• 商品サービス
  • 投資家の皆様へ
  • OKIについて
  • 採用情報
  • お問い合わせ
  • サイトマップ

Daily Topics

Yume塾便り

Feb.15,2023

塾長コラム「Yume塾便り」第75回
~アイデアの芽を大きく育む「加速支援」という制度~

OKIの様々なプロジェクトを加速支援する加速支援者の写真
OKIの様々なプロジェクトを加速支援する加速支援者

最新記事

OKIグループ全社員を対象としたビジネスアイデアコンテスト「Yume Proチャレンジ」は、2018年度の初回以来、年々応募数が増え、現在は総数500件を超えています。「Yume Proチャレンジ」には落選はなく、熱意を持った起案者のアイデアには事業化に向けた継続的な加速支援が行われるというのがポイントです。今回は、多くの起案者や新規事業プロジェクトの加速支援を続けている4名の加速支援者にインタビューします。

それぞれのキャリアを活かし、イノベーションを支援

千村皆さん、こんにちは。
前回の「Yume塾便り(第73,74回)」では、イノベーション研修の企画運営、講師、ファシリテーターの方々に研修の現状や課題などについてインタビューさせていただきました。OKIのIMSである「Yume Pro」にとって、イノベーション研修とYume Proチャレンジは車の両輪のようなものです。そこで、今回はYume Proチャレンジや実務研修、新規技術探求プロジェクトなどといったイノベーション案件の加速支援で実績をお持ちの方々に、加速支援の内容やポイントをお聞きしたいと思います。
皆さん、簡単なプロフィールと、これまで加速支援をされてきた主な案件をお聞かせください。
まずはマーケティング本部の吉原さんからお願いします。

吉原統合営業本部・マーケティング本部の吉原です。もともとは工事・保守サービスのOKIの子会社出身で、その後、SEなどを経て、2021年まではマーケティング&サポート本部という部署で、既存事業のサポートとマーケティングに携わっていましたが、2022年度からは新事業のマーケティングに専念しています。現在、私が担当している金融市場は、2021年に銀行法が改正され金融機関の事業の多様化に対応するため、お客様である金融機関とともに地域DXを推進するビジネスモデルの構築を手掛けています。
これまで加速支援は数件行ってきましたが、直近で印象に残っているのは2021年度のYume Proチャレンジにアイデア投函された「手紙やはがきを切手なしで郵便物を送付できるシステム」です。

統合営業本部 マーケティング本部 吉原の写真
統合営業本部 マーケティング本部 吉原

千村吉原さんが、その案件をサポートしようと思った理由はなんでしょうか?

吉原実は、私も前年度に同様なアイデアをエントリーし、事業化に向けて現在も取り組んでいるのですが、本アイデアは郵便領域の決済や郵便物の特定方法など郵便業務について現実的な運用も含めてしっかり検討された秀逸なアイデアだと思いました。また、起案者がOKIグループのシェアードサービス会社であるOPS(OKIプロサーブ)で、ATMなどのデザインを担当されており、マーケティングには縁遠い方だったので、そういう方の発想に興味があったというのも理由のひとつです。

千村はい。わかりました。詳しいことは、後ほど伺います。
では、次にIPC(イノベーション推進センター)の竹内さんに同じ質問です。

竹内IPC・企画室の竹内です。現在の本業はOKIの中長期の技術戦略の立案などに携わっています。また、学生時代からAIを研究していた関係で、IPCのAI技術開発部にも所属し、ここでは中央大学との産学連携プロジェクトに携わり、具体的には、航空機整備やスマート農業などに関する社会実装に向けた取り組みを支援しています。
Yume Proチャレンジの加速支援に関しては、相談などを受け、いろいろな案件に首を突っ込んでいるのですが、現在、正式に携わっているのは「脱炭素を促す行動変容ソリューション」です。具体的にはナッジという行動科学や心理学の概念を使って、さり気なく脱炭素化行動、たとえば、より環境負荷の少ない消費行動や、エレベータを使わず階段を利用するなどの行動を促すデザインや仕組みの開発です。私自身も大変面白い取り組みだと思い加速支援を決めました。

