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CINO ism

Oct. 31, 2023

『CINO ism Vol.50』
実践モードを突き進む全員参加型イノベーション
―OKIの物流ビジネス―

OKI藤原執行役員 イノベーション責任者兼イノベーション事業開発担当(左)、イノベーション事業開発センター ビジネス開発部 伊藤部長(右)、同 物流・地域DXチーム 吉原TM(中央)の写真
OKI藤原執行役員 イノベーション責任者兼イノベーション事業開発担当(中央)
イノベーション事業開発センター ビジネス開発部 伊藤部長(左)、同 物流・地域DXチーム 吉原TM(右)

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OKIは2023年5月に発表した「中期経営計画2025」で、将来に向けた新規事業領域の1つとして「物流」を設定しました。「2024年問題」など深刻な課題を多く抱える物流分野に、OKIはなぜ取り組むのか、そしてどのような強みを発揮していくことができるのか、イノベーション事業開発センター ビジネス開発部 伊藤部長、物流・地域DXチームの吉原チームマネージャーと語りました。

オープンイノベーションから始まった物流領域への挑戦

藤原今回は、イノベーション活動の“実践”として新規領域としてフォーカスされた「物流」領域について、OKIならではの強みや可能性を、伊藤さん、吉原さんとお話ししていきたいと思います。
OKIの物流の取り組みは、2018年にイノベーション推進部が本格的にスタートした時に、従来のOKIがアプローチしていない領域として検討したことが始まりです。その後、オープンイノベーションサイトで物流領域での共想パートナーの募集をかけたことにより、株式会社ロンコ・ジャパン様との共創に至りました。その際、OKIのイノベーション・マネジメントシステム“Yume Pro”について積極的に世の中に発信し続けたことから、以前のOKIでは出会えなかった企業とのご縁に発展していったのだと思います。このように課題と仮説をオープンにして共創相手に巡り合うことは、従来のOKIにはない仕事のやり方でした。こうした挑戦について、伊藤さんはどう考えていますか?

伊藤同じ課題を持っている企業、仮説に賛同してくれる企業を見つけるために、オープンな場で情報発信をすることは、非常に重要な取り組みだと思っています。特に新規領域の場合は既存の顧客網だけでは進めることができませんから、自社の仮説を発信して、世の中の反応を見ることが必要だと感じていました。

藤原吉原さんは、かつて営業・マーケティングを経験されていますが、どう考えますか?

吉原製造業全体として、お客様から求められたことに応える「御用聞き営業」から、お客様の潜在的なニーズを探っていく営業スタイルに変わってきていることを考えると、オープンイノベーションの手法でOKIの仮説と強みを伝えていくことは、これからの時代に合致した活動だと思います。

藤原まさに、潜在的な課題を掘り起こしていかなければならない現代において、情報を広く発信して気付いていただき、一緒に考えていくパートナーを見つけなければ、課金ニーズには近づいていかない。そしてOKIの物流部隊は現場に何度も足を運び、アジャイルプロセスで株式会社ロンコ・ジャパン様(以下、ロンコ・ジャパン)との共創を進めていきました。そして中期経営計画2025で、将来事業創出の1領域として「物流」を設定しました。物流領域の市場は非常に大きく、概算で輸配送では4~5兆円、倉庫で3兆円、合計8兆円を超える市場規模が2031年に向けて拡大するという試算です。そこにOKIの強みをしっかりと投入し、展開していくことが大切だと考えています。

伊藤部長の写真
伊藤部長

物流の2024年問題をはじめ、複雑な課題解決にOKIの強みで挑む

藤原物流業界ではかねてからのドライバー不足の深刻化に加えて、トラック積載率の低下、燃料費高騰、そして規制強化による労働時間の減少を抱える「2024年問題」など、様々な課題が入り組んでいます。非常に難しいチャレンジにはなりますが、「社会の大丈夫をつくっていく。」を掲げるOKIこそが取り組むべき領域です。ここで中期経営計画2025策定に携わった伊藤さんに聞きたいのですが、物流領域でのOKIの可能性をどう考えていますか?

伊藤物流業界の「2024年問題」、そして団塊世代が75歳を超える「2025年問題」、脱炭素の課題など、まさに待ったなしの状況であることは、様々な報道でなされている通りです。その中でOKIがこれまで培ってきた車両プローブ情報、ETCをはじめとした交通分野でのデータ、あるいはそれらを分析する量子コンピューターを応用した技術、AIによる最適化技術を活用し、環境配慮型のルート効率化システムを提供できると考えています。

藤原まさにOKIの強みを結集した、OKIだからこそできることですね。OKIは輸配送と倉庫の効率化にアプローチしようとしていますが、一方で当該領域は現状まだまだDXが進んでいないという課題もあります。吉原さん、そこにどうやって挑んでいくのでしょうか。

