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Yume対談

Mar.31,2022

Yume対談
「鎌上社長と一般社団法人Japan Innovation Network(JIN)がイノベーション対談(Yume対談)を行いました」

SUMMARY

2016年に社長に就任し、翌年にはOKIのイノベーション・マネジメントシステム(IMS)「Yume Pro」の策定を開始、社員の意識改革、業務改革を主導してきた鎌上社長。このたび、社長を後進に譲り、会長兼CEOに就任します。今回は、社長退任を前に、JINと、この6年間を振り返るとともに、今後のOKIが進むべきイノベーションの方向性などについて語り合います。

対談中のOKI 鎌上社長の写真
対談中のOKI 鎌上社長

Yume Proの立ち上げと、中期経営計画2022に尽力

JIN鎌上さんとは社長就任以来のお付き合いで、その間、IMSの導入や中期経営計画(以下、中計)2022の発表など、イノベーションに取り組んでこられました。これまでのOKIとは一味違う大胆な改革を進めてこられたところで、このたび、退任を発表されましたが、まずは、この社長在任期間を振り返り、率直な感想からお願いします。

鎌上私が社長に就任した当時、「イノベーション」が経営上のキーワードとして流行していました。OKIは伝統的にそういう流行語、バズワードに弱いもので(笑)…、早速、米国のシリコンバレーに赴き、同地に拠点を置く企業を視察する中で、OKIとして独自性のある改革が必要と思い、帰国しました。

JINその視察がIMS導入のモチベーションとなったわけですね。そこでは、何を一番重視されたのでしょうか?

鎌上従来のOKIは受注型の技術・製品開発がメインで、お客様のイベントドリブン(=顧客事由により見込まれる需要)型のビジネスを展開していました。かつてのように、安定した大口需要が見込める場合は、それで良かったのでしょうが、これからは通用しない。そこで、従来の受注型から提案型ビジネスへのシフトチェンジ、JINさんに命名いただいた「矢印革命」を推進するため、2017年下期にIMSに沿った仕組みの検討を行い、2018年度から、OKIのIMS“Yume Pro”でのイノベーション活動を開始しました。それと並行して、2018年には中計2022の検討にも着手しました。従来のOKIの経営計画は、右肩上がりのバラ色の未来を描いた3ヵ年計画でしたが、練り上げた中計2022は、3ヵ年計画であると同時に、創業150周年となる2031年までのイノベーション戦略と、社会課題解決を通じ、持続的に成長していく土台を築くためのビジョンも盛り込んでいます。また、中計2022のキーメッセージとして「社会の大丈夫をつくっていく。」を展開したり、人気女優の広瀬アリスさんをイメージキャラクターに起用したりと、プロモーションにもこれまで以上に力を注いできました。

イノベーションのイナーシャがゆっくりと動き出す

JINIMSに関しては、前CINOの横田さんからご相談を受けたのですが、トップとしても問題意識を持たれていたということでしょうか?

鎌上そうですね。横田さんには、流行に飛びつきすぐに飽きるようなものではなく、長年定着し、しかもオリジナリティーのある方法論を2ヵ月で考えてくれと、無茶な要求をした記憶があります。何しろ、私はせっかちなので(笑)。

JINせっかちで流行に飛びつくという経営者は多いと思います。実際、オープンイノベーション、ピッチコンテスト、デザイン思考など、いろいろな試みがありますが、企業として3年以上継続させるのは難しいことです。
イノベーションが長続きしないのは「飽きる」「諦める」「あきれる」の3つの「あき」が原因とされています。鎌上さんはご自身でせっかちとおっしゃいましたが、IMS導入に関しては、当初から長期のプロジェクトと想定され、実際、5年目を迎えようとしています。ここまで、飽きずに継続されている秘訣は何でしょうか?

鎌上強いて言えば、破壊的イノベーションだけを求めなかったことではないでしょうか。一気にパラダイムシフトを起こすような技術やサービスを求めるのが理想かもしれませんが、それは一部の尖がった社員だけの活動になってしまいます。だから、最初はイノベーション活動のハードルをあえて低く設定し、全員が参加できる持続的イノベーションを目指しました。

JIN何故、そのような方法論を採られたのですか?

鎌上OKIは長い間、お客様のイベントドリブンに左右される受注型のビジネスを展開してきた古い企業体質が残っているため、何か新しい取り組みを始めようとしてもイナーシャ(=外力によらず、慣性で働き続ける力)が回り始めるのに時間がかかる。しかし、回り始めたら加速するという判断からです。

JINその結果、OKIのIMSは、現在、どれくらい社員に定着しているのでしょうか?

