『CINO ism Vol.4』
「Yume Proチャレンジ」で新規事業の種を生み、育てる!

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執行役員 イノベーション責任者(CINO)兼技術責任者(CTO)の藤原雄彦です。OKIが実現を目指している全員参加型イノベーションのさまざまな取り組みについて、この連載「CINO ism(チノイズム)」で情報発信していきます。
第4回は、イノベーションによる新規事業創出を狙いとするOKIグループ内のビジネスアイデアコンテスト「Yume Proチャレンジ」をご紹介します。
応募条件は「イノベーション・プロセスに則った仮説立案」であること
「Yume Proチャレンジ」は、イノベーション研修を受講した社員(あるいは受講した社員を含むチーム)を対象に、OKIのイノベーション・マネジメントシステム「Yume Pro」のプロセスに則ったビジネスアイデアを募集し審査するという企画です。2018年度から毎年開催で合計229件のアイデア(参加者はのべ295名)が集まりました。
応募アイデアは、Yume ProプロセスのStep0(ISO 56002箇条8.3.2の「機会の特定」)の仮説立案に適合していることが大前提で、ビジネスモデル・キャンバス(BMC)に基づいて、対象となるお客様、提供価値、活用するOKIの強みや共創パートナー候補を設定します。最終審査の場では、審査委員である鎌上社長をはじめとした経営陣へのプレゼンと質疑応答が行われ、大賞・準大賞・特別賞を決定します。
大賞に輝いたアイデアは(もちろん、受賞した他の優れたアイデアも)、単に表彰を受けるだけでなく、社内体制を整えてしっかりとした仮説検証が行われ、事業化・商用化に結び付けるための積極的な取り組みが続けられます。そして、鎌上社長の明示によって「必要な予算は戦略費から支援」されることになっています。
運営方法の見直しで応募アイデアの磨き上げを促進
第1回の「Yume Proチャレンジ2018」は、イノベーション推進部がリーダーとなって応募した「AIエッジロボット」が大賞に選ばれました。初回ということもあって試行錯誤の面も多々ありましたが、新設部門による新たな活動の一例を社内にはっきり示すことができたのは大きな成果でした。さらに、受賞後すぐに全社的プロジェクトが結成され、事業化予算を付けて動き出したことも、社員の良い刺激になったと思います。
第2回の「Yume Proチャレンジ2019」では、前回より募集開始を早めたことと、社内で各アイデアに関する情報を共有し、意見交換やコラボレーションの促進を図る仕組みを新たに採用しました。また、社外の専門家にコメンテーターをお願いし、エントリーしたアイデアを審査に向けてブラッシュアップする加速支援の仕組みも導入しました。
応募総数は45件で、この中の10件が最終審査の2次審査会に進みました。コロナ禍のためオンラインで行われた審査には、一般社団法人Japan Innovation Network、新規事業創出の専門家でOKIのシニア・アドバイザーも務めていただいている守屋実様の2名にもアドバイザーとしてご出席いただき、イノベーション推進部メンバーがエントリーした「多点型レーザー振動計」の大賞のほか準大賞2件、特別賞1件を選定しました。

すべての応募アイデアで“お客様の声を踏まえた仮説検証”を実施
2020年度の「Yume Proチャレンジ2020」では、「応募100件以上」を目標の1つに掲げ、もっと多くの社員に“チャレンジ”してもらうべく、募集開始を4か月前倒しし、相談会の回数も増やしました。また、参加登録段階では1行のアイデア入力だけでもOKとし、エントリー後の加速支援も大幅に強化しました。これにより、海外も含むさまざまな部門から計191名が参加し、目標を大きく上回る147件のアイデアを集めることができました。
この年にイノベーション推進部と研究開発センターの統合で新生したイノベーション推進センターのメンバーの中から、コーディネーター=加速支援者を担える人材を育成し、応募147件すべてに加速支援者をアサインしました。
その際に、目標に定めた「お客様の声を踏まえて仮説検証を行うこと」をすべての応募案件で実施しました。仮説を立てたら、実際のお客様に内容を説明して意見・感想を伺い検証し、仮説を練り上げ、このプロセスを何度も繰り返すことで、アイデアをブラッシュアップしていきます。鎌上社長からは「応募数もさることながら、年々ビジネスモデルのレベルが上がっている」との講評がありました。
参加資格者拡大と明確な意識向上でさらなる応募数増に期待
4回目となる「Yume Proチャレンジ2021」は、この6月から参加受付を開始し、最終の2次審査は年度末に行う予定です。今回は応募アイデアへの加速支援をさらに強化します。そのため、イノベーション推進センターのメンバーだけでなく、これまでにイノベーション研修の中堅研修を修了した社員にも加速支援者になってもらい体制を大幅に強化します。
今年度は昨年度を上回る200件を目標に進めたいと思っています。これまでの開催を通じて、このコンテストに込める経営トップの本気度はグループ内に十分伝わっていますし、新しいことをやるための費用も確保できることが募集へのモチベーションにつながっています。また、イノベーション研修の基礎研修受講者は3年間で計3000人に達し、2021年度から2年間は年1500人の受講を目指していますから、コンテストの参加資格者の裾野は着実に広がっています。そして、社員の「新しいものを創出したい、創出しなければ」という意識・意欲も明らかに高まっています。
大賞獲得後は事業化へ向け迅速かつ着実にプロジェクトを進展
「Yume Proチャレンジ」の最終目標は、アイデアの事業化を実現することです。受賞アイデアは、引き続き仮説検証を進め、共創パートナー、ファースト・カスタマーを獲得し、ビジネスモデルを確立して事業化に近づけるというプロセスを歩みます。
「AIエッジロボット」は、全社的プロジェクトのもと半年足らずで試作機を完成させ、2019年10月に開催された「CEATEC JAPAN 2019」に出展し、多くの来場者とメディアの注目・評価を集めました。現段階では、複数のお客様と業務現場での試行を重ねつつ、事業化・商用化のプラン作りに取り組んでいます。
「多点型レーザー振動計」も、すぐに社内プロジェクトを立ち上げ、2020年10月には「振動計測ソリューション」として報道発表し、「CEATEC 2020 ONLINE」への出展も行いました。商品化に向けて共創パートナーとなるお客様とのPoC(Proof of Concept:概念実証)にもすでに着手しています。
今年の大賞も同様に、まもなくプロジェクトが結成され、事業化を見据えて仮説検証、共創パートナー募集、さらにその先とステップを踏んでいくことになります。
「Yume Proチャレンジ」によって、毎年数件の優れたビジネスの種を生み出し、しっかりと育てていけば、数年後には一定のサイクルで新規事業が立ち上がっていくことになるでしょう。長期的な成長戦略の仕込みを行うという狙いも込めて、社員の皆さんには今後も「Yume Proチャレンジ」に積極的に参加し、OKIの未来を担うビジネスアイデアを練り上げてほしいと思っています。
(2021年6月7日、OKI執行役員CINO兼CTO 藤原 雄彦)