKIの知的財産(以下、知財)戦略について語り合います。(前編)

左から横田CINO、岡本 晃、村谷 正之、吉田 敏之
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イノベーション活動と知財部の役割
横田Yume Proプロジェクトのように外部パートナーと新ビジネスを共創していくケースが増えていくと、互いの権利関係の調整などもあり、知財に詳しいメンバーが必要だと感じていました。しかし、従来は企業の知財部門というと研究開発の成果を権利化することが仕事というような、非常に保守的なイメージがありますよね。そんな中で、OKIの知財部は、積極的にイノベーション創出活動にコミットしてくれています。イノベーションを推進する立場としては、こういった知財部の主体的、積極的な取り組みを歓迎し、頼もしく思っているのですが、どういうお考えでYume Proにコミットしようと思われたのでしょうか?

OKI執行役員 チーフ・イノベーション・オフィサー
横田 俊之

コーポレート本部 法務・知的財産部
知的財産部 知財第二チーム スペシャリスト
村谷個人的な話ですが、私が知財部に配属された頃の業務は、特許出願の件数確保の活動や既存ビジネスの特許係争の対応が中心でした。やがて、技術の標準化と特許の関係やビジネスモデル特許などに知財業務が多様化する中で、ただ闇雲に特許を取るだけではビジネスに貢献できないことを認識し、発明等の知財をどのようにビジネスに活用するのかを想定しながら特許出願の仕方を考える、つまりは将来のビジネスを主眼とした知財マネジメントの必要性を感じたからです。
横田そういった村谷さんの業務経験と、社会課題解決からイノベーション創出を目指すYume Proプロセスのコンセプトが合致したというわけですね。
村谷従来、特許情報は特許出願や特許権を守る際に活用していたのですが、視点を変えれば、発明は現在ある課題を解決するために生まれたものなので、ニーズを把握する道具としても活用できます。これはYume Proプロセスの初期段階の「社会課題の探索」とも合致しているはずです。
岡本特許には既存技術の問題点や技術的課題が書かれています。技術的課題は、言い換えれば将来的に発生するであろう世の中のニーズに関する情報とも言えます。特許を分析することで、潜在的なニーズも発見できる可能性があり、特許を分析した特許情報をOKIのイノベーション活動に役立てていただきたいという思いで参加しています。
吉田私の場合、事業部における新規事業開発や設計業務を経て知財部に配属されことから、開発現場がわかる知財として、2018年にイノベーション推進部が取り組んでいた物流関連のプロジェクトをサポートさせていただいた経緯があります。その際、愛読書であるドラッカーの「イノベーションと企業家精神」で述べられていた「分析から始める。シンプル構成である。スモールスタートである。」というイノベーションの原理を私なりに解釈し、分析に基づき技術的なキーリソースのシンプルな組み合わせを見つけ出すことによって、ビジネスモデル検討から特許出願に繋げました。そして、事業推進と同時に知財戦略推進する、つまりは事業、技術開発、知財が一体となったイノベーションの仕組みづくりの必要性を感じました。

コーポレート本部 法務・知的財産部
知的財産部 知財第二チーム
横田OKIのイノベーションパートナーである一般社団法人Japan Innovation NetworkがISO56002の専門委員会に参加された際、中国代表は、イノベーションの機会の特定のプロセスでは、知財の権利化状況を押さえることを重視しているという話をされていました。このアプローチは皆さんの発想と同じですね。
村谷横田さんは、よくご存じとは思いますが、IPランドスケープ(※1)という知財戦略の手法があります。自社を含めた市場全体の研究開発、特許情報、経営戦略などの動向を総合的に整理・分析し、こういうビジネスにはどのような特許あるいは知的財産のマネジメントが必要であるかを事業部門などに提示していくことで、これからの知財部の大切な役割だと思っています。
横田現在、Yume Proプロセスにおいて共創パートナーを開拓するために、OKIとしても積極的な情報発信を行っています。その際、外部に対して「どこまで情報をオープンにしていいのか?」もしくは「例えば特許出願を終えた後など、どのタイミングでオープンにしていいのか?」などのアドバイスを知財部に期待しています。
今後、Yume Proプロセスに沿ったイノベーション創出活動を進める上で、知財部を活用するメリットをアピールしていただけませんか?
村谷共創プロセスの場合、ニーズに関してパートナーとともに作り込んでいく初期の過程で、ビジネス上の価値すなわち知財が発生します。この取り扱いを曖昧にしたままプロジェクトを進めていると、作り上げた技術の用途がパートナーの意向で限定されるなど、後々問題が発生する可能性があります。知財部を活用することで、早い段階から将来のリスクを予見し、双方にとって満足できる条件を検討できると思います。
横田村谷さんが常々発言されている「発明の現場にいたい」というのは、そういうことなんですね。

コーポレート本部 法務・知的財産部
知的財産部 企画チーム チームマネージャー
岡本従来の知財部の仕事は研究開発部門・事業部門からの要請を受けて動くという、待ちのスタンスが中心でした。しかし、イノベーション活動の場合、知財部としては、ビジネス推進から一歩引いた立場から、知財に関する客観的な知見や気付きなどを積極的に提供していくつもりです。
吉田私は事業部出身ということもあって、事業部の面子を第一に考えて事業化を支援しているつもりです。というのは、コンプライアンス宣言をしているOKIとしては、決して他者の特許を侵害するようなことはできません。しかし、懸命にビジネスモデルを検討し、それを推進していくあまり、侵害してしまう可能性もゼロとは言えません。その場合、恥をかくのは事業部となるので、そういう瑕疵が生じないよう、積極的にコミットしていきたいと思います。知財部を活用することで、イノベーション創出において特許抵触リスク軽減を図れると思います。
※1 Intellectual Property Landscape