吉原物流に限らず様々な業界で、従来の業務プロセスを踏襲し続けてしまう傾向があります。物流業界では輸配送ひとつとっても、未だに配送計画は属人的に行われています。ここ数年やっと、その課題に気付いた企業がクラウド型の配送計画サービスを提供しているため、認知は少しずつ広がっているのだと思います。
その中でOKIの強みとしては、製造業のレイアウトに関して作業動線を考慮した装置の配置を最適化する技術などで実績をつくってきたことです。その技術を配送計画に取り入れることで、通常の配送ルート効率化のみならず、現在40%にまで落ち込んでいるといわれているトラックの積載率の効率化にも寄与することができます。

藤原なぜ、積載率がこれほど落ちているのでしょうか。

吉原物流業界では、サービスの多様化や輸送コスト低減などにより中小企業が年々増加してきました。現在は、人手不足などもあり減少傾向が続き6.2万社を超えるくらいですが、物流企業が多いと荷物が分散されてしまい積載率は自ずと下がってしまいます。これを全体でもっと効率化できれば、配送距離や労働時間も効率化できるはずです。これは脱炭素やコスト問題にも寄与できるソリューションだと思います。現在はロンコ・ジャパン様と提携してサービスを稼働していますが、この価値を他の物流企業とどう連携させていくのかが、今後のポイントになります。

藤原輸配送のところだけではなく、OKIでは倉庫領域にも注目していますね。

吉原はい。モノを運ぶには、それを仮置き・仕分けするための倉庫が不可欠です。今回、倉庫についての課題をヒアリングしていくと、モノをどこに置いたのかを管理するシステムはあるものの、実はオペレーションミスが重なり、探す時間に労力を取られたり、最悪の場合は紛失してしまうといった問題が起こっていました。そうなると指定の納期に出荷できないため、サービス品質が落ち、損失にもつながってしまいます。
OKIはセンシング技術に強みがありますから、RFIDタグやQRコードなどを活用すれば、自動追跡が可能です。OKIの特許技術を組み合わせながら倉庫システムの課題を解決するべく、今まさにコンセプトをブラッシュアップしているところです。これがうまくいけば、輸配送と倉庫という物流の基本的なところに参入できるため、ティーチャーカスタマー数社と共創しながら、OKIの価値を提供できるようにしていきたいと考えています。

藤原ティーチャーカスタマーの存在は非常に重要です。従来の日本型製造業のように、製品を作りこんでから世に出すというのではなく、最初からお客様の現場に入り込んで課題を一緒に解決しながらソリューションを組み上げ、それを他にも展開していく、まさにイノベーションのプロセスで進めていくのですね。特に物流領域は、こうした進め方が大切だと私は考えます。物流業界は大きな視点ではフィジカルインターネットのような形で、最終的にはグローバルで効率化するプラットフォームが検討されていますが、一足飛びにそこに到達するわけではありません。まずは現場をとにかくつないで実績を上げていくことが必要です。ロンコ・ジャパン様という良いティーチャーカスタマーに巡り合えて、色々と教えてもらいながら、OKIの技術を発揮していくことができるはずです。

吉原TMの写真
吉原TM

ロンコ・ジャパンとの共創で生まれたAI配送計画最適化サービス「LocoMoses(TM)」

藤原先ほど吉原さんの話で、配送ルートの効率化と積載率の効率化の掛け算という話がありました。それが、OKIが2023年3月にリリースしたAIによる配送計画最適化サービス「LocoMoses(TM)」開発の突破口になったのだと思います。この発想はどこから生まれたのですか?

吉原これはまさに、オープンイノベーションプラットフォームでのロンコ・ジャパン様との出会いが契機です。実際に物流事業を展開しているロンコ・ジャパン様の話を伺う中で、配送計画と積載率の課題があることを知りました。今、世の中では共同配送や中継輸送という形で他の企業と連携していく動きが広がっています。しかし企業間連携は難易度が高いです。そこで、単独で積載率の向上を図っていこうとしたときに、ロンコ・ジャパン様は「分割配送(※1)」という手法を生み出しました。これをOKIのAI技術によりさらに積載率を高めて効率的な配送をすべく、実証実験を重ねることで、最終的には8%、分割配送を取り入れていない場合なら最大20%近くも効率化できるという結果が出ました。そして2022年10月時点では、トラック15台で50店舗の支線輸送なら年間約700万円の燃料費と有料道路代が削減できたのです。これは単純にコスト削減のみならず、脱炭素化としても大きなインパクトを与えるものだと思います。

藤原DXだけにとどまらず、GXも含めたアプローチができるということで、非常に価値があるソリューションですから、OKIとしてもぜひ拡大していきたいですね。ここでまた伊藤さんに聞きたいのですが、OKIの強みを実現するために、どのような体制で進めているのでしょうか。

伊藤イノベーション事業開発センターでは、お客様から聞いた課題における提供価値の仮説検証を何度も繰り返し、解決するための要件定義を固めながら、ビジネス性を検討していきます。その際、ビジネス開発部とソリューション開発部が連携することにより、よりスムーズにシステムの品質も含めてソリューションを構築していきます。また、その際に必要な新たなOKIの強み技術については、研究および先行開発を進めている技術本部の力が不可欠です。この技術をソリューション開発部が活用しながら、提供価値を最大化するソリューションに仕上げていくというフォーメーションで、「LocoMoses(TM)」をトリガーに物流ビジネスを拡大していきます。

なぜ、OKIが物流に乗り出すのか。外部と共創したからこそ引き寄せた好機

藤原これから市場の拡大に伴い、良いティーチャーカスタマーを見つけて、きちんとした商品を納めていくためにどのようなシナリオで拡大しようとしているのですか?

