DX最新情報

総合病院は、なぜIoTを使って温度管理をすることを決めたのか

世界で出荷されているセンサーのうち約半数は温度センサーであり、温度管理にIoTを活用するのが主流になりつつあります。今回は総合病院におけるIoTによる温度管理の現場事例を踏まえて、IoT活用のメリットについてお伝えします。

総合病院の事例から分かる、施設内の温度管理にIoTを活用するメリット

温度管理での活用はIoTのメインストリームの1つになる

今般、さまざまな用途でモノの温度を適切に管理し制御することが求められ、すでに幅広い分野で活用されています。JEITA(電子情報技術産業協会)の「センサ・グローバル状況調査2015」によると、2014年におけるセンサーの世界出荷数量は約251億個で、そのうち温度センサーは実に47%を占めており、膨大な数の温度センサーが世の中で使われているのです。

冷蔵庫イメージ

たとえば、飲食店やスーパーなどでは食中毒の原因となる細菌の繁殖を防ぐため、食材を適切な温度で管理する必要があり、適切な温度管理を怠ると重大な事故につながります。飲食店の冷蔵庫では頻繁に食材の出し入れを行うことにより冷蔵庫内の温度が上昇してしまい、食材が劣化してしまうこともあります。

食材の流通過程の温度管理も同様です。メーカーや問屋が食材を保管しておく冷凍冷蔵倉庫や、食材を運送する冷凍冷蔵トラック内の温度管理も重要となっており、いまや工場から消費者にわたるまでの温度のトレーサビリティ(履歴管理)が求められています。

また製造現場においても、温度管理は品質確保のために非常に重要です。たとえばプラスティック成形に用いられる金型は、温度管理が適切でないと成形材料であるプラスティックペレットが金型内に行き渡らずに成形不良が発生してしまいます。さらに金型の温度は日々変動するため、温度調節器を使用して金型を一定温度に保持しています。

それ以外に私たちの職場環境でも、オフィスやビル内を快適な環境に維持するために行っている温度湿度の制御や、電気代を削減するエネルギーマネジメントの目的でも、温度管理が行われています。

今、こうした温度管理の場面でIoT活用に注目が集まっています。

多種多様な温度センサーが施設に点在している

産業のさまざまな場面で使われている温度管理には、管理するモノや温度によって多種多様な温度センサーが使われています。しかもこれらセンサーは、施設に点在している場合がほとんどです。一般的によく使われている温度センサーには、以下のような種類があります。

1)サーミスター
半導体の温度による電気抵抗変化の特性を利用した温度センサーで、温度の上昇につれ抵抗値が減少するNTCサーミスターが主に用いられています。測定精度が低く、測定できる温度範囲は狭いものの、小型・廉価で衝撃にも強く感度が良いため、常温付近で使用する家電やOA機器、自動車などに広く用いられています。
2)熱電対
異なる素材の2本の金属線を接続すると、温度特性の違いにより電圧(起電力)が発生する原理を利用しています。高精度の温度測定には不向きですが、幅広い温度領域において容易・迅速に温度測定ができ、安価なため、工業用の温度センサーとして最も多く使用されています。
3)測温抵抗体
金属の電気抵抗が、温度変化に対して変化する特性を利用しています。温度特性が良好で経年変化が少ない白金(pt)を用いるものが良く利用されています。高精度の温度測定が可能で、高温の温度測定にも利用できるため、工業用の精密温度測定に利用されています。
4)バイメタル
熱膨張率の異なる2枚の金属板を張り合わせ、温度変化が生じると熱膨張率の違いから金属板の曲がり方が変化する原理を利用した機械式の温度計です。構造が単純で故障が少ないため、工業用の温度計としても利用されています。
5)圧力温度計(熱膨張式温度系)
液体や気体が温度の変化によって膨張・収縮する原理を利用しています。動作に電源を必要としないため安全であり、温度のモニタリングの用途に用いられます。
6)放射温度計
一般的な温度測定が対象物に密着させて使用することに対して、対象物から放射される赤外線の量によって温度を測定します。非接触で使用でき、遠隔測定が可能であるため、接触式の温度センサーでは計測できない超高温の温度測定に利用されています。

