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賞金総額350万円のAIコンテスト 人の視線を可視化するAIが優勝 「尿」や「便」の検出AIは2位

  • AI専門メディア「Ledge.ai」に、2022年1月5日に掲載された記事を転載したものです(写真・文章は一部修正)。
    記事中に記載する数値、固有名詞、市場動向等は掲載日現在のものです。

沖電気工業株式会社(OKI)は2021年12月、「AIエッジ・カンファレンス&ソリューションコンテスト2021」を開催した。

本コンテストは、OKIのAIエッジコンピューター「AE2100」を使い、さまざまな業種における社会課題を解決するためのアイデアや技術を競う。本コンテストの本選には賞金が設定されており、1位に200万円、2位に100万円、3位に50万円が贈られる。メディア露出などの副賞もある。

本コンテストでは、9月に実施した予選を勝ち抜いた9社がプレゼンテーションに加え、会場の展示ブースと中継をつなぎ、実際にソリューションを使ったデモンストレーションを披露した。

この記事では、1位・2位・3位に加え、今回特別に用意したAI(人工知能)関連メディア「Ledge.ai賞」に輝いた、計4社のソリューションの魅力と受賞コメントを紹介したい。

1位:人の視線を可視化するAI コストを10分の1程度に

数ある企業のなかで、1位に輝いたのは株式会社ウサギィによる「人の視線を可視化する『視線シミュレーションAI』」だった。同ソリューションは、アイトラッキングデバイスから集めた大量の視線データを学習したAIで、システムに画像や動画をアップロードするだけで、手軽に人の視線をシミュレーションできる。

これまでわからなかった顧客の目線を可視化することで、経験やセンスに頼らない客観的視点でデザインの検証が可能になる。プレゼンテーションでは、海外のサイネージ広告、スーパーの棚割、化粧品のポップアップディスプレイのデモ動画などが流された。

従来のアイトラッキングデバイスは費用が高額で、長時間の調査時間などが必要という課題があった。同ソリューションは画像や動画をシステムにアップロードするだけで、デバイスを使用した調査の10分の1程度のコストで調査が可能になる、とウサギィは訴えた。


デモンストレーションの様子。本ソリューションは人が映像を見た時に、どの部分に視線がいくのかヒートマップと緑色のボールで表示する。ヒートマップで赤色の部分は人が見る可能性が高い箇所、緑色のボールはヒートマップの中でも1番注目する箇所を示す。実際に社員が映ると、社員の顔の部分が緑色のボールが位置した。

Ledge.aiとして読者に注目してほしいのは、本ソリューションがチラシや野外看板などのマーケティング分野のほか、交通分野で街中の標識や表示が認識しやすいデザインや位置になっているか検討したり、金融分野でATM周りの詐欺への注意喚起の掲示位置が認識しやすいか検証したり、さまざまな分野で活用できることである。

AIという最新テクノロジーを活用することで、現在のアイトラッキングデバイスが抱える課題を回避しているだけではなく、アイトラッキング調査をさまざま分野でより身近な存在する可能性を秘めており、優勝に輝くのも納得のソリューションだと言えるだろう。

OKI 坪井によるコメント

「アイトラッキングというデータの中からモデルを作って、それをエッジAIで推論することで、シミュレーションができるのは『そういう使い方があるのか』という思いがしました。非常に実用レベルも高いと思います。プレゼンを聞くと、ウサギィ様は非常に多くの技術をお持ちなので、今後のご発展も含めてぜひ頑張っていただければと思っています」

受賞コメント:ウサギィ

「この度はこのような賞をいただき、うれしさと緊張で吐きそうです(会場からは笑い)。この会場にいらっしゃる方々はものづくりをされている方が多いと思いますが、われわれもプログラムではありますが、ものを作っています。最近は『自分たちが作っているものはこれで良いのか』という悩みにぶつかることも多くて、社員とも何度もぶつかってきました。賞をいただいて、評価していただいことで、気持ちが少し落ち着きました。これから気持ちを新たに製品開発を進めていきたいと思います」

2位:AIで「尿」や「便」を検出 生ゴミにまみれて開発した

2位は東海エレクトロニクス株式会社による「"におい"の見える化による予防保全・見守り」が輝いた。同ソリューションは医療分野や介護分野において、オムツのにおいの持続時間・湿度をAIで判定し、「尿」や「便」を検出、判別できる。排せつのリズムをAIで解析することで、排泄前にトイレにエスコートも可能だ。

プレゼンテーションでは、現状ではオムツの不快感で立ち上がる際に転倒事故が起きたり、長時間放置することで肌荒れが起きたりといった問題があると語った。社員によると、時には生ゴミにまみれたり、社用車に香水をまき散らしたりして同ソリューションの検証を重ねてきたという。本コンテストでは、少子高齢社会における大きな社会問題の解決に向けた努力が報われた形だ。

デモンストレーションではデオドラントシートを入れた空気をセンサーに吹きかけると、モニターにすぐに「異常」と表示された。センサーでは匂いレベルのほか、CO2、温度、湿度、大気圧もわかる。

Ledge.aiとして読者に注目してほしいのは、プレゼンテーションで紹介した介護施設での評価結果の一部では、湿度が上がり匂いレベルがアップしたことで尿と判別したり、湿度が上がり匂いレベルが持続したことで便と判別したり、介護記録との照合で合致していることだ。

