ほぼ週刊 CINOのつぶやき(チノつぶ)第42号
「Yume ProでISO 56002を解説する」(その2)

出典:一般財団法人 日本規格協会「ISO 56002 イノベーション・マネジメント
-イノベーション・マネジメントシステムー手引き(英和対訳版)」図1
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リーダーシップ
ISO 56002で、「4.組織の個別状況」に続くのが、「5.リーダーシップ」です。イノベーション・マネジメントシステム(IMS)については、トップマネジメントのリーダーシップとコミットメントを示すことが必須です。「5.リーダーシップ」に記載されている通り、イノベーションの方向性を示すビジョンと戦略が明確化されており、戦略の中には、組織の個別状況を踏まえ、これを達成する責任者や計画、組織、支援体制などが明示されていることが必要です。
トップのコミットメントを固めるプロセスが重要
前回のチノつぶ第41号で紹介したとおり、Yume Proの企画に際しては、IMSの課題に関するインタビューから着手し、ここで浮き彫りになった問題点について、社長と膝詰めで対応策を検討しました。プロジェクトチーム(PT)は、2017年10月からスタートしましたが、2018年度の施策に織り込むために、2017年11月末までにまとめよという社長指示もあって、短期間で集中的な議論となりました。現場から上がってきた問題意識と社長の認識とのズレもあって、大激論になりました。PTメンバーの意見を尊重してもらった部分も多かったですが、社長のイニシアティブで盛り込んだ施策も沢山ありました。
たとえば、2018年4月に立ち上げたイノベーション推進部のミッションですが、PTは「加速支援を行う組織」を提案したのに対して、社長からは「自らも新規事業創出活動を行いつつ加速支援も行う組織」にすべきという強い意見が出されました。結果的に社長の発案に沿った組織となりましたが、Yume Proの根幹に関わる適切な判断でした。自らも新規事業創出活動を実践し、そのためのリソースを持つことで、自らも試行錯誤を繰り返しながら、グループ内で知見を共有し、イノベーション統括を行いうる機能が備わったと考えています。
何故Yume Proが重要か
また、OKIの組織状況を分析した結果、これまで優良大手顧客から指示されたことを忠実にやり遂げることが強みだったことを改めて認識しました。しかしながら、世の中が複雑になる中で、お客様が何をすべきかわからないというケースでは提案が求められるようになりました。これまでのやり方では提案できないため、お客様の向こうにいるエンドユーザーや、エンドユーザーを取り巻く社会環境の変化にアプローチすることが求められるようになりました。
そこで、SDGsに掲げられている社会課題から事業機会を探索し、ビジネスモデル化する能力を身につけることで、提案力を磨いていこうというイノベーション・ビジョンが生まれました。これまでの新規事業担当者から、「どの方向に向かってやればいのかわからない」という声がありましたが、SDGsに掲げられている課題解決を目指すというビジョンによって、方向性も具体的かつ明確になりました。

こうした議論を経て生まれたビジョンなので、何故Yume Proが重要なのかを語るトップの言葉には、非常に説得力があります。
トップマネジメントと一枚岩
チノつぶ第2号でも紹介しましたが、こうしたプロセスを経てYume Proを企画することによって、トップと現場の間に信頼関係が醸成されています。ISO 56002が求めるリーダーシップが発揮されるためには、こうしたプロセスが重要だと感じています。
(2019年9月2日、チーフ・イノベーション・オフィサー(CINO)横田 俊之)