ほぼ週刊 CINOのつぶやき(チノつぶ)第81号
「未来ニーズから価値を創造するイノベーション」

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産構審の研究開発・イノベーション小委中間取りまとめ公表
2020年5月29日に経済産業省産業構造審議会の研究開発・イノベーション小委員会による中間取りまとめ2020「未来ニーズから価値を創造するイノベーション創出に向けて」(外部サイト[1.99MB]) が公表されました。経済産業省の飯田祐二産業技術環境局長が2018年に局長に就任されてから、3年ほど開催されていなかった同小委員会を東京大学の五神総長を委員長として立ち上げ、昨年に引き続いて中間取りまとめが策定された次第です。
飯田さんからご連絡をいただき、さっそく読ませていただきました。飯田さんが、「理念先行ではなく、経済産業省が当面行うアクション中心」と表現されている通り、研究開発およびイノベーションに関する施策メニューが目白押しとなっています。
シーズ主義からの脱却
中間取りまとめの「はじめに」で述べられている通り、我が国はこれまで、プロダクトアウトの発想が強い「シーズ主義」できました。モノ不足で、作れば売れた時代はこれで良かったわけですが、モノ余りで社会に求められるモノを提供しないとビジネスにならない時代となりました。社会に求められるモノ、それも、未来のニーズを捉えてソリューションを提供することで、イノベーションを創出すべきだと強調されています。Yume Proも、まさにこの方向を目指して取り組んでいます。
科学技術基本法改正を紹介
こうしたマインド転換を促すため、今通常国会には、科学技術基本法の改正法案が提出されていることも紹介されています。改正法案には、「イノベーション」に関する規程を新設し、法律の目的を「科学技術の水準の向上」と「イノベーション創出の促進」の2本立てにすることが盛り込まれています。
イノベーション創出活動からすれば、技術はソリューションを提供するための手段(キー・リソース)の1つに過ぎません。手段が目的化してはいけないので、企業の研究者は、どのような社会課題解決を目指すのかを考えながら研究テーマの設定を行う必要があります。今般の科学技術基本法改正は、企業における研究開発活動の意識改革を進める上で、重要な後押しになると思います。
イノベーション経営に取り組む企業の銘柄化
イノベーション創出活動を促進する政策として、最初に掲げられているのが、イノベーション経営に取り組む企業の銘柄化です。チノつぶ第48号でも紹介しましたが、2019年10月、経済産業省は、イノベーション・マネジメントシステムのガイダンス規格ISO 56002の発効を受けて、「日本企業における価値創造マネジメントに関する行動指針」を公表しました。
中間取りまとめには、「イノベーション経営に挑戦する企業が資本市場等から評価されるよう、前述のISO 56002および行動指針に基づく銘柄化の検討を進め、その制度設計を速やかに行う必要がある」とされています。イノベーション創出活動を見える化し評価される仕組みができれば、企業における取り組みも加速されます。イノベーション活動を行う企業の現場からも、こうした施策の一日も早い実現に期待しています。
(2020年6月22日、チーフ・イノベーション・オフィサー(CINO)横田 俊之)