イノベーション推進センター 企画室 竹内の写真
イノベーション推進センター 企画室 竹内

千村では、次にC&P事本(コンポーネント&プラットフォーム事業本部)の大槻さん、お願いします。

大槻C&P事本・情報機器事業部の大槻です。入社後、情報通信系のSEからスタートして、「CTstage」のプロジェクトにも初期段階から関わり、BU長として事業運営にも携わってきました。その後、経営企画などを経て、現在はプリンター技術を活用した新事業創出に携わっています。
他の方々と同様、さまざまな案件の加速支援を行っていますが、現在のメインは、印刷物を入口に顧客接点の改革を目指した「デジタルエンゲージメント・ラベル」というソリューションです。さらに、C&P事本の若手・中堅が立ち上げた2つのプロジェクト。具体的には、旅先などでふるさと納税を行う仕組みや、イベント会場などでの人流制御ソリューションの加速支援を行っています。これらは、Yume Proチャレンジの加速支援と、本業の新事業創出を兼ねたようなものですね。

C&P事業本部 情報機器事業部 大槻の写真
C&P事業本部 情報機器事業部 大槻

千村続いて、ソリューションシステム事業本部(SS事本)の鷲田さんにお願いします。

鷲田SS事本・ソフトウェアセンターの鷲田です。入社以来、一貫してソフトウェア開発に携わっています。2005年頃、当時の電子政府関連のプロジェクトに参画した際、プロジェクト管理に興味を持ち、その手法であるPMBOK(※1)を学び、現在はソフトウェアの生産性向上を図るため、社内の開発環境の構築・運用を中心に手掛けていますが、どれも自己評価としては及第点には達していないような気がします。
加速支援としては「データ流通コンサルによるDXの推進」や、「図面管理のクラウドサービスを活用した工事現場支援」、「電子マネーに特化したATM」などがあります。また、Yume Proチャレンジの0次審査にも関わっています。

千村自己評価は厳しいですが、鷲田さんは若手の頃から、かなり先進的な発想や取り組みをされていた方なので、塾長として、鷲田さん加速支援をお願いしています。

ホットにクールに…。加速支援にはそれぞれの流儀がある

千村さて、皆さんが加速支援する際、アドバイスのポイントや特に気をつけていることは何でしょうか?

吉原先ほどお話しした通り、アイデアの起案者はマーケティングとは無縁なクリエイティブな仕事をされている方だったので、BMCの描き方からアドバイスしました。起案者にとって、最も大切なのはアイデアを発想した背景だと思います。そこから、現在想定している課題の社会的影響度や、その課題解決の現実性などを掘り下げていけるようにサポートしてきたつもりです。起案者から具体的なアイデア出てこない時は、ついつい私の考えを言ってしまうということもあり、加速支援者としては大いなる反省点だと思います(笑)。しかし、そんなおせっかいを続けていたら、起案者が俄然やる気を示してくれて、とても感激しました。このように相手との共感を大切にし、ある時は本人以上の熱意をもって起案者と向き合うように心掛けています。加速支援を経験すると発想の柔軟性、多様性が高まり、自身のスキルアップにもなるということを身をもって実感しました。

千村「熱意なきところにイノベーションなし」という金言がありますが、熱血漢の吉原さんらしいコメントをいただきました。
通常の業務もお忙しい中、実際、どのような手段で支援されていたのですか?

吉原1行のアイデアからBMCの13項目をすべて埋めるまで、Web会議で3回、その間メールでのやり取りは10回以上だったと思います。

竹内熱い吉原さんの後で、気おくれしそうです…(笑)。
私の場合は、本業(技術戦略)の関係上、他社や大学など世間全般の技術動向を把握しているので、具体的に提示されたアイデアに対し「他社では、こういう類似事例があるけど、それとどう違うの?」だとか「それって本当に必要なの?」とか、ちょっといじわるな投げかけをしています。誤解しないでいただきたいのは、アイデアを頭ごなしに否定するのではなく、起案者の反応や反論を期待しての行動です。そうすることで起案者との議論を深め、場合によってはピポットを促したりして、アイデアのブラッシュアップを図ろうとしています。

