• 商品サービス
  • 投資家の皆様へ
  • OKIについて
  • 採用情報
  • お問い合わせ
  • サイトマップ

Daily Topics

Yume対談

Jul.28,2022

Yume対談
「中央大学×OKI 共創の今までとこれから。」

SUMMARY

OKIと中央大学は、2020年にAIの社会実装と人材育成を目的とした産学連携プロジェクト「AI・データサイエンス社会実装ラボ」を開設し、製造設備の異常検知、部材需要予測など社会実装に向けた共同研究や実証を進めています。
今回は、同ラボの礎を築いてきたキーパーソンである中央大学 理工学部・鎌倉稔成教授をはじめ、大草孝介准教授、OKIイノベーション推進センター 前野蔵人センター長、鎌倉研究室の卒業生であるOKI AI技術研究開発部の山本康平研究員が集い、ラボ開設に至るまでのOKIと中央大学との共同研究の歴史や経緯、未来展望などを語り合います。

OKI前野IPCセンター長(左上)、AI技術研究開発部 山本研究員(右上)、中央大学 理工学部 鎌倉教授(左下)、大草准教授(右下)の写真
OKI前野IPCセンター長(左上)、AI技術研究開発部 山本研究員(右上)、中央大学 理工学部 鎌倉教授(左下)、大草准教授(右下)

15年の時を経て、築き上げた両者の信頼関係

前野鎌倉先生、大草先生、お忙しいところお時間をいただき、ありがとうございます。久々にお二人とリアルにお会いできることを楽しみにしていました。
2020年8月に、OKIと中央大学は産学連携による「AI・データサイエンス社会実装ラボ」を開設し、昨年度は、当ラボでの取り組みについての対談記事を掲載しました。このラボをリードするのは理工学研究所長であられる鎌倉先生ですが、実はOKIと先生のお付き合いは10年を優に超え、ラボ開設以前から多くの共同研究を手掛けると同時に、人材交流も深めてきました。
今日は、OKIと鎌倉研究室の関係に縁の深いメンバーにお集まりいただき、これまでの共同研究の歴史を振り返りながら、イノベーティブな産学連携の在り方などについても触れたいと思います。

鎌倉まず、私たちの「ビジネスデータサイエンス学科」の説明をさせてください。この学科は、ビジネスをはじめあらゆる分野でデータ活用が求められる中、本学において長年培ってきた統計学の知見をベースに、データサイエンス、データエンジニアリング、ビジネスの3つの分野を包括的に学ぶ学科として、2021年4月に、経営システム工学科から改称しました。学科の名称は変わりましたが、これからもよろしくお願いします。

中央大学 理工学部 鎌倉教授の写真
中央大学 理工学部 鎌倉教授

さて、OKIとのファーストコンタクトは、確か2007年でしたね。私の研究室では、高齢者の歩容による健康状態の推定や、コンビニ店舗の位置情報の分析による出店戦略の推定など、データの時間変化や空間統計に関する、当時から先進的で実験的な研究に取り組んでいました。その情報を掲載した研究室のHPをご覧になった前野さんが訪ねて来られたというのが馴れ初めです。ニッチな情報にも関わらず、目を付けてくれたことに驚きました(笑)。

前野その頃の私はインキュベーション本部という新規事業創出組織にいて、当時流行っていた「ユビキタスサービス」をテーマに、OKIが得意とするデバイスから生まれる膨大なデータの高度利用を検討していました。位置情報やセンサー情報の利活用が拡大するトレンドの中、時間と空間の両面のデータ変化を見る領域での知見強化がOKIには必要と考え、多くの先生の研究テーマを調べ、実際に出向き議論をしていました。その中で、統計全般の深い知見だけでなく、応用への視野の広さにも感銘を受けたのが、鎌倉先生でした。

鎌倉当時の印象は、前野さんはとても誠実で温和な感じの方で、初対面の時に「この人とはいい仕事ができそうだ」と直感しました。その後、幾度もディスカッションを重ね共同研究に着手しました。

大草OKIとの共同研究が始まったのは、私が修士課程1年の時でした。正直に言って、当時はOKIに、業務内容から堅実で保守的なイメージを持っていました。しかし、最初に参加したミーティングの研究テーマがセンサーデータを活用した先進的なAI技術で、その用途や可能性など、幅広く将来を見据えた議論が交わされ、とても興味を持ちました。

中央大学 理工学部 大草准教授の写真
中央大学 理工学部 大草准教授

鎌倉私の研究室では、本音の議論を交わしながらも楽しく研究することをモットーとしています。
これまで私は、多くの企業・団体と共同研究を重ねてきました。すべてとは言いませんが、企業から与えられたテーマに対し、研究結果を提出して研究費をいただくという、非常にドライな関わり方もある中で、OKIとはテーマの設定から応用まで真剣に議論し、まるで身内のような感覚で、楽しく愉快に研究させていただきました。それと、特に前野さんは学生に対する指導にも熱心で、ここにいる大草先生は、かなり鍛えてもらったと思います。

