『CINO ism Vol.3』IMSの全社的導入を推進!
社員一人ひとりが「IMS Ready」な状態へ

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執行役員 イノベーション責任者(CINO)兼技術責任者(CTO)の藤原雄彦です。
Vol.3は、2020年12月に発表したイノベーション・マネジメントシステム(IMS)の全社レベルでの構築・運用について、施策の背景・経緯、現在の取り組み状況、先々の展望をご紹介します。
国際規格を先取りしたIMS「Yume Pro」でイノベーション活動に着手
OKIは2017年10月にイノベーション推進プロジェクトを立ち上げ、国際標準に先んじて、「Yume Pro」と名付けた自社のイノベーション・プロセスを作り活動してきました。
これまでの経緯を振り返りご紹介すると、各部門から集まったプロジェクトメンバー5名は、一般社団法人Japan Innovation Network(JIN)が開催するイノベーション塾で学び、JINのイノベーション加速支援フレームワーク「イノベーションコンパス®:羅針盤」をベースにIMSのコアとなるイノベーション・プロセス「Yume Proプロセス」を2か月間でまとめ上げました。
「Yume Pro」の活用は、2018年度に新設されたイノベーション推進部でスタートしました。具体的には、Yume Proプロセスに則った新規ビジネス開発とともに、社内文化改革(基礎~実践にいたる各種イノベーション研修、鎌上社長と膝詰めで語り合う「イノベーション・ダイアログ」、社内アイデアコンテスト「Yume Proチャレンジ」など)や社内外への積極的なプロモーションを行ってきました。
2020年度にはイノベーション推進部と研究開発センターが統合され、現在のイノベーション推進センターが誕生しました。このとき、Yume Proプロセスを2つの体系――ビジネス創出に主眼を置いた「Yume Proビジネスプロセス」と研究開発向けにカスタマイズした「Yume Proテクノロジープロセス」に分け、イノベーション創出活動をより広範かつ活発なものにしました。社内文化改革やプロモーション活動も、コロナ禍の中でオンラインやリモートをうまく活用して、ほぼ計画を完遂することができました。
業務プロセスにイノベーション活動を取り込み全社・全員へ展開
OKIが目指しているのは、社員がチームOKIとして一丸となり、積極的にイノベーションを実践することです。2020年10月に発表した中期経営計画2022では、「社会の大丈夫をつくっていく。」をキーメッセージに掲げ、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営によって社会課題解決に貢献し、持続的成長を図ることを打ち出しました。すなわち、OKIのイノベーションは、一人の天才が興すものではなく、全員で取り組んでいく、「全員参加型」であるということです。

全員参加型のイノベーションを実現するには、イノベーション活動を業務プロセスに組み入れていく必要があります。そこで、すでに導入しているQMS(品質:国際認証ISO9001)、EMS(環境:国際認証ISO14001)、ISMS(情報セキュリティ:国際認証ISO27001)等々と同じように、IMSを全社的なマネジメントシステムとして取り込むことを決めました。全社レベルで導入するIMSは、数年後に発行――最新の情報では最短で2022年末~2023年に制定される認証規格ISO56001を見据え、規格化に合わせて真っ先に認証取得できるよう、2022年度末までにイノベーション創出の仕組みをOKIグループ全体に実装した「IMS Ready」となることを目標にしました。
こうした取り組みを社外にも発信するため、2020年12月3日に報道発表を行い、同日に開催された「OKI Innovation World 2020」においても鎌上社長がオープニングトークで宣言(※1)しました。
IMS規程・プロセス(活動手順)のゼロ次案をもとに事業部門で試行をスタート
全社的なIMS導入に向けた活動としては、まず2020年12月からイノベーション推進センターと事業部門からメンバーを集めた準備ワーキンググループで、IMSに関する社内規程と、事業部門が具体的に活動するためのプロセス(手順)について検討を重ね、ゼロ次案をまとめました。
実は事業部門では、これまでQMSの規程の中で仮説検証を実施していたのですが、これをIMSとのスムーズな連結を可能とすべく、QMSの前段のプロセス「コンセプト構築プロセス」として位置づけて、検討を行っています。
2021年4月に全社ワーキンググループを始動させ、事業部門側でIMSの試行にも着手しています。今後、試行を重ね、結果を規程やプロセス(手順)にフィードバックして、IMSをブラッシュアップしていきます。
日常業務の改善もイノベーション!だから「全員参加型」
「全員参加型イノベーション」の実現に向けて、ワーキンググループの中では、多様な部門、業務に当てはめることができるイノベーション・プロセスを作り上げていきます。そして、各部門でも試行を繰り返し、よりよいものへと練り上げ、社内の隅々まで浸透させていきます。目標として、2021年~22年の2年間で、全社としてのIMS規程とプロセスの第1版を制定したいと考えています。
これと並行して、新規ビジネスの事業化というイノベーションの具体的な成果をあげていくことも重要です。企業のマネジメントシステムはいわばOSです。IMSをOSの1つにするのですから、良いアプリ=新規事業を早く生み出すことが、優れたOSを動かしているという証明にもなるはずです。

認証取得には「組織への浸透度」も重要なポイントに
国際認証規格を見据えた「IMS Ready」の状態というのは、IMSが社内に浸透し、社員一人ひとりがイノベーションを意識して常に新しいものを生み出していこうと行動している状態だと捉えています。私は、JINでイノベーションを学んだとき、「OKIの技術や商品を押し売りするのではなく、社会課題やお客様の困りごとをどのように解決するのかを徹底的に考えることが重要だ」と強く認識しました。まさにIMSの基本でもある「デザイン思考」のアプローチです。この「デザイン思考」を全社員が理解し実践してほしいと思っていますし、やり方に戸惑っている社員がいたら、サポートやアドバイスを惜しみなく行っていきます。
認証規格ISO56001が発行され、いざ認証を取得しようとした際には、「社内への浸透度」が大きなポイントになると思います。ISO56002の内容から認証取得時の審査を想定してみると、大部分の条項はこれまでのYume Proによる実績で満たせそうですが、IMSが組織に浸透・定着しているかどうかは、今後の取り組みにかかっています。これをクリアするために、まさに社員の全員参加で一人ひとりが「IMS Ready」になる状態にしたいと思っています。
社内もグローバルにもIMSが共通言語になる
全社レベルでのIMS運用がなされれば、IMSは社内の共通言語になります。そしてISO56001が発行され認証を取得した後は、他社とのコミュニケーションをスムーズに行うためのグローバルな共通言語となり、社会課題解決に向けたパートナーとの共創による新規事業の開発もより進めやすくなるでしょう。
加えて、企業価値を測る指標として非財務情報が重視されるようになったいま、「国際標準のイノベーションによって新しいものを持続的に生み出し、社会課題解決に貢献する」ということが、OKIにとって大きなプラスとなり、社員のモチベーションアップにもつながると考えています。
その最初のステップとして、全社レベルのISM構築・運用、全員参加型のイノベーション活動をさらに加速し、2022年度末までの「IMS Ready」を何としてもやり遂げます。
(2021年5月27日、CINO兼CTO 藤原 雄彦)