鎌上定性的な評価としては、定期的に開催している社長ダイアログなどで、参加者の反応を見ていると意識の変化というのは感じます。一方、定量的な指標としては、開催したダイアログやイノベーション研修の参加者数ということになるでしょうが、中身を評価するのは難しい。そこで、IMSの定着度を最も端的に表す指標としてはYume Proチャレンジの応募数があり、とくに今年度は大幅に数を増やしたので満足しています。

JIN大幅に増えたということですが、どれくらい伸びているのですか?

鎌上初年度(2018年度)が37件、19年度が45件と低調でしたが、20年度は147件、今年度は254件と急増しました。まさに重かったイナーシャが回り始めたという実感です。

Yume Proチャレンジも数から質への変換期

JINイノベーションに着手して、最初の1、2年は盛り上がるけど、その後は尻つぼみという企業をいくつも見てきましたが、OKIの場合はその逆ですね。これは素晴らしい傾向です。

鎌上私自身、Yume Proチャレンジに関しては、社員に対して細かなことは言わず自由にやらせ、応募件数を増やすことを最優先に考えてきました。社員の参加意識と好奇心を向上させるためです。しかし、これからは数よりも質の向上も目指したいと思います。

JINまずは分母を増やし、次に分子、つまり質を高めることで確率を高める。これはイノベーションの王道のレシピで、それを実践されるということですね。

鎌上経営面でも同様なことが言えると思います。これまでのOKIは受注型ビジネスで、打率はほぼ10割でした。しかし、私たちが行おうとしている提案型ビジネスは、まず打席に立たなければ始まらない。OKIはポテンシャルの高い打撃陣を抱えているのに、素振りばかりしていてなかなか打席に立とうとしない(笑)。だから、「最初はホームランを狙わなくてもいい、ポテンヒットでも、打率1割でもいいから、とにかく打席に立とうよ」と社員にメッセージを送っています。打席数が増えれば、経験値とともに打率も上がり、ひいてはトップライン(売上高)の向上につながるからです。

JIN釈迦に説法ですが、トップラインは「特定された事業機会」×「成功率」×「持続確率」で決まるわけですからね。

鎌上冒頭でも申した通り、OKIはこれまで、大口のお客様のイベントドリブン、つまり定期的なシステムや機器の更改に依存するビジネスモデルでした。具体的な数字としては全体の20%のお客様に80%の売上を依存するという経営体質です。
一昔前までは、それで全く問題なかったのですが、インターネットが普及し、ネット、サイバー空間で、アイデアだけで商売する多くのスタートアップ企業が台頭してきた現在、OKIとしても従来のハードウェア中心の受注型ビジネスモデルから、DXなどを中心とした提案型ビジネスモデルへとシフトしなければならない。そのためには、私を含めて社員の意識変革、つまり全員参加型のイノベーションが求められているのです。
このことは、大半の若い社員は理解してくれます。しかし、過去のビジネスモデルで成功体験のある社員は、頭で理解していてもなかなか行動が伴わないことがあります。なので、継続的な意識改革やイノベーションが必要であることは、後任の森さんにも伝えていますし、彼も十分に理解してくれています。

改革の源泉となる好奇心を養うために…

JIN先日、藤原執行役員(CINO兼CTO)のご紹介で、次期社長の森さんとお会いし、プリンタービジネスのことなど、いろいろなお話しを聞かせていただきました。森さんを次期社長に任命された理由はどこにあるのでしょうか?

鎌上彼は、プリンターのグローバル市場において、弱小のOKIがどのように生き残るかという問題意識からスタートし、業界初の長期無償サービスという付加価値を付けたプリンターの新ブランド「COREFIDO」を立ち上げたイノベーターです。そういう経験を持つ人材だからこそ、イノベーションの必要性を理解し、経営の継続性も担保できると判断しました。

JIN森さんが持たれた問題意識を評価し、それをOKI全体に広げるという意図なのですね?

鎌上受注型ビジネスで実績を積み上げてきたOKIは、お客様の要望に応える力はトップレベルだと思っています。半面、お客様の課題発見力が不足している。そのためには問題意識や観察力と同時に好奇心を持つことが必要です。森さんには自身の体験をベースに「Don't sleep through life! (ボーっと生きてんじゃねーよ!)」と、社員に活を入れる存在になってくれると期待しています。

JIN社員の好奇心を養うためには、どのような工夫が必要なのでしょうか?

鎌上Yume Proチャレンジへの応募と同様、ハードルを低くすること。つまり、わかりやすく、達成可能な目標を設定することです。たとえば、ある業務に60分かかっていた社員に1分短縮という目標を与えると、自らの課題解決のための好奇心が湧いてくるはずです。そういう小さな積み重ねが私たちの目指す、持続的イノベーションにつながると確信しています。

JIN2022年度からの新体制移行後の具体的な目標などはありますか?

