Yume対談
「キューオキ×OKI
~ディーラー×メーカーが興すオープンイノベーション~」
SUMMARY
株式会社キューオキは、福岡市に拠点を置くICTベンダーです。OKIのトップディーラーでもある同社はAIを活用した駐車場管理ソリューション「AIスマートパーキング」を提案し、2020年のAIエッジ・カンファレンス&ソリューションコンテストで、見事2位に輝き、今年7月に商品としての販売を開始されました。今回は、同社の廣島社長をお迎えし、OKI藤原執行役員がオープンイノベーションや、エコシステム構築の重要性について対談します。

OKI SS事業本部 永井、OKI 藤原執行役員(CINO兼CTO)
半世紀余り、九州を拠点にビジネスを展開するOKIのトップディーラー
藤原本日は、遠方よりご足労いただきありがとうございます。
キューオキさんは、OKIのAIエッジコンピューター「AE2100」を活用した「AIエッジ・カンファレンス&ソリューションコンテスト2020」において「AIスマートパーキング」 でエントリーし、2位に入賞されました。AIエッジコンピューティングはOKIの注力分野であり、今後の成長市場でもあるので、御社のような取り組みや今後の市場展開には、私たちも大きな期待をしています。また、廣島社長の着眼点や事業構想などについてもお聞きし、OKIのイノベーション、事業創出の参考にさせていただきたいと思います。
私たちは十分に存じ上げていますが、読者の方に向けて、まずは、御社の紹介と廣島社長の自己紹介をお願いします。
廣島当社の前身である九州かもめ通信株式会社は、主に九州地区をテリトリーとしたOKIのPBXの保守会社として1971年に創業し、その後、PBX・ビジネスホンの販売・施工も手掛け、1975年には九州沖通信機株式会社に商号を変更し、そして、2016年からは株式会社キューオキとして事業を展開しています。
私は1978年に入社し、長らく佐賀県を中心にPBXや防災システムなどの施工や営業に携わってきました。ちなみに佐賀県にはOKIの支店が無いので、OKIさんの商材を取り扱い、社名も類似していることから、当社をOKIさんと勘違いされているお客様もいらっしゃいます。このように、当社、そして私が存在できているのは、OKIさんのおかげだと感謝しています。

藤原御社とOKIの関係の深さがよくわかりました。ではOKIとしては、キューオキさんとどのような関係を築いてきたのでしょうか?
ここは、今日の対談に同席してくれているSS事本(ソリューションシステム事業本部)の二人に聞いていきたいと思います。お二人、自己紹介と合わせてお願いします。
西田私はIoTプラットフォーム事業部でIoTやAIを活用したソリューションを実現する共通のコンポーネントを、キューオキさんのようなパートナー企業に展開するビジネスを担当しています。廣島社長が言われたようにキューオキさんとOKIは長い付き合いで、キューオキさんは全国80数社あるOKI特約店の中で、毎年、売上額トップ3を維持していただいている上に、OKIの製品力を上げるための貴重な現場の声をリアルタイムで上げていただけるので、OKIにとっては非常にありがたいディーラーの一社です。
永井プラットフォーム事業部IoTシステム部・部長の永井です。現在はIoT/AIシステムの社会実装を手掛けています。私も長く通信系に携わっていたのですが、10年ほど前にIP-PBX「Discovery neo」をリリースして以来、キューオキさんにはお世話になっています。2年ほど前には、西田事業部長から「キューオキさんが、IoTやAIを活用し社会課題解決に取り組みたいと仰っている」と廣島社長を紹介され、以来、この分野でもご一緒させていただいています。
生活者目線のアイデアで、AIコンテスト入賞
藤原さて、ここから本題に入ります。御社の「AIスマートパーキング」は、2020年に行われたAIエッジ・カンファレンス&ソリューションコンテストで、参加19団体中2位に入賞されました。まずは、このソリューションを発想した経緯を聞かせてください。
廣島数年前から、PBXなどの固定電話市場の需要拡大は望めないのではという危機感があった中で、当社がこれまで培ってきた通信系のノウハウとAIなどの先端技術を融合させたビジネスを模索していました。そんな折、AIエッジコンピューター「AE2100」を知り、「これだったらウチのようなローカル企業でもAI市場に参画できる」と直感し、すぐさま社内に企画チームを立ち上げ、AIで解決できそうな生活の中の困りごとを出し合いました。その際、ある社員の「ショッピングセンターで駐車場を探しよったら、なかなか見つからんで!イライラした」という発言をきっかけに、「AIエッジ処理だったら、小規模店舗でも低コストでスムーズな駐車場管理ができるはずだ」と思い、企画・開発に着手しました。
藤原生活者目線での発想から生まれたソリューションということですね。そういった着眼点はOKIとしても見習わなければなりません。というのも、OKIは長く受託開発で実績を積み上げてきたため、お客様の要求通りの製品開発は得意な反面、現場目線、生活者目線での発想を苦手としていました。なので、現在はイノベーションによる「矢印革命」を推進し、その弱点を克服しようとしています。
そのような機会の特定~仮説立案のあと、開発はトントン拍子に進んだのでしょうか?
