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Sep.13,2019

OKIイノベーション塾の千村塾長が語る「2つのV-HUB」

SUMMARY

2019年8月22日の夕刻、千村保文塾長が経済産業省会議室において行われた勉強会において、「『2つのV-HUB』VoIPとコネクテッド・カーの標準化活動から学んだグローバルビジネスの創り方」をテーマに講演を行いました。一般社団法人Japan Innovation Networkがモデレーターを勤め、経済産業省・総務省・OKIグループなどの若手が参加しました。

辺境の会で講演する千村塾長

本企画は、OKI・経済産業省・総務省を母体とする若手勉強会「辺境の会」と経済産業省のゆう活自主研修との合同企画として開催されました。

標準化のオーソリティーが語る活動の成功体験

千村は、1990年代後半VoIP(Voice over Internet Protocol)の黎明期にOKIが開発したVoIPゲートウェイ「VOICEHUB(通称:V-HUB)」の国際標準化活動を主導すると同時に、「VoIPのOKI」の認知度向上に貢献し、OKIのVoIPビジネスの基盤を構築。その後、VoIP標準化活動の経験を活かし、TTC(一般社団法人情報通信技術委員会)のコネクテッド・カー専門委員会委員長に就任。また、ASTAP(アジア・太平洋電気通信標準化機関)においてコネクテッド・カー技術を活用した防災システム「V-HUB(Vehicle-HUB)」のアジア標準化活動に尽力した、いわばOKIにおける標準化活動の第一人者でありキーパーソンです。
以下は、千村の講演のサマリーです。

<講演>

『2つのV-HUB』VoIPとコネクテッド・カーの標準化活動から学んだグローバルビジネスの創り方」

【1つ目の「V-HUB」(VOICEHUB)の開発から標準化へ…】
インターネットが徐々に普及を始めた1990年代、イスラエルの会社がインターネット電話のソフトを発売したものの、音質が悪く、とても使い物にならない代物でした。その後、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災を契機に、OKIのVoIP開発が加速します。
きっかけとなったのは、当時、災害医療の最前線で活躍されていた医師の国立がんセンターの水島洋先生から「インターネットで使える電話はないのか?」という1本の電話でした。理由を尋ねてみると「被災地の大半の病院で電話が不通となる中、インターネットは使えていた」とのこと。そこで、私たちは上司にVoIP開発を進言。しかし、当時のOKIは局用交換機の国内市場で高いシェアを得ており、微妙な立場。「これまでのOKIの実績を否定するようなものだ」という反対意見もある中、理解ある上司から「これからはインターネットの時代。どうせ他人に食われてしまう尻尾(市場)ならば、自ら食べてみよう!」という賛同を得て、開発は本格化しました。

辺境の会の様子

そして、1997年、ついに日本初のVoIPゲートウェイ「VOICEHUB」をリリース。翌年には米国「Network World」誌でブルーリボン賞を受賞するなど、内外で高い評価を得たものの、国内のIP電話市場は盛り上がりに欠けていました。現状打破のための私たちの選択は、標準化活動への参画でした。
OKIは、ITU-T(国際電気通信連合・電気通信標準化部門)やIETF(インターネット技術特別調査委員会)において、ビデオ会議向けの「H.323」、IP電話向けの「SIP」といった標準プロトコルの策定に貢献しました。

やがて、ソフトバンク社が公衆IP電話サービス「BBフォン」をスタートさせるなど、国内のIP電話市場は徐々に拡大するに伴い、今度はIP電話関連の技術者不足が深刻化します。そこで、OKIは2002年に他社と共同でIP電話技術の教育機関「IPTPC(IP電話普及推進センタ)」を設立し、翌年には認定技術者資格制度を発足。年々参加企業も増えて、現在の資格者は27,000名を超えています。
このように、社内外のリソースを活用し、IP電話普及の仕掛けづくりを推進してきた結果、OKIはUC(Unified Communication)市場全体において国内2位(IPコンタクトセンター:1位、IP-PBX:3位)のシェアを確保するまでに至っています。

