Yume塾便り「Yume塾便り」 第18回
イノベーションと標準化 ~ITU協会賞功績賞をいただきました~

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2019年5月17日(金)京王プラザホテルで行われた第51回「世界情報社会・電気通信日のつどい」において、日本ITU協会賞「功績賞」をいただきました。この賞は、長年に亘る標準化活動の経験に基づく貢献が評価されたものであり、イノベーションと標準化の関係について、イノベーション塾・塾長としての私の考えをご紹介します。
イノベーションと標準化の目的は一緒
イノベーション研修(基礎)では、イノベーションとは「新たな社会的・経済的価値を生み出すための既存事業の革新と新規事業の創出である」と教えています。私は標準化の目的もイノベーションと合致する点があるのではないかと思います。情報通信技術の標準化活動は、その情報通信技術が持つ価値をより多くの場面で使えるように共通的な仕様を作ることです。これにより、高度な技術を使いやすく、多くの人が使えるようになります。わかりやすい例では、電話がどこの通信会社でもつながるのは標準化の成果です。また、高精細な映像をどこの会社のテレビでも見られるようにする映像符号化方式の標準化によって、4K8Kテレビが実現しています。
標準化は仲間づくりとタイミング
しかしながら、真に社会に普及し、使われる標準化仕様を作ることは容易ではありません。標準化活動をリードしていくためは、他国や他社との交渉において中立性を保ちつつ、自社の強みをアピールしていくことが必要です。そのためには、仲間づくりと標準化するタイミングなどが重要になります。早く実用化したいからと言って、合意する仲間が少ない段階で拙速に標準化しても、その仕様は使われません。また、多くの仲間を作るために議論に時間をかけ過ぎても、市場で普及させるタイミングを逃してしまいます。標準化活動では、市場や技術の動向を見据えながら、仲間づくりとタイミングが最も効果的になるように見極めることがポイントになります。
私は、1990年代からインターネットで音声通信を行うためのVoIP(Voice over Internet Protocol)技術の国際標準化活動に参加し、H.323(※1)やSIP(※2)、T.38(※3)などの標準化に貢献する機会がありました。今回の受賞は、2014年頃から行った、災害時にコネクテッド・カー技術を用いた防災システム(V-HUB(※4))のアジア標準化活動が評価されたものです。この活動を進めていく上で、かつての経験が大いに役に立ちました。

ITU(国際電気通信連合)をはじめとする様々な国際標準化機関では、SDGsの目標達成のために、標準化活動がどのように貢献できるかについて、世界中の専門家が検討しています。OKIイノベーション塾では、このような活動に参画し、社会を変えていくことに貢献する社員の育成に努力していきたいと思います。
(2019年5月29日、OKIイノベーション塾 塾長 千村 保文)
※1 H.323:IPネットワーク上でのマルチメディア通信仕様
※2 SIP(Session Initiation Protocol):IP電話などに用いられている通信仕様
※3 T.38:IPネットワーク上でのリアルタイムファクシミリ通信仕様
※4 V-HUB:Vehicle HUBの略