塾長コラム「Yume塾便り」第66回
SDGsの企業経営への活かし方
~技術情報協会発行のSDGs書籍にOKIのイノベーションの取り組みを紹介~

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2022年1月31日に一般社団法人 技術情報協会より書籍「SDGsの経営・事業戦略への導入と研究開発テーマの発掘、進め方」が発行されました。本書は、国連が提唱する世界共通の開発目標SDGs(※1)を踏まえて企業の経営、そして研究開発にどう落とし込むかについて、本分野の専門家が著述したものです。OKIは、第4章「SDGsと技術・R&D戦略の組み合わせ方、落とし込み方」の第1節を担当し、「OKIにおけるイノベーション・マネジメントシステムと研究開発の取り組み」を執筆しました。その概要を紹介いたします。
※1 SDGs(Sustainable Development Goals):国連が提唱する2030年の世界の開発目標。
ESG経営に基づくイノベーション戦略と推進
OKIはESG(※2)を軸とした経営戦略に基づき、2030年までの事業創出を目指した「イノベーション戦略」を2021年1月に発表しました。この戦略では、中期経営計画2022に示した7つの社会課題に基づく、具体アクションを設定しています。各社会課題については、SDGsの目標達成のための成長戦略を設定し、構築中のイノベーション・マネジメントシステム(IMS)に則って、事業化に向けた試行錯誤を行っています。
※2 ESG:持続可能な世界の実現のために、企業の長期的成長に重要な環境(E)・社会(S)・カバナンス(G)の3つの観点を表す用語。
OKIのイノベーション・マネジメントシステムYume Proの概要
ISO(国際標準化機構)では、イノベーション・マネジメントシステム(IMS)の国際標準ISO 56000シリーズの標準化に取り組んでいます。OKIでは、このIMS標準に先駆けて社内のIMS「 Yume Pro(ユメプロ)」を構築しています。

(出所)日本規格協会 ISO56002日本語対訳版 図1より
OKIでは、IMSの考え方に基づき、「社会の大丈夫をつくっていく。」をキーメッセージとし、SDGsが目指す社会課題の解決のための試行錯誤をお客様やパートナーとの共創によって実現するための仕組みを構築しています。
具体的には、解決すべき社会課題の分野をSDGsの目標に照らし合わせて特定し、IMSが規定している「機会の特定」から、「コンセプトの創造」、「コンセプトの検証」、「ソリューションの開発」、「ソリューションの導入」までの活動プロセスを試行錯誤しながら実現することで、ビジネススキームの解像度を高めていくプロセス(Yume Pro ビジネスプロセス)を規定しています。また、技術の強みと実現度を高めながら社会課題解決の検討進めていくプロセスをYume Proテクノロジープロセスとして規定し、イノベーション創造に取り組んでいます。
OKIでは、品質マネジメントシステム、環境マネジメントシステムなどを含むいくつもの観点のマネジメントシステムを取り込んだマネジメントシステムを構築してきました。そこで、IMSを全社展開することによってIMSと品質などの他のマネジメントシステムと連携した新たなマネジメントシステムとすることを目指しています。
イノベーション推進活動の取り組み
OKIでは、特定の個人の能力によってイノベーションを興すのではなく、「全員参加型のイノベーション」を目指しています。そのため、イノベーションの考え方を浸透させるための普及啓蒙活動と社内教育に取り組んでいます。毎年約1000人を対象に「イノベーション研修」を実施し、その結果について社長や経営陣との直接対話「イノベーション・ダイアログ」を行っています。また、これらの活動で身につけたノウハウを実践する場として、「Yume Proチャレンジ」というビジネスアイデア実践コンテストを実施。そのコンテストで発掘された優秀なアイデアには事業化に向けた支援を行っています。
研究開発事例「多点型レーザー振動計」を紹介
本書では、2019年度のYume Proチャレンジで大賞を受賞した「多点型レーザー振動計」について、解決すべき社会課題とそのコンセプト、事業化に向けた取り組みを紹介しています。
SDG9.aが目指す「持続可能なレジリエントなインフラ」実現において、インフラ設備やビル、工場などの施設管理や保守は熟練工に頼っている現場が多く、効率的な設備管理と異常の早期検知が大きな課題となっています。早い段階での異常検知を行うには数十kHzの帯域の振動検知が必要になるが、このような精度で振動計測ができるレーザー振動計は高価であり、また単一点の振動測定にしか対応できず、主に研究開発用と用途に限定して使用されています。多点型レーザー振動計は光スイッチを使って分岐したレーザー光を光ファイバーによって使ってセンサーヘッドまで伝送できるようすることで約100ケ点もの場所の振動を同時に測定することで1点あたりの振動計測コストを下げることができる。現在、事業化に向けて、多くのお客様やパートナーと価値の検証を行っています。

本著のOKIの執筆者:
・千村 保文
・野中 雅人
・福永 茂
・青木 聡
・丹野 洋祐
・佐々木 浩紀
・佐藤 範之
是非、SDGsの達成に向けて取り組む企業の皆様の参考になれば幸いです。
(2022年2月22日 OKIイノベーション塾 塾長 千村 保文)