廣島その頃、OKIさんからコンテストの案内が届き「この際、ダメ元でチャレンジしてみよう」と開発を急ぎました。しかし、現実は甘くありません。当社だけでは力不足を実感し、2020年4月にAI研究に取り組んでいる地元の久留米工業大学と産学連携契約を結び共同開発を始めようとした矢先、コロナ禍でプロジェクトが停滞してしまい、いつもお世話になっている西田事業部長に相談させていただきました。
西田これまでの長いお付き合いの中で、キューオキさんの通信分野での実績、技術力、営業力は高く評価していましたが、AIという領域は全く未知数で、正直言って心もとない感じでした。ですが、廣島社長のお話しを伺ううちに、新たなビジネス領域へのチャレンジに対する本気度に感銘し、IoTシステム部の永井部長を紹介しました。
永井パートナーさんのAIの開発をいろいろご支援している立場ですが、一番重要なことは、AIで社会課題を解決するという熱い想いと、やり遂げるんだという覚悟だと思います。廣島社長からAI開発の相談を受けた時、その“熱意と覚悟”が相当なものと感じ、強く背中を押したいと思いました。そこから、コンテスト応募に際し、久留米工業大学さんとの連携内容のアドバイス、AI技術サポートなどをさせていただきました。
廣島その後、永井部長のアドバイスを受け、利用シーンやターゲット、機能などを含めた商品コンセプトをしっかり固め、短期間でエントリーまで漕ぎつけました。

AE2100のリアルタイム性を最大限に活用したソリューション
藤原その結果、見事入賞されましたが、その時のご感想は…?
廣島当社のような地方の、それもメーカーでもない通信会社が、社会課題の解決にチャレンジしているという意気込みをアピールするつもりで応募したので、入賞するなんて考えてもいませんでした。その後、反響も大きく、地元・九州を中心に多くのお客様から問い合わせもあり、喜んでいる間もなく、商品化を急ぐ使命感が沸いてきました。
藤原御社の「AIスマートパーキング」の商品価値、セールスポイントを教えてください。
廣島当製品のストロングポイントは、やはりAIエッジ処理によるリアルタイム性と、導入側のメリットとして低コスト化が挙げられます。
従来の駐車場管理システムの多くは、個々の駐車スペースに設置された複数のセンサーで在車、空車を識別しています。しかし、これには膨大な数のセンサー設置やケーブル敷設が必要です。その点、当製品は駐車場の敷地面積や形状に応じたカメラの設置と、AE2100を設置するだけなので、大掛かりな設置工事が不要です。
また、最近はクラウド型AIによる駐車場管理も行われていますが、この方式だと5~10分程度のタイムラグが生じます。出入りの激しい駐車場ではスムーズな情報提供が困難になる上、インターネットの常時接続による通信コストが生じます。さらに、映像をクラウドに送るため、プライバシー侵害のリスクも発生します。
これに対し、駐車スペースの空車状況や駐車中の車種をエッジ(AE2100)側で判断し、結果のみを駐車場管理サーバーに送るのでリアルタイム処理が可能であるとともに、外部のクラウドに映像を上げる必要もないので通信費もかからず、利用者のプライバシーも守れます。
西田補足すれば、カメラに接続されたAE2100の子機と、管理サーバーに接続したAE2100親機間の通信には、OKIの920MHz帯マルチホップ無線「SmartHop」を使用することで、ケーブル敷設は不要で、カメラの増設、駐車エリアのレイアウト変更などにもフレキシブルに対応します。
藤原どれも、すばらしいと言うほかありません。私たちOKIがアピールしている“リアルタイムインテリジェンス”や“センサーネットワーク”などAE2100のメリットを最大限に活用しきったソリューションだと思います。

お客様の困りごとに寄り添う姿勢が斬新なアイデアを生み出す
藤原そもそも、このソリューションをはじめ、御社がユニークな発想を生み出す源泉はどこにあるのでしょうか?
