近年、工場において現場力の低下などに起因とする重要な事故や災害が度々発生しています。今回は、工場での防災対策の例を踏まえて、重大な事故や災害を未然に防ぐための3つのポイントについてお伝えします。
ここ近年において、工場内での重大な事故や災害が発生し、テレビや新聞などの報道を度々目にされていると思います。
2014年の経済産業省の資料によると、最近10年間の重大事故の発生数は、化学工業と石油精製などにおいて、平成23年度までに6件発生しています。なお、ここでいう重大事故とは、死者と重傷者の合計が10名以上、死者と負傷者の合計が30名以上、甚大な被害(被害の総額5億円以上)、著しく社会的影響が大きいと認められる事故などと定義されています。
最近でも以下の表に示すように、化学プロセスの反応暴走などにより、化学工業のプラントにおいて爆発や火災が発生し死亡者を伴う重大な被害が発生しています。
平成23年度までの10年間の重大事故の概要(経済産業省資料より抜粋)
また、上記の事例は、重大事故の事例だけであり、2015年の製造業の労働災害発生件数は年々減少傾向にあるものの、約2万6千人の死傷災害が発生しており、軽微な事故は数多く発生しています。
このような工場内の事故・災害により、人的な被害や施設の被害だけでなく、サプライチェーンにも影響がおよび社会的な問題となる事例もあります。多くの工場では、事故や災害の発生を未然に防ぎ、被害を軽減されるため、さまざまな対策が行われています。
このような事故・災害は発生する要因としては、以下のようなことが考えられます。
1.リスクアセスメントが不十分
事故・災害を想定したリスクアセスメントにおいて、安全装置は故障しない、または安全装置が作動した後には問題は発生しないという前提により、リスクアセスメントが不十分となる傾向にあります。リスクアセスメントを考えるうえで、安全装置を導入するだけなく、あらゆる事態を想定して対策を実施する必要があります。
2.人材の現場力の低下
近年の事故は、現場の対応能力の低下に起因するものが増えてきています。現場の人材の高齢化や、ノウハウの伝承がされないことより、事故に繋がる危険を感知する能力や事故の原因特定や対策を適切に行える人材が不足していることが課題となっています。このような人材の現場力の低下を補うために、ITを活用したシステムを導入することも進んでいます。
3.防災対策の予算が不足
特に中小規模の工場では、そもそも設備投資できる予算が少ないことが課題となりますが、さらにその予算は製造設備の新規導入や更改に優先的に割かれ、安全対策に多くの予算を割けないことが課題となります。限られた予算を有効に活用するための方法としては、費用がかさむ有線の配線工事が不要となる無線を活用することも検討すべきでしょう。
これらの課題に如何に継続的に対策していくかが、事故や災害の被害を最大限軽減するポイントになります。
工場ではさまざまな原因により事故が発生していますが、近年高圧ガスが原因となる事故が多く発生しており、平成28年には362件の事故が発生しています。この事故の8割から9割が、高圧ガスの噴出・漏えいが原因で発生しています。
これらの事故を防ぐためには、ガス漏れが起きた場合にガスを速やかに遮断する緊急遮断装置を備えた設備を導入することや、ガスの噴出・漏えいをいち早く発見して作業員を避難させるために、ガス検知機を設置することが求められます。
広い敷地の工場において、高圧ガスを扱う場所が点在するような場合には、工場内に多数のガス検知機を設置することで、どこでガス漏えいが発生し、どの区画が安全なのかを現場の管理者が把握し、作業員を安全に避難誘導させる必要があります。
このようにガスセンサーを多数設置する場合には、導入の費用が多くかかることが課題になります。各所に設置された多数のガスセンサーを無線を使って繋ぐことで、導入時の配線などのコストを抑えることが可能になります。
また、これらの設備を導入したとしても、事故を未然に防ぐためには日常の点検が不可欠です。毎日の運転において、設備の状況や、圧力や温度の状態、ガス検知器の動作などを常に監視しておくことにより、事故に繋がる異常状態を発見し未然に対処することができるようになります。
2013年に発生した東日本大震災では、地震動と津波の襲来により、高圧ガスの大量漏洩につながる貯槽などの倒壊や転倒、プラント内の危険物などが倒壊した配管から外部に流出することを防ぐ緊急遮断装置の破壊、高圧ガスローリーや容器の流出などにより、大きな被害が発生しました。
「緊急地震速報システム」を導入することで、気象庁から配信される地震速報情報を基に、地震が到達する前にその到達時間・規模を予測し、地震が到達する前に製造装置を緊急停止させたり、自動放送により作業者に安全確保を促すことができます。
このようなシステムを導入する上では、いかに作業者に危険を知らせるかが重要になります。複数の建屋内で作業する作業員に安全確保・避難を促すために、建屋毎や現場毎に放送設備を設置しますが、放送設備の設置・配線には多額の費用が必要となります。
建屋間や現場を繋ぐ通信としては、屋外においても信頼性の高い通信が行える920MHz帯無線を利用することもできます。920MHz帯無線は音声を通信させることはできませんが、建屋毎や現場毎に、複数の放送メッセージを録音した音声再生装置を設置し、無線経由でどの音声を流すかを指定することで、現場管理者が管理棟から各建屋・現場毎に緊急放送を流すことができます。このような仕組みを使うことで導入コストを抑え、工場内の安全対策を行うことができます。
これまでにご説明したとおり、工場での重大な事故や災害は、不十分なリスクマネジメント、人材の現場力の低下、不足する防災対策予算など、さまざまな課題が要因で発生します。さらに、重大な事故や災害は、人的な被害や施設の被害だけでなくサプライチェーンにも影響がおよび社会的な問題につながることもあります。
工場での防災対策は、ここまで実施すれば万全というゴールはありません。発生が想定されるさまざまなリスクを洗い出し、対策を継続的に実施する必要があります。
また、限られた予算で効果のある対策を実施するため、導入コストを極力抑えることや、事故発生時だけでなく、平常時に運用でも活用できる対策を検討することが重要になります。
今後、安全装置の導入だけでなく、IoT活用した防災対策を導入する企業も増えてくると予想されています。敷地の広い工場内でも高信頼で通信でき、配線コストの削減もできる920MHz帯無線機は、たとえば以下の商品があります。工場内の防災対策を検討する場合には、検討してみてはいかがでしょうか。