このように一口に温度センサーといっても多種多様なセンサーがありますため、用途や利用条件、設置場所によって最適な温度センサーを使い分ける必要があります。

総合病院は、なぜIoTを使って温度管理をすることを決めたのか

温度管理イメージ

総合病院では、これまで薬局職員あるいは依頼された現場担当者が、保管庫に設置されている温度計を定期的に目視で確認し、記録票に手書きで記録するという人手に頼った運用で温度管理をしていました。

この運用では従業員の負担が大きく、突然発生する温度異常には即座に対応ができないという課題がありました。またコンプライアンス強化に伴い、薬品などが適切な温度範囲で保管・管理されているかという温度履歴を残す必要性も出てきました。

これまでは温度管理システムの導入が検討されてきましたが、病院内に点在する多種多様な温度センサーをつなげてデータ収集するためには、有線工事が必要となります。しかし24時間365日稼働している病院では、業務を止めて、配線工事を行えないため、導入が見送られてきました。

施設に点在する多様なセンサーを1つの無線方式で結びつける

これらの課題を解決するために、病院内に点在する多様な温度センサーのデータを、1つの無線方式で収集できるシステムを構築しました。常温の薬品保管棚の温度管理には電池で駆動する無線内蔵の温湿度センサーを設置し、低温の温度測定が必要となる冷凍保管庫には、測温抵抗体を使用した温度センサーを設置するなど、最適なセンサーを配線工事無しで接続することに成功しました。

フロアの横方向をカバーするだけでなく、上下フロア、つまり階をまたいで無線通信を実現するために、無線LANではなく920MHz帯無線を採用しました。これにより1つの無線方式で実現しています。

920MHz帯無線を病院内で全面的に活用することで、入院患者に不便をかけることなくシステムを導入することができました。さらに配線工事にかかるコストが不要となったため、初期投資を抑えられるという副次的なメリットもありました。

病院内イメージ

現在、設置された各温度センサーのデータは全てデータ収集装置を使用して無線経由で収集されており、1分単位に全ての温度データを蓄積しています。薬品が適切な温度で管理させていたかどうか、履歴の管理も可能です。

さらに温度管理や履歴の記録業務についても看護師の負担を大幅に軽減しており、通知機能を付加したことで、たとえば冷凍保管庫の温度があらかじめ設定してある温度範囲を超えた場合には、どの保管庫で温度異常が発生したかどうかを管理者へ即座にメールし、迅速に対処することもできるようになりました。

温度管理にIoTを導入する企業は今後ますます増える

総合病院の事例だけではなく、他の施設でも設置されている温度センサーが多種多様であるうえに、施設内のさまざまな場所に点在している場合がほとんどです。

そのため、これまで温度管理や履歴管理を一元的に扱うシステムを有線工事で構築するのは、業務への妨げになったり初期投資のハードルあるなどで、導入が進んでいませんでした。温度管理にIoTを活用することで以下のメリットを得られます。

  • IoTを活用することで、履歴管理や異常対応を含めて従業員の負担を大幅に減らすことができます。
  • IoTを活用することで、短い間隔で温度状態を可視化できるため、異常が発生した際に迅速に対処したり、温度の傾向を分析したりすることができます。それにより現場における温度管理の課題を発見し、問題の発生を未然に防ぐことも可能になります。
  • 無線ユニットを組み合わせることで、測定点が複数点在する場所でも初期導入コストをおさえて導入が可能になります。

今後、温度管理にIoTを導入する企業はますます増えていくと考えられます。温度管理が容易に行える電池駆動に対応した920MHz帯無線内蔵の温度センサーと920MHz帯無線機は、たとえば以下の商品があります。温度管理が重要な施設では、IoT活用の検討を始めてみてはいかがでしょうか?

OKIのDXの活用・導入に関するご相談は、こちらよりお問い合わせください。
Webからのお問い合わせ: お問い合わせはこちら(別ウィンドウで開きます)
  • 本記事は2016年9月に掲載しました。記事中に記載する数値、固有名詞、市場動向等は掲載日現在のものです。

公的研究費の不正使用および研究活動における不正行為等に係る通報も上記で受け付けます。

Special Contents

      • YouTube

      お問い合わせ

      お問い合わせ