廣島当社として常に意識しているのは、お客様の「困ったを解決!」する姿勢です。
当社は長年、ビジネスホンやPBXを扱っていますが、現在ではビジネスホンやPBXの機能は飽和しており、機能をアピールするだけではお客様の心には響きません。むしろ、現状の困りごとや課題をお聞きし、それらを1つ2つでも解決する提案をした方が成約につながることを実感しています。
また、先入観を捨ててお客様の話しを素直にお聞きする姿勢も大切です。最近、ある大学病院に対し、患者さんの利便性向上を売り文句に「AIスマートパーキング」をアピールしていました。しかし、病院のご担当者から「ウチの場合、駐車スペース探しなどで一番困りよるとは、1,000人以上おる職員や医療スタッフ達なんやけどね…」と指摘され、はっとさせられました。このように、お客様の声、現場の声から得た些細な「気づき」をすぐさま販売戦略や次の商品企画に反映させるように心掛けています。
藤原素晴らしいですね。私が社員に期待していることを、まさに実践されています。お客様目線、ユーザー目線での商品開発や、その行動力とスピード感で取り組まれている廣島社長は、まさにイノベーターだと思います。
エコシステムを構築し、AIエッジの用途拡大を目指す
藤原今日は、私の想像した以上に、イノベーティブな視点でお話しいただきましたが、最後に、今後の「AIスマートパーキング」の販売戦略や、御社の事業ビジョンなどを聞かせてください。
廣島これからは、PBXや通信システムなどレガシー系の商品、技術だけに依存していては、先行きは見通せません。今後、IoTやAIビジネスにシフトしていくのは必然です。
「AIスマートパーキング」に関しては、スマホへの通信機能の実装や、単に混雑状況を知らせるのではなく、これから満車に近づいている混雑なのか、駐車が減っていく過程の混雑なのかを判断し、利用者に知らせる仕組みも考案中です。加えて、公営の大型駐車場を運営するお客様からは、長期間放置された車を監視したいという相談も受けているので、解決を目指しています。さらに、AE2100を活用した工場敷地内の車両の通行管理、自治体向けの防災監視システムなどの展開も思い描いています。
藤原廣島社長から防災というキーワードが出ましたが、OKIのSS事本としては、AE2100の活用として、どのような利用シーンを考えていますか?
西田そもそもAE2100は、パートナーの皆様とのエコシステムを前提とし、さまざまなソリューションを提供するために開発されたAIプラットフォームです。AIエッジによるリアルタイム処理という特長を考慮すれば防災関連も有望な市場だと思いますし、この特長を活かしたソリューションは様々な領域で広がってゆくと考えており、実際、他のパートナーとの取組でも具体化が進んできています。OKIとしては、今後もキューオキさんのようなパートナーのアイデアや、お客様の課題解決を着実、迅速に実現できる環境や体制を提供してゆくと共に、市場への展開の面ではパートナーのソリューション、OKIのソリューションをキューオキさんのような通信の特約店様、その他パートナーの皆様が活発に展開できるエコシステムへの発展を進めて行きます。
永井今後も、キューオキさんのように、AE2100にパートナーさん自身が持つ様々なアイデアについて、AI実装していけるようにサポートしていきます。キューオキさんとは、AIスマートパーキングにとどまらず、冒頭、廣島社長がおっしゃられていましたが、通信系のノウハウとAIを融合させたイノベーションを一緒に生み出して行けたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。
廣島こういった構想を実現し、社会課題を解決していくためには、OKIさんをはじめ、多くのパートナーとのエコシステムの構築が不可欠だと思っています。OKIさん、これからも末永くよろしくお願いします、
藤原こちらこそ、よろしくお願いします。ディーラーとメーカーという関係を越え、イノベーションパートナーとして社会課題解決に取り組んでいきましょう。
廣島社長をはじめ、御社の営業スタッフは、お客様の現場に足を運び、さまざまなお困りごとや、アイデアの種をお持ちだと思うので、そういった情報も是非、私たちOKIにフィードバックしていただけると嬉しく思います。
今日は、たいへん貴重な話しが聞けて、とても勉強になりました。
本日はどうもありがとうございました。
(2022年10月6日 イノベーション推進センター)
<参加者プロフィール>
株式会社キューオキ 代表取締役会長 兼 社長 廣島 将登 氏