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Yumeトーク

Apr.13,2022

Yumeトーク 特別編
既存のインフラを活用し、広範な異常振動をリアルタイムで検知する
~分布型光ファイバー振動センサーの商品化に挑む~

SUMMARY

光ファイバー回線は、インターネットの基幹ネットワークとして爆発的な普及を続けています。光ファイバーセンサーは、通信用途で敷設された光ファイバーの一本を使用して、光ファイバーに伝わる外部環境の情報をセンシングできます。光ファイバーケーブルは、高速道路・鉄道・電力線などの重要なインフラに沿うように敷設されている場面も多くあります。OKIは、光ファイバーに伝わる振動情報のセンシングによって、高速道路の監視(渋滞・事故・路面損傷)、鉄道沿線の災害検知(落石・倒木)、電力線の異常検知などの社会課題の解決を目指しています。
今回は、光ファイバーを活用した振動センサーの事業化を目指し、OKI独自技術の研究開発を進めるイノベーション推進センターの二名のキーパーソンにインタビューします。

山城(左)、神田(右)の写真
山城(左)、神田(右)

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光ファイバーセンサー技術者の矜持 光通信用のファイバーを利用して異常振動を検知

それぞれのOKI入社の経緯と、入社後のキャリアを聞かせてください。

神田子供の頃から波形に興味があり、大学・大学院では電子工学を専攻し、音声信号処理の研究に熱中していました。研究優先で就活が疎かになる中、OKIのリクルーターの方から「そんなに研究が好きなら、OKIで好きなだけやればいい」と甘い言葉で誘われ、2006年に入社しました。
入社後は、音声ではなく光ファイバー通信関連の研究開発に従事。その後、OKIが長年培ってきた光通信技術を他領域へ展開するという機運が高まる中で、2016年からは光ファイバーを用いた振動検知技術の研究開発に着手しました。そして、現在は、光ファイバー振動センサーの商品化に向けた検討を進める傍ら、光技術の研究開発に取り組んでいます。

山城高校1年の頃、当時話題になった量子コンピューターに興味を抱き、大学・大学院時代は量子暗号通信に関する研究をしていました。しかし、就職に際してはOKIが持つソーナー技術に惹かれて、2018年に入社した次第です。
でも、どういう訳か、光ファイバー振動センサーの研究開発チームに配属となり、2年間独自のセンシング方式の考案と評価に従事。そして、2020年からはLiDARを用いた自動運転支援技術の研究開発チームと兼務となり、現在は、自ら考案した新方式の光ファイバー振動センサーのPoC機の開発を担当しています。

神田山城さんは若手のホープで、いろいろな部署から引っ張りだこなんです。

光ファイバー振動センサーとは、どういう技術でしょうか?

神田光ファイバーの主な用途として光通信の伝送ケーブルがあります。光ファイバーに光を入射すると、伝搬に伴って入射側に散乱光が戻ってきます。ケーブルに温度変化、歪み、振動など外部からの物理的な刺激が加わると、散乱光の状態が変化します。この現象をリアルタイムに測定し、散乱光の到達時間と併せて解析することで、刺激が加わった場所と変化量を知ることができます。つまり、光ファイバーをセンサーとして機能させる技術です。すでにOKIでは、この原理を利用した光ファイバー温度、歪みセンサーを商品化し、道路・橋梁などのインフラ監視、工場などの温度監視としての適応を進めていますが、私たちが手掛けているのは、同様な原理で光ファイバー内に伝わるわずかな振動を分布的にセンシングする技術です。

分布型光ファイバー”振動”センサーの原理の図
分布型光ファイバー”振動”センサーの原理

光ファイバーセンサーだからこそ拘りたい。低コストでシンプルな独自方式の測定

キーテクノロジーとなったのは何でしょうか?

神田開発に着手した当初は、戻り光の強度を測定・解析することで、振動の大きさや場所をセンシングする方式を採用していました。しかし、光の強度を測定する方式は、ケーブルに加わった振動の忠実な測定が困難なことに加えて感度も不十分でした。これらを克服する光の位相を測定する方式も知られていましたが、フェーディング(光信号の強さが小さくなる現象)の影響を効率よく抑圧する方法が必要であり、手詰まり感がありました。そこで、これまでの方式をピボットし、山城さんの考案した方式を採用することで、精度の向上を目指しました。

山城私が考案したのは、戻り光の位相の揺らぎを測定する方式におけるフェーディングによる精度の劣化を、散乱光の統計的な性質を利用した信号処理を適用することで回避する方式です。一般に、フェーディングの抑圧には複雑な光学系や、複雑な信号処理の演算が必要となりますが、これにより、測定装置もシンプルな構成となり、信号処理も単純になります。この技術を利用して、低コストで高精度なセンシングの実現を目指しています。

神田山城さんがチームに参加してくれたことで、開発は大きく前進しました。しかし、商品化に向けては利用シーンに応じて、より多くの共創パートナーを募り、PoC(実証実験)を重ね、現場の実データの収集と解析がポイントとなるでしょう。

従来の技術者の枠を超え、そしてPoCで学際的な知見を得て、商品化を推進

PoCを進めるため、どのような活動をされていますか?

神田おかげさまで、多くのお客様からPoCの機会をいただき、様々な実環境でのデータを蓄積しております。これまでOKIの研究開発職は、お客様と直接コンタクトすることは少なかったのですが、現在は全員参加型イノベーションの方針で、私たちも営業、SEとともに協議の場に参加しています。振動センサーという技術なので、土木系、生産技術系のお客様も多く、現場の技術者と話しをしていると、振動に対する見解や捉え方が異なり、私たちが気付かないような知見が得られます。そういう異分野とのコミュニケーションは、とても刺激的であり、商品化に向けて貴重な意見やデータが得られます。やはり、ユーザーがあっての技術ですから、光ファイバー振動センサーの商品化、事業化に向けては、お客様の技術領域の知識、ノウハウを含め、いわゆる学際的な知見を得る重要性を再認識しているところです。

山城光ファイバー振動センサーの場合、40~50kmという長距離を分布的に検知するので、多数の単体センサーが並んでいるような状態なため、得られるデータ量は膨大です。この中から「どこのポイント、どんなデータ」を解析するかの判断は、現場の意見や知見がなければ不可能です。このように光ファイバー内で起きる物理現象を統計的な信号処理に落とし込み、現場のユーザーが使いやすく、さらに低コストなPoC機の開発を進めています。

光ファイバーセンサーの利用シーンの図
光ファイバーセンサーの利用シーン

今後、事業化に向けての展望や課題について聞かせてください。

山城直近の課題としては、1日も早くPoC機を完成させ、さまざまな利用シーンでのPoCを加速させ、本格的な商品化への弾みをつけたいと思っています。

神田現在、事業部や営業、SEとともに、商品化へのストーリーを描いているところです。目標としては2024年の商品化を目指しています。当面は、道路、鉄道などのインフラや、埋設ライフライン、工場設備などの振動による異常を検知することで防犯・防災としての用途を想定しています。ただ、私たちが手掛けている光ファイバー振動センサーは、通信インフラである光ケーブルの中の1本のファイバーケーブルを間借りするだけで機能するので、将来的には通信キャリア様と協業し、広範な振動検知ネットワークを構築し、地震観測などにも貢献できたらと思っています。まだまだ、クリアしなければならない課題も多いと思いますが、夢はますます広がっています。

本記事およびOKIの「Yume Pro」については、こちらよりお問い合わせください。

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