近年、製造業のインダストリー4.0とスマート工場が注目されています。スマート工場は製造業における価値観を一変させるほど大きなインパクトがあるものです。ここではスマート工場の3つの特徴と、工場をスマート化する3つのポイントをご紹介します。
インダストリー4.0とは、ドイツが政府主導で進めているIoTを活用した製造業振興策のことで、日本では第4次産業革命とも言われています。
そして第4次産業革命は「21世紀のIoTによる製造業の革命」という訳です。すなわち、100年単位で起こる産業の大きな変革の波が訪れようとしているのです。
日本でも経済産業省が2015年8月より、第4次産業革命に対応するための「新産業構造ビジョン」の策定に向けて検討を進めています。この第4次産業革命に対応した工場のことをスマート工場(賢い工場)と言われています。では、スマート工場は今までと何が違うのでしょうか?ここでは3点について解説します。
スマート工場の特徴の一つは、どのような顧客の要求にも応じるカスタマイズ性です。今までの工場では、いくつかのバリエーションはあるものの、標準品の大量生産が当たり前でした。顧客は自分の好みにぴったりの商品を選ぶのではなく、数ある標準品の中から自分の好みに一番近い商品を仕方なく選んで買っていたのです。または、自分の好みにぴったりの商品を買おうとすれば、ある程度の量をコミットする必要がありました。
スマート工場では顧客が望むものを必要な数だけ、たとえばTシャツ1枚、ズボン1本でも注文に応じて自分ぴったりの商品が生産できるようになります。世界のどこにもない自分だけのバイク、車、服、靴などが誰でも手に入れられるようになります。
繊維メーカーのセーレンは、顧客がホームページ上でデザイン・色・柄などを指定して注文すると、自動的に生産を開始し、たとえ1着からでも顧客の注文通りの商品が3週間で手元に届く仕組みを構築しました。
カスタマイズの要求に応えるには、注文生産のため、通常であれば顧客仕様書の受け取りから始まり、部品リストの作成、部品の調達などを経てから製造に入るため、かなりの日数がかかってしまいます。
スマート工場ではこれらの時間を大幅に短縮できます。
顧客はホームページを通じて自分の好みに合わせた商品を「仕様化」し、注文を受けた時点で製造が開始され、必要な部材が自動的にリストアップされて在庫管理システムと連動して製造工程へ進むといった具合です。
大型バイクメーカーのハーレー社の事例では、注文を受けてから製造開始まで、今まで15~20日かかっていたのが、スマート工場になってからは6時間に短縮できました。
顧客の要望に応じた商品をオーダーメードで製造しても、価格は大量生産の製品とさほど変わらないことがスマート工場の価値であると言えます。
つまり誰でも自分の要求通りの商品を、安価な価格で買えるようになります。これは注文から製造、発送までのバリューチェーンを極力自動化するによって、人の介在を最小限に減らすことで可能になります。
このように今までにない革命的なビジネス価値をもたらすスマート工場ですが、それを実現するためにはどのような技術・仕組みを導入しなければいけないのでしょうか?単なる工場のIT化は今までもやってきたはずですが、何がどう変わっていくのでしょうか。ポイントは3つあります。
スマート工場は工場内のさまざまなセンサー、製造装置、制御装置、電力装置などをネットワークで接続し、製造工程の情報をリアルタイムで取得できることが求められます。
また、製造現場からの情報はネットワーク上で共有することができ、部品システム、受発注システムなどが連携して動作する必要があります。さらに、複雑なシステムを人が特別な訓練を受けなくても容易にコントロールできるため、モバイル端末などを駆使し、設備が人と協調して動く仕組みを作ることが求められます。
センサーやIoTで生産現場には大量のデータを収集し、蓄積することが可能になります。これらのデータを活用し、AIで分析することで、今までできなかった生産性向上、品質向上を実現することができます。
不良品の原因分析や作業員の最適配置、生産計画の見直しなど、今まで人間が行ってきた業務はビッグデータとディープラーニングといった技術で瞬時に正確に分析し、結果を自動的にフィードバックすることができるようになります。
スマート工場は工場内の製造装置、生産管理システム、各種センサー、製造実行システム(MES)が統一化されたデータの元に、互いに連携できる必要があります。しかしそれだけでは不十分で、社内のERPや受発注システム、顧客管理システムなどとも連携が取れる必要があります。
さらに部品を調達する下請企業とも統一されたデータでやり取りできるよう、システムを統一する必要があります。こうなるともう、一企業だけの取り組みでできる領域を超えてしまいます。このように複数の企業にまたがって繋がる仕組みを構築することを可能にするため、スマート工場のための標準化の検討が進められようとしています。
これまで説明してきたスマート工場ですが、これらの設備をすべて見直すことになれば、莫大な費用と時間がかかってしまうでしょう。すぐには実現できなくても、長期的にはスマート工場への流れは続いていくものと思われます。千里の道も一歩から。先を見据えつつも、まずはできるところから取り組むのがいいでしょう。
スマート工場では、工場のあらゆる機器からデータをリアルタイムで収集できることが求められます。このデータは工場の稼働状況の見える化に繋がります。まずは今の生産現場をもう一度見直し、工場設備の見える化から始めてはいかがでしょうか?工場の見える化に取り組んだ事例を、以下でご紹介しています。