ほぼ週刊 CINOのつぶやき(チノつぶ) 第18号
「価値デザイン社会を実現する」(その2)

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12月10日にチノつぶ第11号で、内閣府の知財戦略本部が立ち上げた「価値デザイン社会実現に資する実質的なオープン・イノベーションの実施に関するタスクフォース」(以下、オープン・イノベーション タスクフォースで「OITF」)についてご紹介しました。2月4日、第3回会合に参加してきました。知財事務局の狙いは、単に報告書をまとめることではなく、社会変革を行うことです。参加している委員からの情報発信も奨励されておりますので、少しでもお役に立てるよう、レポートさせていただきます。
オープン・イノベーションの必要性は認知されているのに何故広まらないのか?
チノつぶ第11号の報告でも紹介しましたが、知財事務局のタスクフォースは、かなりの時間をワークショップ形式で進めます。今回も出席した委員が、6つのグループに分かれて、与えられたテーマについて侃々諤々の議論を行い、その結果を全体会議で報告してさらに意見交換するというスタイルでした。
今回のお題は、「日本でオープン・イノベーションの必要性が理解されているのに、何故、普及しないのか」というテーマ。プレーヤーを「経営者」「本業」「出島(新規事業)」の3つ(OKIに即して言うと経営者、事業部(本業)、Yume Proチーム(出島))に分けて、それぞれが持つべき「マインドセット」「取るべき行動」「取ってはならない行動」「本業から出島へのリソース移転」「知財など社会インフラの課題」というテーマについて検討を行いました。私の参加したチームのテーマは、「取るべき行動、取ってはならない行動」でした。
価値デザイン社会実現のためのオープン・イノベーションを阻むもの
ワークショップは、まず、5分間で各自が「取るべき行動」と「取ってはならない行動」を付箋紙に書き込みます。次に、これを模造紙に貼り付けながらグループ討議を行うという流れになります。この課題は、日々、現場で苦悩しながら取り組んでいる課題なので、自然と手が動きます。Yume Proは、1年弱の取組みでできていることも多いですが、今後取り組まなければならない課題についても改めて気付かされます。
昨年11月に開かれた第1回OITFでも、出島のみのベンチャーと違って、大企業には本業があるので、本業が出島の足を引っ張るという同じ課題があることについて共有されました。たとえば、ベンチャー企業の経営と大企業の経営は全く違います。大企業の経営者がベンチャーを経営する、あるいはベンチャー企業の経営者が大企業を経営するとしたら、どちらもすぐに、すぐに潰れてしまいます。通常経営の感覚で本業部隊が出島に接すると、結果的に足を引っ張ってしまうことがあるわけです。グループ討議でもイノベーションを興そうとする大企業の経営者の取るべき行動として「新規事業が挑戦している業界に一人で行ってみる」ことを挙げていた方もいました。
「エセ正義の味方」撲滅が鍵
特に性質が悪いのが、本業の感覚で「良かれ」と思って出島(新規事業)の足を引っ張る「エセ正義の味方」の存在です。グループ討議では、「強いリエゾンを作る」「じゃま(している人への)Feed Back」など様々なアイデアが出されました。OKIで取り組んでいるイノベーション研修も、解決策の一つと言えます。今年度千人を対象に実施していますが、経営層から率先し、間接部門も含めて展開するという特色があります。研修を終えた社員から、「何で自分が呼ばれたのかわからなかったが、やっていることが『エセ正義の味方』だと気付いた」という声もしばしば聴かれます。地道な努力を通して、社内文化改革を成し遂げ、早く「エセ正義の味方」を撲滅したいと考えています。
(2019年2月12日、チーフ・イノベーション・オフィサー(CINO)横田 俊之)