大草その節は、大変お世話になりました。

新たな価値創造を求め、議論を交わし合う風土

前野とんでもありません。大草先生には、博士課程を終えられ助教の頃までご一緒させていただきましたね。その後、他大学で要職を歴任されてきましたが、こうして中央大学でこのラボに戻ってこられ、またご一緒できることに大変感激しています。
ところで、これまでのOKIとの共同研究の中で、最も印象的なエピソードはありますか?

大草私にとって、毎週開催されていた定例ミーティングでのガチンコなディスカッションは、とても貴重な経験でした。この場でディベート力が磨かれたと思います。
それと、OKIと行った現場での実験も印象に残っています。最初に行ったスポーツクラブを巻き込んだヘルスケア向けの行動認識技術では、実際にクラブに通い、インストラクターの指導を受け、モーションキャプチャ用スーツを着て動作データを取得しました。通常、産学連携の共同研究は、企業から提供されたデータを大学側が解析し、結果をフィードバックするというスタイルが多いのですが、OKIとの共同研究を通じて、研究に必要なデータは自ら取得するフィールドワークの大切さを学びました。時を経て、私も教員という立場になりましたが、学生には与えられたデータを過信することなく、可能な限り自らデータを取得し、実際の経験に照らしながらデータに隠れた構造をきちんと考察するよう指導しているつもりです。

鎌倉前野さんをはじめ、OKIの方々とは徹底的にディスカッションを繰り返していましたね。もちろん、その関係性は今も続いていて、我々の貴重な財産となっています。
ところで、OKIとの関係では、山本さん抜きには語れませんよね。

山本ありがとうございます。私が鎌倉研究室にお世話になったのは、学部4年の2011年からです。鎌倉先生から「実践的な応用研究に触れてみないか」と誘われて参加したのがOKIとの定例ミーティングでした。議論がとても白熱していたのが印象的ですが、これが研究者の姿なのかと感心し、私も早く知識を身に付けて参戦しなければと決意しました。

OKI イノベーション推進センター AI技術研究開発部 山本研究員の写真
OKI イノベーション推進センター AI技術研究開発部 山本研究員

鎌倉山本さんは、当時からモデリングする数式を展開するのが得意な優秀な学生として目を付けていて、ハンガリーの学会発表に同行させたこともあります。あの時、発表したのはOKIとの共同研究で、ドップラーセンサーによる高齢者の見守りシステムですね。
前野さんは当時から山本さんのことをとても評価していました。

前野そうですね。4年生の頃から打てば響くタイプで、修士課程に進む頃、鎌倉先生に「OKIの研究開発部門に是非来て欲しい」と相談しました。その結果、2年間、山本さんをインターンとしてOKIに迎え入れ、AIやセンサー信号処理をテーマに取り組んでもらいました。

山本そのときのOKIでの活動にとてもやりがいを感じ、卒業後もそのままOKIに就職することを選びました。そして今があります。

大草あの頃は、ドップラーセンサーを用いたバイタルのモデリングや、LiDAR、電波センサーを用いた歩行センシング、転倒検知、屋内位置検知など、ヘルスケア用途のセンシング系のAI研究が中心でしたね。

山本実証データを得るため、研究室の実験スペースに各種センサーを持ち込み、自らの睡眠中のバイタルデータを収集したこともあります。等身大の介護実習用ダミー人形「ふくたろう」を持ち込んだ時は、リアル過ぎて不気味で、なかなか寝付けなかったことを覚えています(笑)。

鎌倉 OKIと共同研究は、応用的な研究にも幅を広げるいい転機となりました。学生たちにとっても、統計学が社会に貢献する学問であることを再認識する機会になりました。
現在、OKIはAI活用に対して「説明可能なAI(XAI)」という方向性を示されています。フランスの先哲・ラプラス(※1)の言葉を借りると「この世の現象には必ずイグノランス(無知)なランダム項が存在し、そのイグノランスが確率・統計学の研究対象である」とあります。私も統計学やAIは、ブラックボックス化することなく、メカニズムを知った上でデータというランダム項を与え、それを解析することで確率的な現象をモデリングする学問だという信念で研究を続けていました。こういうデータサイエンスに対する基本的な見解をOKIと共有できていたからこそ、十数年もの間、共同研究を継続できた一番の要因だと思います。