千村さすがに社内きってのAIのエキスパートらしいロジカルな方法論です。でも、竹内さんのクールな対応は、起案者の熱意の確認作業でもあるのですよね。

竹内まあ、少し叩かれたことでへこたれるような熱意のない人のアイデアは、持続しないだろうという、ドライな考えを持っています。しかし、先ほど吉原さんの考えを聞いて、私ももっと、熱意をもって相手と向き合うべきだと猛省しているところです。

大槻C&P事本は、ATM、プリンターなどプロダクトを中心に売ってきた部署なので、これからは「モノ売り」から「コト売り」への発想の転換が必要だと思います。新事業・新サービスの加速支援では、そのプロジェクトメンバーが常にユーザー視点で物事を考えるように仕向けています。そのため、お客様のもとに何度も足を運び現場の意見を聞く必要性を説いています。実際、ふるさと納税の案件では道の駅に行って現場を見ていますし、自治体にもお話を聞き、人流制御の案件ではスポーツイベント運営会社や施設管理会社などにヒヤリングを行っています。

千村大槻さんはベテランSEなので、ヒヤリングなどは得意だと思いますが、技術者の中には苦手と言う方もいますよね? その場合、どんな支援やアドバイスをしていますか?

大槻まずは事前準備ですね。ミーティングやヒヤリングに際してはお客様に聞くべきことなどを整理しておくようアドバイスします。でも、想定通りになることは稀で、お客様から本質的なことを聞けずに、PJを進めるに当たって必ず壁に突き当ります。そのタイミングで適切なアドバイスを与えるのが効果的だと思っています。具体的には、お客様からの発言を促したり、本音を聞き出したりする会話のテクニックです。営業やSEにとっては当たり前のことですが、全員参加型イノベーションでは、PJ参画者が多岐にわたるので技術者も身につけておくべきスキルかと思います。

SS事業本部 ソフトウェアエンジニアリング部 鷲田の写真
SS事業本部 ソフトウェアエンジニアリング部 鷲田

鷲田大槻さんがおっしゃった通り、私たちはどうしてもシーズ志向に偏りがちです。ですから私の場合は、BMCの必要性を説き、その描き方を中心にアドバイスします。課題解決の手段にとらわれず、ニーズから検討することが肝要なので、BMCではCS(顧客セグメント)とVP(提供価値)を特に重視しています。

千村鷲田さんはTOC理論(※2)などにも詳しいですが、そういう視点からのアドバイスなども行っていますか?

鷲田特に「データ流通コンサルによるDXの推進」の案件については、TOC理論に類似したゴール指向であるにも関わらず、どうしてもデータ活用に縛られる方向にあったので、そのことを強く指摘した結果、うまく軌道修正できたと思っています。

数多くの現場の教訓を共有する仕組みづくりを

千村それでは最後に、それぞれのお立場やご経験からYume Proチャレンジをはじめとするイノベーション案件の加速支援の今後について、忌憚のないご意見、ご提言、決意表明などお聞かせください。

吉原アイデアを発想すること、場合によっては妄想でもいい。とにかく新しいことを生み出すことは、とても楽しいことだという想いを、できるだけ多くの人と共有したいと思います。それは、職務上、直接的に技術や事業企画などに携わっていない人ともです。私もおせっかいな性格なので、可能な限り多くの案件に関わりたいと思う一方、本業の方も多忙すぎて、なかなか時間を捻出できないというのが悩みです。ですから、誰かが発想したアイデアを皆で共有しブラッシュアップさせるような仕組みを構築すると同時に、成功例、失敗例を含めてプロジェクトのプロセスをわかりやすい資料として残せるようにしたいと思っています。

千村私もYume Proチャレンジの審査員を経験しましたが、吉原さんが作成された資料はうまく整理されて、非常にわかりやすいと評判でした。本業もお忙しいとは思いますが、そういう資料作りのテクニックやノウハウなども後輩たちに伝授していただきたいです。

竹内長くAI技術に携わってきたためか、周囲からはドライな性格に思われがちですが、Yume Proチャレンジにしても、自分が面白いと判断した案件に関しては、批評家ではなく当事者意識をもってことを進めていきたいと思っています。実際、スマート農業や航空機整備などのプロジェクトでは率先して現場に行っています。のめり込むと次第に自分が発案した案件と思うようになり、吉原さんと同様、おせっかいおじさんになってしまいますよ(笑)。

千村Yume ProチャレンジにもAI関連のアイデアのエントリーが増えていますが、その傾向をAIのエキスパートとして、どのように評価されていますか?

