ほぼ週刊 CINOのつぶやき(チノつぶ)第93号
「イノベーション推進センターの若手研究員」

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トップマネジメントの蕨地区訪問
8月28日、鎌上社長と星副社長が、イノベーション推進センター(以下「IPC」)の蕨地区事業所を訪問しました。2020年4月からIPCが社長直轄組織となり、IPCの活動状況の報告や意見交換を密に行うようになっています。今回は、研究現場を訪問し、実際にデモを見ながら研究員との意見交換を行いました。プレゼンを行った14のテーマのうち、入社2年目から7年目の4人の若手研究員を紹介します。各人に執筆してもらったプレゼン概要をご覧ください。
山本
ディープラーニング(DL)モデルの軽量化技術の研究開発をしています。軽量化技術は、処理の重いDLモデルを電力やメモリーに制限のあるエッジ端末で軽快に動作させるための技術です。2019年度、OKI独自の軽量化技術PCASを開発しました(※1)が、そこに演算ビット数を大幅削減する量子化法を組込むことでさらなる軽量化を達成しました。具体的には、画像中から物体位置を推定するDLモデルに対し、精度劣化を1.1%に抑えつつ、モデルサイズを96.5%圧縮できました。

※1 山本は、昨年9月、英国カーディフ大学で9月9日から開催されるコンピュータービジョンと機械学習に関する国際学会「BMVC(British Machine Vision Conference)2019」において登壇するなど、活躍しています。OKIプレスリリース:ディープラーニングモデルの新たな軽量化技術を開発
https://www.oki.com/jp/press/2019/09/z19039.html
国定
説明可能AIの研究で、ディープラーニング(DL)の判断根拠を説明し性能を改善させるという技術に取り組んでいます。従来、DLモデルは処理がブラックボックスで、判断根拠の理解や性能改善が困難であるという課題がありました。そこで、モデルの注目領域を可視化し、その注目領域を人手で修正してモデルにフィードバックすることで性能改善につなげるという、OKI独自の方式を提案し、事業部門と連携し実データを用いた検証を進めています。

近藤
AI間の協調により、トラック輸送業界を横断して輸送効率を向上させる研究に取り組んでいます。(※2)本研究では、AI同士がメッセージをやり取りすることにより合意可能な結論を自動で探索する「自動交渉」という技術を用いています。荷主や物流事業者の交渉AIが{集配日時・場所、貨物量、輸送条件、輸送価格}などを論点とした自動交渉を行うマーケットシステムを開発し、物流事業者の壁を越えた輸送効率最適化の実現を目指しています。

※2 近藤は、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム」の研究テーマに取り組んでおり、日経コンピュータ1月23日号でも紹介されています。
http://www.msi.co.jp/userconf/2019/pdf/userconferrence_report.pdf(外部サイト:株式会社NTTデータ 数理システム ユーザーコンファレンス2019)
川村
不十分なデータに対してもDLで高精度を達成する少データ学習の研究を行っています。一般的にDLで用いる学習データとは、AIに入力するデータとAIが出力すべき正解の組であり、人手での正解付与の負担が課題でした。この課題解決のため、データの一部のみに正解を付与して学習する「半教師あり学習」に注目しました。最新技術試行の結果、簡単な画像認識であれば1%弱のデータのみに正解を付与しても全てに正解を付与した場合と遜色ない結果となりました。今後はさらなる精度向上と会社保有データへの適用を検討します。

若手研究員への期待
今回紹介した4人を含め、若手研究員の活躍は、今後のOKIを支えてくれると期待しています。山本は、2019年9月に英国カーディフ大学で開催された国際学会「BMVC(British Machine Vision Conference)2019」に登壇しています。また近藤は、NTTデータ数理システムが主催している「数理システム ユーザーコンファレンス」に登壇するなど、各々が活躍をしています。OKIのイノベーションを進めるには柔軟な考えが必要です。そのために若い力が必要だと改めて感じました。
(2020年9月28日、チーフ・イノベーション・オフィサー(CINO)横田 俊之)