Yumeトーク第59回
OKIスマイル~全員参加型イノベーションでみんなが輝く~
SUMMARY
OKIはイノベーション・マネジメントシステム(IMS)とともに、ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity & Inclusion:D&I)を推進しています。今回は、第一線で活躍する二人と藤原執行役員CINO兼CTOが、OKIのイノベーションとD&I(今回は特に女性活躍推進を含めたジェンダーフリー(※1)に着目し)について熱い議論を交わします。

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※1 ジェンダーフリー:従来の固定的な性別による役割分担にとらわれず、男女が平等に、自らの能力を活かして自由に行動・生活できること
経験豊富な技術者が語る、印象的なエピソードとは…
藤原今日は、最前線で活躍するお二人をお迎えしています。イノベーションを推進する立場として、ジェンダーフリーは当たり前だという認識ですが、OKIは歴史の古い会社なので、まだ男社会の名残があるかもしれません。その辺を含めて、忌憚のない意見も聞かせてください。
まずは、簡単なプロフィールを聞かせてください。では、イノベーション推進センター(IPC)の橘さんからお願いします。
橘入社が2000年ですから、早いもので今年22年目を迎えました。入社直後に生体認証関連技術の開発を担当し、やがて、その商品を売る側、つまり営業を経験しました。その後、産休・育休を経ながら、ATMのSEをはじめ、電波センサー、ディープラーニングの研究開発やAI技術者の教育などを経験し、現在は、IPC企画室戦略推進チームの一員として、次期イノベーション中期計画(イノベーション中計)の立案を担っています。ちなみに、プライベートでは小中高3人の子育て中です。
藤原素晴らしい経歴ですよね。橘さんのようにSE、営業から研究開発、そして、この1年はイノベーション戦略立案まで、これほど幅広い職種を経験したのは珍しく、貴重な人材だと思います。
では、ソリューションシステム事業本部(SS事本)の芝尾さん、お願いします。
芝尾2007年に入社し、金融機関向けシステムの開発下流工程を学ぶため約1年間OKIソフトウェア(OSK)へ出向しました。OKIに戻ってからはお客様への提案などSE活動の経験を経て、商品企画部門へ異動し、移動ATMなどいくつかの商品企画に携わりました。その後、1年間の育休を取得し仕事に復帰した際、OKIのイノベーション活動が急激に進み、職場の雰囲気ががらりと一変していたことに驚きました。そして、現在はDX事業推進センターで、主に地方の公共交通課題を解決するスマートシティに関するソリューション企画推進に携わっています。
藤原芝尾さんが手掛けた移動ATMは、まさにイノベーションだと思います。金融機関のこれまでの常識を覆し、お客様の元にATMを出前させるというコンセプトが素晴らしい。
お二人とも、入社以来、多くの実績をお持ちですが、これまで最も印象に残っている仕事は何でしょうか?

橘10年以上前の育休明け当初は、事業部でアシスタント的な雑務が多く不本意な面もあったのですが、その後、研究開発部門に異動となって担当した特殊な環境向けシステムProof of Concept(PoC)の印象が強く残っています。何しろ一般の方は入れない特殊な環境なので、現地で実験できるのは1回限りという制約がありました。何度も実験手順をシミュレーションし、必要な備品の手配から実験のコーディネートまで手掛けました。この時、育休明け当初の雑務経験が活かされたと思います。
藤原それって、当然、現地に行ったのですよね?
