ほぼ週刊 CINOのつぶやき(チノつぶ)第76号
「イノベーション、標準化で促せ」
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日経新聞 経済教室「私見卓見」コーナーに投稿
お読みになられた方もおられると思いますが、5月14日の日本経済新聞「経済教室」の「私見卓見」コーナーに「イノベーション、標準化で促せ」というタイトルの投稿を行いました。本コラムでもご紹介していますが、昨年7月にイノベーション・マネジメントシステム(IMS)に関する国際規格ISO56002が発行し、IMS導入が国際的な流れになっています。昨年10月には、経済産業省も日本企業にIMS導入を促進するための行動指針を公表しています。こうした流れについて、多くの企業に知っていただきたいというのが、この投稿の狙いです。
まだ認知度が低いIMS
投稿記事については、3月上旬に日経新聞に原案を送付後、編集担当の方と電話取材を含め、何度かやりとりをさせていただきました。読者にわかりやすくという視点で、様々なご質問、ご指摘をいただきながら加筆訂正を加えていきました。このプロセスを通じて、世の中では、まだIMSに対する認知度が低いということを実感しました。ちょうど、チノつぶ第75号で紹介した研究開発リーダー向けの原稿があったので、これを読んでいただいたところ、「大分理解できました」という反応をいただきました。
チームで組織的に取り組むイノベーション
イノベーションは、天才肌の人が興すものという観念があるので、「IMSを導入すると、これまで活躍してきたイノベーターはどうなるのですか?」というご質問もいただきました。ISO 56002に規定されているイノベーション・プロセスは、機会の特定、コンセプトの創造・検証、ソリューションの開発・導入という5つのステップです。これらのすべてを一人でやることができるスーパーマンもいるのかもしれませんが、非常に希なことだと思います。
実際にYume Proの下で、イノベーション創出活動を行ってみると、ビジネスチャンスを見つけてくるのが得意な人、お困りごとの解決方法を考えることが得意な人、ネットワークを沢山持っていてキーパーソンを探してくるのが上手な人など、それぞれ得手不得手があることがわかります。天才肌のイノベーターの出番が無くなるのではなく、プロセスを明確化することで、組織的な活動ができることがIMSの一つの特徴です。
イノベーションを円滑化するために必要な共通言語
もう一つの特徴が、コミュニケーションの円滑化です。イノベーション・プロセスや判断基準を明らかにすることで、社内における議論や意思決定が円滑化します。21世紀型のイノベーションは、課題解決型で、必要なリソースを持ち寄るオープン・イノベーションが中心です。パートナーとの共創活動を円滑かつ高速に進めるためには、互いの言語を共通化することが効果的です。このため、IMSを広げていこうとするのは、極めて実利的な動機に基づくものです。
もともとIMS標準化の動きは、20年ほど前から欧州で始まり、2013年に欧州標準が策定され、昨年国際標準となりました。欧州企業は、「自社のイノベーションを円滑に進めるため、パートナー企業に共通言語を持たせた方がやりやすい」という認識があったため、こうした動きになったものと考えています。まだまだ認知度の低いIMSですが、これを広めることによって、イノベーションを興しやすい環境作りに貢献していきたいと思います。
(2020年5月15日、チーフ・イノベーション・オフィサー(CINO)横田 俊之)