『CINO ism Vol.32』
運用/規定化の両輪で挑むYume Pro(IMS)の全社実装 前編
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今回は、OKIのイノベーション・マネジメントシステム(IMS)「Yume Pro」を全社で実践していくための仕組みづくりに取り組む「IMS構築ワーキンググループ」を取り上げます。
同WGの責任者を務めるイノベーション推進センター(IPC)の前野蔵人センター長、運用/規定化の2つのサブワーキンググループ(SWG)の責任者を兼務するIPC企画室 加藤圭室長の2人と、全社実装の先に目指す姿、具体的な活動や今後の展開について語り合いました。
本格始動に向け4カ月間で試行錯誤しながら準備を遂行
藤原今回は、昨年度公開した『CINO ism Vol.3』でもお伝えした、2022年度末の「IMS Ready」に向けた活動について、同WGを牽引する二人と、語っていきたいと思います。
少し振り返ると、2020年12月に開催した第1回「OKI Innovation World」で、鎌上会長(当時社長)が「2022年度にIMSを全社レベルのマネジメントシステムとして構築・運用していく」「同時に将来のIMS認証規格ISO 56001をいち早く取得できる『IMS Ready』な会社になる」と宣言しました。また、ほぼ同じタイミングで全社に号令がかかり、同月にIPCを中心として全社IMS構築の準備WGが立ち上がりました。
当時は約4カ月間でさまざまな準備や、体制構築が慌ただしく進められましたね。
前野準備WGは、非常に重要かつタイトなスケジュールのミッションを急に与えられた格好でした。メンバーの人選においては、ISO 9001に基づいて全社の品質マネジメントシステム(QMS)を構築した品質保証部門は欠かせないし、新規事業に携わるメンバーも入れなければなど、選出と調整にはとても苦労しました。その頃は「全員参加型イノベーション」に対する認識や理解も部門によって差があったので、どのように組織のコンセンサスを取るかを決めるのも難しく、ずいぶんと試行錯誤しました。
加藤それまでの商品開発は、QMSに則った品質保証のプロセスを用いてウォーターフォール型で進めていくスタイルが大半でした。そんな中、そのスタイルに馴染んできた人たちを巻き込み、イノベーションという新しいマネジメントシステムを全社展開するという話を聞いたとき、「イノベーション・プロセスとはどういう位置付けなのか」をどう共有し、「どうやってQMSのプロセスと繋げていくのか」といったところが、最初はまったくイメージできませんでした。
QMSによる高品質なモノづくりの前段にIMSのコンセプト構築を位置付け
藤原IMSとQMSの連結は、全社IMS規定の具体化に取りかかる前に明確にしておかなければならない重要なテーマでした。
ISO 56002の箇条8で定義されているイノベーション・プロセスでは、機会の特定~コンセプトの創造~コンセプトの検証を回す「コンセプト構築プロセス」から、ソリューションの開発を行う「デザインプロセス」、ソリューションの導入を行う「デリバリプロセス」へと繋がり、最終的に「お客様の価値」を実現する商品が生まれます。
受注開発型の商品は、後半の「デザインプロセス」「デリバリプロセス」にてプロジェクトを推進するため、QMSが適用されてきました。しかし、今後、複雑な社会課題を解決するためには、その前段となる「コンセプト構築プロセス」が必要です。
IMSを全社のマネジメントシステムに組み込むと、この2つのプロセスにはQMSの規定とIMSの規定が併存する形になります。また、受注開発型のプロジェクトでは、起点をデザインプロセスとしてデリバリプロセスへと進む、従来通りの工程も引き続き使われています。
こうした実態を踏まえたうえで、IMSとQMSの関係性を整理し、両者をどう連結させるかを考える必要がありました。
前野OKI社内において、これまで進めてきたQMSに、イノベーション的な観点がまったくなかったわけではありません。ソリューションシステム事業本部(SS事本)では、以前から、QMSの範疇で仮説を立ててお客様に提案し検証するという「コンセプト構築プロセス」に近い仮説検証プロセスを定義し、新商品開発の際などに実践していました。当時、SS事本の本部長であった坪井専務が、「同じような仕組みの国際規格=IMSがあるのなら、絶対にそれに乗るべき」とおっしゃったことも後押しになって、QMSの前段階にIMSの「コンセプト構築プロセス」を位置付ける形で、一連のIMSプロセスを定義することができました。
加藤各ステップを高速かつ、アジャイルに回し、行ったり来たりしながらコンセプトを明確にするIMSに、OKIが強みとしてきたクオリティの高いモノづくりを実現するQMS、両プロセスの繋がりやオーバーラップを定義した上で、「IMSのコンセプト構築プロセスから出たアウトプットを、いかにQMSとIMSのオーバーラップ部分であるデザインプロセスにインプットするかが重要」という問題提起もしました。そして、「この問題をまずは解決する」というコンセンサスを持ってWGの活動を本格的にスタートさせることになりました。
藤原IMSとQMS(ISO 9001)の連結・融合は米国でも高い関心が示されており、おそらく今後はグローバルな場で議論がなされていくと思います。日本を見ても、ISO 9001に沿ってプロジェクトを動かしている企業は非常に多いので、もしもIMSを社内に展開していくとなれば、両者をどう繋げるかという課題に直面します。このことに関して、OKIが日本の製造業の中で先陣を切り、先行事例を提示できたことも、大きな意義があると思っています。
ここまでは、IMSを全社で実践していくための仕組みづくりに関して、その立ち上げや、製造業におけるIMSとQMSの連結の必然性について話してきました。後編では、「IMS Ready」の実現に向け、具体的にどんな活動をしているのか、規程化/運用の両サブワーキングの取り組みについて語っていきたいと思います。
(2022年9月15日、OKI執行役員 CINO兼CTO 藤原 雄彦)