橘はい。とても張り詰めた空気の中、緊張した数日間を過ごしたのを覚えています。
藤原貴重な体験でしたね。私は常々、「研究開発もお客様の現場に何度も足を運べ」と言っているのですが、こればかりはねぇ…。
芝尾私は、やはり移動ATMですね。長崎県の離島に赴いて移動ATMを実際にお客様に利用していただき、利用面や運用面での課題抽出を目的に、PoCを行いました。その頃は、体系化されたイノベーションの手法を知らなかったので、商品企画に際しても手探り状態でした。今から思えば、当時、ビジネスモデルキャンバス(BMC)の描き方などを知っていたら、もっと効率的に企画を進めることができたのでしょうね。
藤原その経験と教訓は、是非、社内でも共有して欲しいですね。OKIの場合、技術力が高いため、重厚長大な商品企画になる傾向が強い。BMCなどを活用して、もっとお客様の困りごとにフィーチャーした商品づくりが必要なのです。もっとも、若手、中堅社員の多くは、そのことに気づき始めているようですが。
女性活躍推進は機会均等から、次なるフェーズへ
藤原さて、女性活躍推進を含めたジェンダーフリーはSDGsの5番目の目標として掲げられていますが、残念ながら日本のジェンダーギャップ指数は、世界156カ国中120位(※2)と下位に低迷したままです。OKIとしては女性が活躍できる職場環境の整備に努めていますが、それぞれ女性の立場から、職場での働きやすさなどの評価を聞かせてください。
橘極めて個人的なことですが、3人目の子供を出産する際、これ以上育児で忙しくなるならばキャリアを積み上げるのは難しく、ひっそりと続けていくしかないかなと感じていました。しかし、上司が懸命に励ましてくださり、またしっかりサポートもしてくださったことで、自分の気持ちを再び奮い立たせることができた経験があります。以前のOKIには、子育て中の女性社員に対し「お母さんは大変なんだから…」と、優しい気遣いでしょうが、責任のある仕事を任させてもらえない、いわゆるマミートラックに陥るケースがありました。しかし、この10年ほどで社内文化は一変し、現在は次期イノベーション戦略の立案と同時にAI技術者教育など、責任のある仕事を複数兼務させていただいています。このように男女を問わず自身が成長できる機会を与えてもらえる環境になったことに感謝しています。
芝尾私の場合、いわゆるガラスの天井というのを、あまり感じたことはありません。特に、育休から復帰した際に社風の変化を強く感じ、子育て中であってもあまり不自由なく働くことができています。OKIも時代とともに社員の働きやすい会社へどんどんシフトしているのですね。
藤原そのように評価していただいて、経営陣としては嬉しい限りですが、今後、ジェンダーフリーを推進するための課題や改善点などがあったら聞かせてください。
橘男女にかかわらず機会を与えてくれるというフェーズはクリアしていると思います。次の課題としては、男性も育児や子育てに積極的に参加できるような制度、文化、環境の整備ではないでしょうか…。もっとも、これはOKIとしての課題という以前に、世の男性の意識改革が求められると思います。
藤原私も以前は仕事優先で、そんな家庭での過去の所業を猛省し、今は、家事を手伝うようにしています。
橘藤原さん、問題はそこなんですね。世間では「男性が家事、育児を手伝う、協力する」などという表現が流布していますが、これは家事、育児は女性の仕事という既成概念から語られる言葉で、本来、これらは男女関係なく分担し合う仕事であるべきです。
藤原鋭いご指摘です。改めます。家事に参加するよろこびに目覚めたところです。至らないところも多々ありますが、私自身の意識改革、イノベーションを進めているつもりでいます(笑)。でも、最近の若い世代の男性は、そういう意識をデフォルトで持っていますよね。
芝尾私の家庭では、最初から家事、育児は半々で分担しています。パートナーも当然のことと受け入れてくれていると思います。
藤原それぞれの世代間の意識の違いですね。でも、この変化はいい傾向だと思います。

円滑なコミュニケーションがイノベーションを加速する
藤原話題を戻します(笑)。お二人とも、現在、リーダー的な仕事をされていますが、仕事を行う上で心掛けていること、工夫していることはありますか?
橘数年前から社内のAIに関する技術サポートや技術者養成に携わっているのですが、AIはさまざまな手法やレベルがあり、事業部というお客様が、それぞれの案件で、どのようなAIや技術者を求めているかを素早くキャッチアップし、対応することに心掛けています。
藤原世間にはさまざまなAIが流通しています。でも、AIは目的ではなく手段なので、お客様の目的、用途に応じて、既存のクラウド型AIを使うのか、もしくは新たに開発するのか、そのチョイスが重要です。また、ベンダーによってもAIに対するアプローチが異なります。OKIは、AIエッジ処理によるリアルタイムインテリジェンスや説明可能なAI(XAI)(※3)という方向性を示しているので、それに対応した技術サポートを続けてください。
芝尾現在、私は子育て中のため、テレワークであっても時間的な制約があります。これまで以上に仕事の効率化を意識するようにしています。具体的には、何事も素早い判断を下すこと。そのため、仕事の上で不明な点があれば詳しい人に遠慮なく相談するようにしています。
藤原以前はOKIにも、相談する際は直属の上司からエスカレーションしていくという、奇妙な暗黙のルールがありました。でも、今はOKIのトップがそういう古い文化を改革しようとしているのだから、部署などを超えて自由に意見交換するべきです。そして、上司側も誰からも気軽に相談してもらえるような立ち振る舞いが求められます。
芝尾はい。私も若手社員の発言や意見については、まずは肯定的にとらえるようにしています。そして、「もっとこうしたら良くなるのでは」というアドバイスをし、彼らの背中を押すようにしています。
藤原そうです。物事を否定ばかりしているところでは、決してイノベーションは生まれません。たとえ失敗したとしても、新しいことにチャレンジした人を称賛する社風を醸成していきましょう。
デザイン思考にアート思考を加えたソリューションを提案
藤原このたび、森社長が就任されましたが、鎌上前社長(現会長)が提唱された「全員参加型イノベーション」の方針は継承されます。お二人とも商品企画、技術開発から商品化まで、マクロな視点で関わられるケースも多いと思いますが、普段から全員参加型イノベーションに対して意識していることはありますか?
