川崎会長、国際CIO学会公開講演会
「日本の新成長戦略とAIによる課題解決」に登壇
SUMMARY
2019年3月14日、早稲田大学で開催された国際CIO学会公開講演会「日本の新成長戦略とAIによる課題解決」に川崎会長が登壇し、「OKIのイノベーション・マネジメント改革」について講演を行いました。

川崎会長プレゼン概要
国際CIO学会の錚々たるメンバーの中、早稲田大学教授であり、同学会の会長の岩﨑尚子教授からご紹介いただいた川崎会長が1番手として登壇し、OKIを紹介した後、「OKIのイノベーション・マネジメント改革」という演題で以下のプレゼンを行いました。
OKIは創業の言葉に「進取の精神」が謳われ、これまでにまだないものを生み出し、人々の生活をより良いものにするというベンチャースピリットにあふれた会社です。138年の時を経て、昨今の業績を見る中で、継続的にイノベーションを起こす力が落ちてきているのではないかとの危機感、問題意識を持つに至りました。そこで、2017年の夏ごろよりイノベーション・マネジメント改革の取り組みに着手しました。

OKIもそうですが、これまでの企業におけるビジョンや目標は、企業にとっての領域の拡大や、その延長にある新規の商品・サービスの開発を前提に議論される傾向がありました。そうではなく、世の中にとっての必要性や、世の中にどのような価値を生み出すかの視点が重要です。経営層は、将来の社会課題に目を向け、過去の反省をしっかりと捉えた上でプロセスを着実に進めることが大切です。
また、社内では、イノベーションの有識者を招聘し、役員向けのセミナー(OKIトップセミナー)を開催し、イノベーション経営の最新状況や各社の取り組み事例を学びました。JIN(一般社団法人 Japan Innovation Network)からは、「事業運営のゲームルールが大きく変わった。経営の焦点が『効率性の追求』プラス『創造性の追求』に変化している。さらに『創造性の追求』がこれまでの個人技から組織技(組織としての取り組み)に移行している」ことを学びました。イノベーションは「試行錯誤の連続」から生まれるので、イノベーションを継続するには全社をあげて支援する体制、社内エコシステムが大切である。つまり部門の枠を超えて、広く共存共栄するための「生態系」のような体制を整える必要があるという指摘は大変参考になりました。

一方、社員の意識改革においては、全役員と新規事業にチャレンジした経験のある社員50名にヒアリングした結果以下の様な課題が浮かび上がりました。
①ビジョンについては、「OKIの目指す姿」に基づく各部内の方向性が不明確
②実行体制については、「新しいことをやってもやらなくても変わらない」企業文化
③事業化加速プロセスについては、顧客への提案能力が低い
④教育プログラムについては、単品売り以外のビジネスモデル構築の方法を知らない
⑤外部活用については、自前主義
OKIは長年良いお客様に恵まれていたため、既存のお客様の高度な要求に対してしっかりと、自社技術を用いて製品を開発し、これを販売し満足をいただいてきた歴史がありました。つまり、言われたことはできるが自らがニーズを発掘して新商品を開発する経験や、新しいことへのチャレンジの意欲や提案能力が十分でないという反省点が明確になりました。
お客様からいただく高度な要求だけではなく、お客様の向こうにいるエンドユーザーに直接アプローチすることが必要です。さらに、エンドユーザーを取り巻く環境という意味では、持続的な開発目標(SDGs)の活用が大きなヒントとなります。SDGs は「未来像」に対する全世界の合意事項であり、世界の大きな潜在マーケットを示しています。ビジネスの目標を描く上では、こうした社会的課題からバックキャストしてビジョンを描くことが重要だと考えています。
日本企業が次の世代にも社会で貢献し続けるためには、それぞれの企業の原点である社会課題解決の視点に帰る必要があります。こうした観点からも、SDGsの目標を共有し、イノベーションを興していくことが重要です。志を同じくするパートナーとの共創活動によって、日本企業が元気になり、ひいては日本自体を元気にすることに貢献できると信じています。
OKIは、次の時代を見据え、SDGsの実現に向けて、全社員が一丸となってイノベーションに取り組んでいます。イノベーション創出に向けて、今後とも皆様とご一緒にチャレンジさせていただきたいと思います。
講演会には150名を超える参加者が集まり、とても盛況な会となりました。
(2019年4月5日、政策調査部 辻 弘美)