東海エレクトロニクスは本ソリューションにより、「快適なおむつ生活」「ベッド離床時の転倒事故防止」「排せつ後放置による肌荒れ防止」「適時サービスで余裕が生まれる」という利点があるとしており、ますます実現への期待が高まる。

OKI 坪井によるコメント

「匂いに着目したことと、介護というリアリティのある現場での取り組みが皆さまの高評価につながったのだと思います。実用化に向けて、どんどん取り組んでいただければと思います。事前情報ですと、東海エレクトロニクス様の社長からかなりプレッシャーを受けていたようなので、受賞して良かったですね(笑)」

受賞コメント:東海エレクトロニクス

「社長に『とにかく、このプレゼンは自分の思いを伝えろ』と言われ、私もその言葉を聞いて吹っ切れたように、プレゼンではこれまでの取り組みをお話ししました。皆さまにご理解いただけて、今後より一層今回のソリューションを発展させていって、介護社会にもっと明るい話題を提供できたらと考えています」

3位:カメラで最大12個のメーターを同時に点検

第3位は株式会社メトロが手がけた『複数アナログメーター一括データ化によるAI異常予測』が輝いた。

日本全国に設置されている制御盤に付いたアナログメーターは人が目視で確認しているという。現状では出張費や人件費のほか、熟練者の知見なども不可欠という課題がある。本ソリューションはカメラでメーターを撮影し、AE2100でメーター値を読み込み/可視化できる。設備を止めずに導入でき、最大12個のメーターを同時に点検可能だ。

デモンストレーションでは正常データを学習データとして、異常データをあぶり出す様子をアピールした。

Ledge.aiとして読者に注目してほしいのは、アナログメーターと言うとあまり身近に感じづらいかもしれないが、制御盤のアナログメーターの点検は現代社会に必要不可欠であることだ。本ソリューションはアナログメーターのほか、さまざまな機器での活用も考えられる。社会課題の解決につながる可能性があるソリューションだと言えるだろう。

OKI 坪井によるコメント

「DXの手法の中でも、(長期間稼働している古いIT資産を最新技術に置き換えることを意味する)『ITモダナイゼーション』という考え方があります。ある部分を変えることで、全体のDXが進むという意味では、アナログメーターも『ITモダナイゼーション』と言えるのではないか。そういった意味も含めて、本ソリューションは現実的にすごく効果があるのではないかと思います」

受賞コメント:メトロ

「ソフトウェアのメトロとAE2100が出会うことで、1つのハードのソリューションとしてお客様に届けられるものができたと思っています。これをきっかけに、また精進したいと思います」

Ledge.ai賞:製造現場の課題・問題を解決できる開発環境

Ledge.ai賞は株式会社ソルティスターによる『エッジコンピューティング向けアプリケーションプラットホーム&組込み用ハイブリッドデータベース』に贈った。同ソリューションは、AE2100を最大限に活用するエッジコンピューティング&開発環境「SpeeDBee HIVE」だ。

SpeeDBee HIVEはLinux/Windows環境下で稼働する。多種多様なデータを取り込み、分析・制御・可視化を実現する。たとえば、センサー値の濃度判定(閾値)からバルブの開閉を制御することで、給水量を削減するなど、製造現場における課題・問題を解決できる。デモンストレーションではAI連携で画像から文字認識し、エラーデータを判定する様子などをアピールした。

Ledge.aiとして読者に注目してほしいのは、照度が2000lux以下だとLED照明を点灯させ、2000lux以上だと消灯させるプレゼンテーションの実装がプログラミングせずにSpeeDBee HIVEのコレクター機能とトリガー機能だけで実現していることだ。

近年、ノーコードは注目度が高まっていると言えるが、本ソリューションはデータを活用にあたり、ノーコードの部分はノーコード、コードが必要な部分はコードを用いるという適材適所を実現しており、極めて今日性を感じさせるソリューションだと言える。

株式会社レッジ 代表取締役社長 小瀧 健太によるコメント

「今後、どのようにAIやデータが流通したり、さまざま人が触れるようになったりするかというところに着目して選定させていただきました。ソルティスター様のソリューションはいろんなインターフェイスに対応したり、UIで操作できるようにしたり、いろんな人が触れるという思想を強く感じました。引き続き、いろんな機能をアップデートして、いろんな人が簡単にAIやデータに触れるようにしていただければと期待しています」

受賞コメント:ソルティスター

「賞をいただいて、ありがとうございます。正直、賞をいただくことは想定してなかったので、プレゼンテーションが終わった後の段取りを何も考えておらず、今日この場でしゃべるようなことも考えていませんでした。すごく驚きでいっぱいです。弊社は拠点が沖縄、長野、東京と各地で離れているのですが、みんなが協力してくれたので、みんなで勝ち取った賞だと思います」

9月の予選の段階からすでに注目を浴び、中でも評価が高かった4社が入選を果たした「AIエッジ・カンファレンス&ソリューションコンテスト2021」。Ledge.aiでは引き続き、入選企業のインタビュー取材などで、本コンテストやAE2100について紹介予定である。

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