【2つ目の「V-HUB」(Vehicle-HUB)の開発から標準化へ…】
そして、次なる「V-HUB」(Vehicle-HUB)開発の契機となったのは、奇しくも「VOICEHUB」と同様、災害でした。2011年3月11日に発生した東日本大震災では、広域大災害におけるライフラインの脆弱性が浮き彫りにされました。特に救急救命率は発災後72時間で20-30%に低下することから、緊急時の通信手段の確保は必須です。
そこで、私たちは機動力のある自動車を中継ポイント(HUB)とする防災情報ネットワーク構築を模索。TTC内にコネクテッド・カー専門委員会を立ち上げ、自動車・部品メーカー、通信機器メーカー、通信事業者などと共に、自動車関連の通信技術の標準化仕様の検討に着手しました。また、専門委員会では地震、津波、火山噴火、水害など、日本と同じような自然災害リスクを抱えるアジア地域での標準化を推進するためASTAP(Asia-Pacific Telecommunity Standardization Program)へ提案し、フィリピンでのワークショップや各国での実証実験を経て、2018年にアジア標準として勧告化されました。現在は、各国で実用化に向けたエコシステムの具体化や普及活動が進められています。
このようなコネクテッド・カー専門委員会・委員長としての千村の功績が評価され、2019年5月に「日本ITU協会功績賞」を受賞しました。

【グローバルビジネスにおける標準化の意義】
2015年9月、国連サミットにおいて、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成する17項目の目標「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」が採択されました。私たちが続けている技術の標準化活動は、企業・国単位のレベルを超えて、グローバルな社会課題の解決とビジネスの発展、さらにはSDGs達成のための1つの手段だと考えています。
今後も、標準化活動から得たさまざまな教訓や知見をベースに、「もっと安全で、快適・便利、環境にやさしい社会」を実現する手段を日本から世界に発信し続けたいと思います。

<質疑応答>

賛同者や仲間を得ることが標準化成功の鍵を握る

Q:VoIP開発の際、社内には慎重論も多かったということでしたが、どのようにしてイノベーションを起こしたのか?

千村:まずは、VoIPが今後いかに有望であるかということを実証する情報収集から着手しました。作成したレポートをさり気なく上司の机の上に置くと同時に、少しでも興味を示してくれた人には、すぐに会いに行って話をするなどして地道に賛同者を得てきたことだと思います。それと、タイミングを逃さないことも大切です。VoIP開発を進めたのは、医師の水島洋先生からの電話でしたし、標準化の機運を高めたきっかけはブルーリボン賞の受賞でした。

Q:タイミングを逃さなかったということは、ご自身が強運だったのか? それとも努力の賜物だったのか?

千村:それを自己評価するのは難しいと思います。ただ、IP電話の問い合わせをしていただいた水島先生にも感謝していますし、その電話を切らずに「奇妙な問い合わせは、とりあえず千村に回そう」と、取り次いでくれた営業にも感謝しています。そう考えると、人にも運にも恵まれていたということでしょうか…。

Q:標準化に向けて社内調整を終えた後は、外部の標準化機関でのご苦労があると思います。そこで作業をスムーズに進める極意のようなものは?

千村:基本的には、社内調整と同様、より多くの賛同者を得ることです。私の場合、会議のようなオフィシャルな場だけではなく、ブレイクタイムや会議後などのアンオフィシャルな場でのコミュニケーションも重視していました。

Q:コネクテッド・カーに関する標準化の場合、通信と自動車業界では文化も異なると思います。そういった業界の垣根を乗り越える方法は?

千村:ドイツテレコムとベンツの共創のような他の成功事例を示し、共通の社会的な課題と向き合うことを互いに認識することだと思います。

Q:標準化実現のため、提案の際の具体的なテクニックは?

千村:標準化は諸刃の剣。すべてをオープンにすると効率的である反面、各社の独自性が失われます。そのため、提案の際は、オープンとクローズのバランスを考慮することが大切。具体的には、初期段階では標準化の範囲を極力狭くし、第2、第3のオプションを示しながら、徐々にステップアップしていくことです。また、1社だけではなく、複数の会社での共同提案とすることも、議論をスムーズに進めるコツだと思います。

Q:これまでの標準化活動を通じて得た一番の教訓、そして、今後のご自身の課題は?

千村:「標準化で一儲けしてやろう」などといった邪な考えからスタートしたビジョンは、それぞれの利害関係が表面化し頓挫してしまいます。やはり、社会的な課題と真摯に向き合う良いビジョンには、良い仲間が集まってくるということを実感しました。
これからの課題は、こういった経験を若い世代に伝え、後進を育成していくことです。

<千村保文Profile>
OKI 経営基盤本部 理事
OKIイノベーション塾 塾長 兼 政策調査部 主幹
一般社団法人 情報通信技術委員会(TTC) コネクテッド・カー専門委員会委員長
ASTAP(アジア・太平洋電気通信標準化機関) EG-DRMRS(防災専門家グループ)前委員長

本記事およびOKIの「Yume Pro」については、こちらよりお問い合わせください。

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