『CINO ism Vol.43』
2022年度を振り返って(後編)
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今年度、OKIのIMS=Yume Proは「普及・啓蒙」から「実践モード」へとシフトチェンジし、新規事業創出に向けた取り組みを加速させることに注力してきました。前回から、2022年度の振り返りとして、活動や成果、より具体的な目指す姿などを前・後編に分けて総括しています。
後編となる本記事では、イノベーションの実践にフォーカスして、注力分野での新規事業創出に向けた取り組みについて振り返っていきます。
IPCとして活動した3年間でOKIの研究開発は大きく変わった
2020年4月にイノベーション推進部門と研究開発部門を統合した「イノベーション推進センター」(IPC)が誕生してから3年が経過しました。
IPCでは当初から、全員に「Yume Proプロセスに則って業務を遂行すること」を義務付けました。当初、研究開発のメンバーはかなり困惑しましたが、月日を重ねるにつれて考え方、仕事のやり方が明らかに変わっていきました。常にお客様のニーズを意識し、お客様と会話し、「どんな社会課題、どんなお客様の困り事を解決できるか」を明確にした研究テーマで新しい技術開発に臨んでいます。IPCの事業開発部門であるビジネス推進部はもとより、事業部門や営業部門と一緒に行動することも増えてきています。
社会課題解決に貢献し「社会の大丈夫をつくっていく。」ために、ビジネス(新規事業)開発と研究開発を融合した成果は、間違いなく表れています。
高度遠隔運用の市場も拡大、お客様との共創も着実に進展
「実践モード」を掲げた今年度は、注力分野での事業化を加速させるべく、IPCを中心とするプロジェクト(PJ)の体制強化を図り、お客様の「課金ニーズ」を明確にする活動に力を入れました。その具体例として、CINO ismでは、「CINO ism Vol.40」で遠隔運用プラットフォーム技術「REMOWAY(リモウェイ)」、「CINO ism Vol.41」で製造設備の稼働監視などに価値を提供するセンシング技術「多点型レーザー振動計」のプロジェクト活動を紹介しました。
「REMOWAY」は、第1回の「Yume Proチャレンジ」で大賞を獲得した「AIエッジロボット」の事業化に向けた試行錯誤の中で、お客様とのやり取りから導き出した「多様なエッジデバイスを統合的に管理・制御できる仕組み」を形にしたものです。お客様側から共創の打診を非常に多くいただいており、警備業や施設管理、製造業、建設業、運送/倉庫業など多様な業種のお客様と実証実験に取り組んでいます。また、エッジデバイスとなるロボットやIoT端末などのベンダーとの協業も進んでいます。
「多点型レーザー振動計」は、第2回の「Yume Proチャレンジ」で大賞に輝いたアイデアで、長年培った光通信技術をセンシングに応用した、非常にOKIらしいプロダクトです。最初の試作品から多くのお客様の関心を集めたものの、一時期はPJ内で「本当の提供価値は何か」といった迷いも生じました。そこから、超純水プラント事業を展開するお客様をはじめ、腰を据えて共創に取り組んでいただける対象を見出し、大きく前進しました。商用導入、その先の商品化に向けて事業部門とも密に連携しており、事業移管の道筋も決まっています。
当分野は今後の市場拡大が見込めますし、OKIとしてもかなりの手応えを掴んでいるので、CINOとして期待も膨らみます。とはいえ、提供価値を数値化してお客様の課金ニーズをより明確にし、「お金を払う(買う)」と決断していただくのは、そう簡単なことではありません。ここからの一歩、二歩が本当に重要ですし、ここを突破することが事業化に向けた来年度の大きな目標になります。
市場の関心・ニーズが高まる物流、ヘルスケアでも確かな手応え
IPCとして注力分野に位置付けている「物流」「ヘルスケア」に関しても、お客様との共創による仮説検証を重ね、ソリューション開発が進められています。
物流分野では、共創パートナーと物流DXを実現するための実証実験を長期にわたって実施し、AI技術を活用し分割配送に対応した配送計画を自動算出する「コスト最小型ルート配送最適化アルゴリズム」をLocoMosesとして製品発表を行い、社会実装もまもなくのところまできています。
ヘルスケア分野については、OKIが長年研究してきた行動変容技術を活かして「ウェルネスオフィス向け行動変容サービス」や「睡眠改善ソリューション」の開発に取り組み、数多くの共創パートナーとともに、実証実験などを実施しています。
いずれの分野も、IPC設立前からさまざまなお客様にアプローチし、社会の変化とともに、物流は労働力不足、ヘルスケアは医療費高騰といった問題が浮上し、さらにコロナ禍によって両分野ともニーズが高まり、OKIの取り組みに対する反応も大きく変化しました。OKIの強みで課題解決にどう貢献できるかをしっかり考え行動していけば、必ず成果に結びついていくと見ています。
「既存事業の革新」「通常業務の改善」でもイノベーションの成果
今年度も引き続き、プロモーション活動を積極的に行ってきました。昨年10月に開催した第3回の「OKI Innovation World 2022」では、従来のトークセッションだけでなく、リアル展示会場からの実況中継をプログラムに組み込み、お客様やパートナーとの共創によって生まれた10種のソリューションを、担当者の解説付きで紹介しました。これらのソリューションはIPCを起点とするものだけでなく、事業部門からのアイデア、OKIの製造部門における現場の課題を起点とするものも含まれます。OKIでは、「新規事業の創出」だけでなく、「既存事業の革新」「通常業務の改善」もイノベーションと位置付けており、これらは社内におけるイノベーションの取り組みの代表例となります。
「もっとお客様のところに行く」をOKIの当たり前に
CINOとしては、前編にも記した「全員参加型イノベーション」の具現化に向けた施策の強化・拡充、さらに「実践」を全社で加速させることが、来年度の大きな責務だと思っています。
イノベーションの実践に関しては、「お客様のところへ行く回数が少なく課金ニーズの解像度を上げられない」ことがOKI全体の大きな課題として挙げられます。ですから、来年度も私から「もっとお客様のところに行こう」と社員に言い続けていきますし、私自身も率先して行動していこうと考えています。
(2023年3月31日、OKI執行役員 CINO兼CTO 藤原 雄彦)