共同研究の成果を事業につなげる

前野OKIと鎌倉先生との共同研究は当初、センシング系AIが中心でした。これはエッジで動くAIです。ここ数年は、機器の故障予測や道路渋滞予測など、エッジから生まれる膨大なデータを集めて分析するアナリティクス系AIの研究へと拡大してきました。そして、これらの共同研究をさらに進化させ、社会課題解決へのフレームワークとして「AI・データサイエンス社会実装ラボ」を立ち上げました。

OKI イノベーション推進センター 前野センター長の写真
OKI イノベーション推進センター 前野センター長

さて、ここからは、ラボの“これから“についてお話したいと思います。

大草出会った頃はOKIをあまり知らなかったのですが、共同研究を通じて仲間意識や連帯感が生まれ、現在は社会インフラを支える重要企業だと認識しています。社会インフラを含め、日常生活のさまざまなシーンでDX、スマート化が加速するはずです。その過程で、OKIが持っているAIエッジやセンシングの技術、センシングデータと、私たち中央大学理工学部のデータサイエンスの融合は、より安心・安全・便利な社会を実現するため、強いシナジーを発揮するものと確信しています。

前野これまでOKIは、多くの大学や研究機関と共同研究を重ねてきましたが、大半が個別の案件だけの関係に留まっていました。しかし、2020年にこのラボを立ち上げて以降、OKIの各部門が多様な課題を持ち込み、鎌倉先生を筆頭に多くの先生方とのマッチングによる多様な活動テーマが生まれています。これを、もっともっと加速したい。
OKIの各部門からの相談体験が次のテーマを呼び寄せる形で、良いエコシステムが見えはじめており、これは産学連携のイノベーションと言えます。もちろん、持ち込まれるテーマは、一朝一夕には解けない問題が多く、長期化する面もありますが、このラボに持ち込めば、解決に向けて一歩踏み出すことができます。
AI・データサイエンスの重要性は、今後ますます高まる一方です。このラボから誕生した沢山の知見を、多くお客様の課題解決に活かす私たちの提供価値に具体化し、社会実装を進めていきます。

鎌倉新しい価値を生み出したり、ブレークスルーを見出したりするためには、互いの経験や知識をベースにディスカッションする場が必要です。いつでも気軽に、楽しみながら本音でディスカッションできる関係という意味では、OKIと私たちは、共同研究のいいロールモデルとなっていると思います。そういったこれまでのスタイルは今後も継承するべきです。
統計学はサイエンスであると同時に、社会学など文系の要素も含んだ奥深い学問で、私もこれまで理系・文系を問わず全国の多くの先生方との人脈を築き上げてきました。今後は、そういう先生方も私たちのオープンイノベーションの場に巻き込んで、AI・データサイエンスの社会実装という成果を出したいと思います。
また、個人的には研究者余生の課題として、このラボでの研究活動を通じ、一人でも多くの研究者を育てることがあります。山本さんも早く学位を取りましょう。

山本はい、学位も取っていきます。OKIという会社には、インターンシップの期間を含めると10年間もお世話になっています。一社員としては、これまで培ってきた信号処理やAI、データサイエンスの知見を活用し、新たなソリューションを生み出し、OKIの成長と社会課題の解決に貢献したいと思います。

前野さて、全員の決意表明が揃ったところで、今日の対談はお開きにしたいと思います。
今日は、OKIと中央大学のこれまでとこれからについて語っていただき、ありがとうございました。鎌倉先生、大草先生、成果の創出と社会実装に向けて、引き続き、よろしくお願いいたします。

※1 ピエール・シモン・ラプラス(1749-1827):フランスの天文学者、統計学者

<参加者プロフィール>

・鎌倉 稔成
中央大学 理工学部 ビジネスデータサイエンス学科 教授、工学博士(東京工業大学)
2007年からOKIのセンシング技術と統計学をコンバージェンスした数多くの共同研究を手掛け、2020年にオープンイノベーションの拠点として、「AI・データサイエンス社会実装ラボ」を開設。理工学研究所所長(3期目)を務める。これまで応用統計学会会長(2008~2009)、統計関連学会連合理事長(2013~2014)などの要職を歴任。

・大草 孝介
中央大学 理工学部 ビジネスデータサイエンス学科 准教授、博士(工学)
修士課程・博士課程在籍中、鎌倉研究室のメンバーとしてOKIとの共同研究に参画。理工学部経営システム工学科 助教(2012年)、九州大学大学院芸術工芸研究院 助教(2014年)、横浜市立大学データサイエンス学部 准教授(2020年)などを経て、2022年より現職。

・OKI イノベーション推進センター 前野 蔵人 センター長

・OKI イノベーション推進センター 山本 康平 研究員(中央大学 鎌倉研究室卒業生)

本記事およびOKIの「Yume Pro」については、こちらよりお問い合わせください。

Special Contents

      お問い合わせ

      お問い合わせ