鎌上イノベーションを理解し、積極的に取り組んでくれる社員、エバンジェリスト(伝道師)を全社員の1割まで増やすことですね。
現在、OKIグループはグローバルで約16,000人、国内で約10,000人の社員を抱えています。私はこれまで参加者10名ほどの社長ダイログを定期的に開催してきたのですが、先日、その参加者を集計したら、約1,000名に達成していました。

JIN国内社員の丁度1割で、目標達成ですね(笑)。

鎌上ダイアログは相手の反応を伺うため、双方向の対面形式にこだわっています。これは私の感触ですが、ダイアログを終えた直後は全員が内容の8割を理解してくれて、職場に戻った頃には5割程度、その後、時間の経過とともに理解度や意識は低下します。だから、ワクチンと一緒で、意識が低下したタイミングでダイアログなど、意識を高めるイベントを行うことで、継続性が担保されます。

JINでは、会長になられてもダイアログは続けるわけですね?

鎌上CINOの藤原さんが続けろと言うので、続けざるを得ませんね(笑)。少し違った形式で続けたいと思っています。もちろん、新社長にはこれまで通り、引き継いでもらいます。

JIN組織において「2:6:2の法則」(※1)がありますが、1割の精鋭社員だけで問題ありませんか?

鎌上優秀な人材が多いのが理想ですが、むしろ平均的な人材層を厚くし、彼らに少しでも問題意識を持ってもらうことに注力するべきだと思います。

個人の能力を最大限に発揮する組織、企業文化を育む

JINそう考えると、OKIのIMSはプールに喩えられますね。それも短水路から長水路、上級者から初心者向けまで、さまざまなレーンが用意されたプール。鎌上さんはこのプールを作られて、これからはプールの水質改善を手掛けていくというイメージですね。

鎌上Yume Proというプールで楽しそうに泳ぐ人を見て、個人の資質や能力に関わらず、とにかくプールに飛び込んでみようという好奇心を持つ人を増やしたいですね。
それと、私はYume Proをドイツのアウトバーンにしたいと思っています。日本の高速道路はスポーツカーでも軽自動車であっても時速100kmという速度制限がありますが、アウトバーンは、それぞれのエンジンのポテンシャルに合わせて速度制限なく自由に走行できます。OKIでも同じように、時速300kmのエンジンを持っている人はリミッターを解除して、思いっきり走って欲しいし、そのための環境を整備したい。一方、時速300kmのエンジンを持ちながらサービスエリアで休憩ばかりしている人、これは問題ですね。(笑)

JINそれは面白い喩えですね。まさに「Don't sleep through life!」ですね(笑)。

鎌上そういう人は、自分のポテンシャルに気付いていないだけで、きっかけさえ掴めば大化けする可能性があります。そして何より、時速80kmのエンジンでも能力全開で走り抜く人を称賛する組織でありたいと思います。

JINなるほど。これまでの話しを要約すると、OKIは問題解決力に長けた組織なので、社員一人ひとりの好奇心を高め、OKI全体でお客様の課題発見力を磨き上げることで、受注型ビジネスから、提案型ビジネスへシフトしていく。それを推進するのがYume Proというプールであり、アウトバーンであるわけですね。

鎌上はい、そのフレームワークはほぼ完了したので、イノベーション経営の継続性を保ちながら新体制への移行もスムーズに行えると思います。

JIN社内や外部の不安を払拭するためにも、経営の継続性は強くアピールしたいですね。

鎌上最近の外部セミナーで講演した際、「全員参加型イノベーションを推進された鎌上社長の退任後、OKIのIMSはどうなるのか?」という質問を複数社の方々から受けました。そこでも「新社長がしっかり継承していく」ことを皆さんにお伝えしました。そして今後も内外問わず、積極的に情報発信していくつもりです。

JINこういうのはどうでしょう。社長交代後、早いタイミングで、新旧社長の公開ミーティングなどを開催し、内外に経営の継続性をアピールしてみるのは?

鎌上それはいいアイデアですね。社内でも相談してみます。

JINぜひ、ご検討ください。では、対談の締めのメッセージをお願いします。

鎌上OKIは2017年からIMSに取り組み、ISO 56002に対応するイノベーション創出の仕組みを実装した「IMS Ready」な企業を目指しています。しかし、ISOはあくまでもフレームであり、肝心なのはその中身です。OKIは伝統的に規定づくりが得意な会社でしたが、私は「100の規定よりひとつの企業文化」だと思います。だから、あまり規定やルールにとらわれず、社員個々の自由な発想で全員参加型イノベーションというOKIの新しい企業文化を築き上げていってほしいと思います。

※1 組織は、優秀な人材が2割、平均的人材6割、下位2割という構成に落ち着くという法則。

本記事およびOKIの「Yume Pro」については、こちらよりお問い合わせください。

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