竹内皆がAIに興味を持っていただいていることは嬉しいことです。一方、AIは万能だというAI神話のような風潮もあり、Yume Proチャレンジにも3~5年後の実現性を考えると、疑問符が付くような案件も散見されます。そういう場合、アイデアの芽をいきなり摘んでしまうのも忍びないですし、かといって現状では実現が困難なことや課金ニーズがない物を続けていてはビジネスにならない。そのさじ加減をどうつけるかが、Yume Proチャレンジの課題というか、私自身の課題だと思っています。

千村加速支援は、吉原さんのようなアクセル役がいたり、竹内さんのようなクールな方がブレーキ役となったりで、全体としてバランスが取れるといいですよね。

大槻現状の加速支援は属人的になっているため、今後の課題としては加速支援者の育成だと思います。その方法として、ひとつは一度、現場で加速支援を受けた人が、次に別の案件の加速支援を担当してみること。「岡目八目」というように、他の人の案件を違う視点で見てみると新たな発見があったりして、本人の成長にもなるでしょう。また、ベテランの加速支援者に若手を付けて、OJTで加速支援者を育成する制度を作る必要があると思います。

千村そうですね。加速支援者もそれぞれ得意、不得手など個性があると思うので、チームで加速支援するシステムを作りたいですね。

大槻それと、先ほど吉原さんが仰っていたように、プロジェクトの資料を残して活用する仕組みを作ること。それも形式的なマニュアルではなく、現場の人たちの「生の声」書かれた資料があればいいですね。

千村そうですね。Q&A集のようなドキュメントがあればいいかと思います。
さて、鷲田さんはランチタイムにTOC理論の解説動画の視聴会を開催されるなど、独自に後進の育成にも取り組んでおられますが、今後の人材育成や加速支援に関して、どのようにお考えでしょうか?

鷲田以前に比べると意識改革はかなり進んだとは思いますが、まだ社内にはシーズ志向に偏る傾向があるのでニーズ志向をもっと拡大したいと思い、いろいろと試行錯誤しているところです。それと今後は、私の本業のミッションである生産性向上やTOC理論に関するワークショップをやりたいと思っています。また、加速支援の対象者に対しても、そういった理論や手法をさり気なく繰り込んでいきたいと思います。

千村皆さん、それぞれの立場からの貴重なご意見、ありがとうございます。
加速支援者は新しいことにチャレンジする人の伴走者であり、ある時は風の抵抗を軽減する競輪の先頭誘導員、そして、背後からランナーを鼓舞する駅伝のコーチのような役割も担っていると思います。また、加速支援にはマニュアルはなく、それぞれの支援者のキャリアや個性に応じて、十人十色の支援スタイルがあるはずです。これからも、イノベーションを担う人材育成に関して、ご意見やご要望などがありましたら、塾長の私にお伝えください。今後のイノベーション研修などにも盛り込んでいくつもりです。
今日はありがとうございました。

※1 PMBOK(Project Management Body Of Knowledge):プロジェクトマネジメントの手法や知識を体系化したもの。特に、ソフトウェア開発のプロジェクト管理において用いられている。

※2 TOC(Theory of Constraints)理論:イスラエルの物理学者であるエリヤフ・ゴールドラットが開発したマネジメント理論。制約条件の理論。

(2023年2月15日 イノベーション推進センター)

本記事およびOKIの「Yume Pro」については、こちらよりお問い合わせください。

最新記事


Special Contents

      お問い合わせ

      お問い合わせ