芝尾育休中、育児や保育に関する社会課題がたくさんあることに気づき、職場に復帰後、DXを活用した育児・保育ソリューションのアイデアでYume Proチャレンジにエントリーし、入賞させていただきました。この件は、現在も四苦八苦しながら検討を進めていますが、まずは、何事にもチャレンジしたいと思ったことは行動に移し、後悔しないように心掛けているつもりです。
藤原Yume Proチャレンジに関わらず、何か新しいことにチャレンジする時は、一人で抱え込まず、周りをどんどん巻き込んでいくことが必要です。それが全員参加型イノベーションです。

芝尾Yume Proチャレンジをきっかけに、部署を越えて育児・保育に興味を持つ方々から声を掛けていただき、全員参加型イノベーションの大切さを実感しているところです。
藤原橘さんは、どうですか?
橘イノベーションと聞くと、何か尖ったことをしなくちゃいけないなどと構えてしまいがちですが、日常生活の中で視点を少し変えるだけで、そのヒントが見つかると思います。そう思うようになったのは、子供を小学校に送っていく際、私は道順や時間など先先のことばかり考えて歩いているのに、子供は「あっ。〇〇ちゃんのお母さんだ」と知らせてくれるなど、全く違う視線で物事を見ているということに気づかされたからです。子供と大人を一緒にするのは乱暴かもしれませんが、このように違う視点、価値観、経験などを持つ人たちが集まってコミュニケートすることで何か新しい価値が創造できるのだと思います。もちろん、そのためには一人ひとりが思っていることを忌憚なく発言できる場と環境づくりに心掛けていくつもりです。
藤原それ、とても大事なことです。何かモノを創造するには、デザイン思考、アート思考の2つのアプローチがあると思います。デザイン思考は、お客様の困りごと対してOKIの技術を当てはめて解決する方法。今の橘さんの指摘はアート思考で、極めて個人的な生活者の立場から「世の中こうあって欲しい」と意見を交わすことで、新たな価値を見つけ出す方法です。私としては、このふたつを組み合わせるのがベストだと思います。具体的には、お客様はこういうものを望んでいる、一方、私たちは生活者、ユーザーとしてこうあって欲しいというものを提案し、共創していくことです。私の口癖である「利用シーンを考える」は、まさしく、そういうことなのです。
さて、お二人ともイノベーション・ダイアログに参加されていますが、その時の感想や改善点などがあれば聞かせてください?
橘OKIは歴史ある会社だけど、今こそ変革しなければならないという経営層の意思がストレートに伝わり有意義でした。最近は、コロナ禍でオンライン開催となり、ランチを囲んだ活発な議論という雰囲気が作りにくくなっているように思います。早くリアルでできるようになるといいと思います。
芝尾リアルだとカジュアルな気持ちで話し合えるので、早く復活して欲しいですね。
藤原確かにそうですよね。では、最後に、今後の抱負やイノベーションに対する意気込みなどを聞かせてください。
芝尾今、手掛けている育児・保育関連のソリューションの商品化や、スマートシティに関するソリューションの導入実績を作ることですね。アナログ的な仕事が主流の現場をDX化することで、人手不足の解消や地域課題の解決に貢献したいと思います。
藤原そのためには現場の声を聞く必要があります。
芝尾はい。その必要性は十分認識しています。
インターネットなどには保育現場の課題や問題点などネガティブな情報があふれています。そこで、その信ぴょう性の確認も兼ねて、保育園で1日保育士体験をさせていただき、現場の生の声に触れることができました。今後も、現場の声を聞くことを大切にしたいと思います。
橘私はOKIの魅力って、社会を支えるインフラに貢献する製品や技術を提供していることだと思います。今後、提供する製品の形態は変化していくと思いますが、生活者目線で設計された製品やソリューションを提供し続け、OKIの企業価値を高めていきたいと思います。
藤原OKIはスローガンのひとつとして「安全、便利な社会づくり」を掲げています。これは私見ですが、今後は、これに加え、働く人、生活する人が幸せになるようなモノづくり、コトづくりを進める必要があると思います。
では、今日は鋭いご指摘、貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。
※2 WEF(世界経済フォーラム)が2021年3月に公表した「The Global Gender Gap Report 2021」より
※3 説明可能なAI:AIが導き出した結論の根拠や結論に至るプロセスを説明できる透明性の高いAI技術。