ほぼ週刊 CINOのつぶやき(チノつぶ)第11号
「価値デザイン社会を実現する」

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知的財産戦略本部がタスクフォースを設置
内閣府の知的財産戦略本部が、「価値デザイン社会実現に資する実質的なオープン・イノベーションの実施に関するタスクフォース」を立ち上げました。(以下、オープン・イノベーション タスクフォースで「OITF」と略させていただきます。)東京大学の渡部 俊也教授が座長を務め、16名の委員の一人として、私も2018年11月29日に行われた第1回目の会合に参加してきました。
知的財産戦略推進事務局とのご縁
今回、OITFに参加させていただくことになったのは、2018年5月31日に行ったOKIイノベーション・ルーム「Yume ST(夢スタ)」のオープニングイベントに、知財事務局の方が参加されたことがキッカケとなりました。
このイベントでは、Yume Coinの共同開発に関する発表の他、私からOKIのイノベーション・マネジメント改革の概要について、プレゼンを行いました。このプレゼンに関心を持っていただき、2018年7月に住田 孝之事務局長がOKIを訪問され、OKIの川崎 秀一会長とイノベーション・チームとの意見交換を行いました。委員として参加要請をいただいたのは、OKIの取り組みが、OITFで目指す課題解決にお役に立つと思われたからではないかと思います。
実は、住田局長と私は長いお付き合いで、経済産業省で一緒に仕事をした仲です。特に、私が担当していた1990年の営業秘密差止請求制度に関する不正競争防止法案を巡る調整については、情報通信産業界からの大反対に遭い、当時、機械情報産業局におられた住田さんに大変助けられました。この辺のいきさつについては、「知財研フォーラム」に回想録を書いていますので、ご関心のある方は、ご覧いただければと思います(※1)。
タスクフォースのイノベーション
ところで、政府の審議会やタスクフォースは、2時間の会合でも、参加した委員の発言は、せいぜい1~2回というスタイルなのが通常です。ところが、OITFでは半分以上の時間をワークショップ形式で進めます。
これを私は「住田局長による政策プロセスのイノベーション」と呼んでいます。せっかく、有識者を集めても、発言機会が5分足らずというのでは、勿体ない、有識者の叡智を絞り出してこき使おうという、画期的なアイデアです。第1回目の会合でも、3グループに分かれて、「OITFでの検討の射程と課題の定義」について、グループディスカッションを行いました。
価値デザイン社会実現のためのオープン・イノベーションを阻むもの
OITFのテーマである価値デザイン社会実現のためのオープン・イノベーションは、OKIが進めているYume Proそのもののように感じます。このため、グループ討議では、昨夏から年末にかけて、社内で行った熱い議論を彷彿とさせました。
2階建ての建物にたとえて、既存事業を1階、新規事業を2階とした時に、大企業とベンチャーとの違いは、ベンチャーは2階だけしかないということです。多くの大企業でイノベーションが進まない理由は、1階が邪魔をするからなのです。
グループ討議では、私は「本業の汚染」と呼んでいるんですという委員もおられました。事業を行う視点も、アイロニカルですが、上場に5~10年かかるベンチャーは長期的なビジョンがあるが、どうしても大企業は短期的な利益の方に引きずられてしまいがちです。
こうした課題に何某かの答を出すのがOITFのミッションです。どの様な貢献ができるかわかりませんが、少なくとも、OITFにおける議論を踏まえて、OKIのイノベーション・マネジメント改革を一歩でもさらに前進させることができればと考えています。
- ※1:知財研フォーラム Vol.103 2015 Autumn 横田俊之「回想 営業秘密と不正競争防止法(その1)」
(2018年12月10日、OKIチーフ・イノベーション・オフィサー(CINO)横田 俊之)