伊藤2031年度に向けて、物流事業がどのように拡大していくのか、どの領域が伸びていくのか、事業シナリオとして描いています。入口としては支線輸送における分割配送、あるいは倉庫ソリューションも一部入っています。次のステップとしては共同配送や幹線輸送、さらに最終的にはサプライチェーン全体の統合化を目指します。輸配送のデータや倉庫のデータを統合し、物流全体の最適化へと拡げていきます。そこで重要になるのはデータです。エッジデバイスから得られるデータをどのように横串で、物流全体で活用して効率化を図るのか、エッジプラットフォーム構想を具現化しながら先進的な共創パートナーと共に段階的に事業を育てていきます。

藤原OKIがこれまで培ったエッジの技術から生み出される多様なデータをつなぐ「エッジプラットフォーム」は中期経営計画2025でも言及していますが、これを物流でも実現しようとしています。積載という作業、輸配送という作業、これら2つの作業価値を掛け合わせたソリューション、こういった複数の価値を創出するのがエッジプラットフォームです。さらには今後、倉庫のデータも連携していこうとしています。支線の現場から入っていき、少しずつお客様のお困りごとを解決する中で幹線に入り、最後はプラットフォームにつなげていくということだと思うのですが、先ほど吉原さんも話していたように、物流業者は中小企業が多く6万社を超えます。様々な企業が入り組んでいる中で、どう拡大していくのでしょうか。

吉原実は、私が一番頭を悩ませたところです。ロンコ・ジャパン様をはじめティーチャーカスタマーから課題を見つけ、解決手段はできつつあります。次にそれを広げていくために、システムインテグレーション(SI)ができる販社パートナーを探していました。しかし、SI会社は各エリアに属しているため、販売体制を構築するには非常に時間がかかるという壁にぶつかってしまったのです。
そんな時に、とある商社の方に出会いました。話を聞くと、顧客開拓やSIなど、サービスを提供するための一連の体制構築を、すべて商社がコントロールしているということでした。それを聞いた時に、「これだ」と思ったのです。これまではSI会社をパートナーにすることを考えていましたが、商社を間に入れることで全体の仕組みを効率よく構築することができるのです。そこでたまたま、倉庫や物流に対して商材を提供している商社と出会い、まさに今検討を進めているところです。それができれば、シナリオに沿った展開ができると考えています。
また、物流業界には長らく荷主側でのトラックの待機時間が問題となっていましたが、2024年、ようやくこの問題にメスが入ります。荷主に対して「荷待ち」の時間削減に取り組むことが義務化されるようになったのです。そこでOKIの強みであるプローブ情報を活用して、待機問題を可視化し、全体の最適化ができるようになると考えています。ようやく、私たちの強みが活かせるタイミングが近づいてきました。これから輸配送、倉庫ともにしっかりと参入しながら、しかるべきタイミングでプローブ情報を活用したOKIの強みを一気に拡大させていきたいです。

藤原「たまたま出会った」という言葉を吉原さんは使っていましたが、これは外部の色々な企業とつながり、継続的に情報発信していたからこそ、引き寄せた出会いですよね。この「たまたま」が本当に大事だと思います。物流市場は大きく動いていて、まだレッドオーシャンにはなっていません。こうした中で、どんなプレーヤーがいるのかもまだ私たちは把握できていませんから、常に課題を外部に発信しながら、「たまたま」を見つけていく行動が大切なのだと思います。そういったところから待機問題が深刻な課題であることや、法令改正によりチャンスが近づいてきたことが、数珠つなぎで見えてきたのではないでしょうか。

高度遠隔運用など、他の将来領域とも連携。グローバルも同時並行で推進

藤原最後に、物流ビジネスのさらなる展開について2人にお聞きします。大きなチャンスのある市場とはいえ、複雑なシステム、複雑なソリューションを進めていく必要があります。そこには、強い想いが必要です。伊藤さん、吉原さん、物流領域についてどのような想いをもっているのか、グローバル視点も含めてぜひ聞かせてください。

伊藤OKIは、車両やモノ、人の位置情報などのデータをエッジからネットワークを通じて吸い上げる仕組みづくりが得意です。これらのデータを活用してクラウド連携型の配送ルートの最適化アルゴリズムを提供することで、各種サービスとの連携を実現し、ビジネス拡大していきたいと考えています。そこでは、物流以外の領域でも利用を展開していきたいです。また、今後の労働力不足により、自動運転やロボットの利用が進む中、たとえば、高度遠隔運用プラットフォーム(REMOWAY)とAI配送ルートや倉庫の荷物位置管理の仕組みを掛け合わせて、24時間止まらない物流や、サプライチェーン全体の最適化を実現していく、そんな未来を目指していきたいです。
この話は国内だけではなく、グローバルにも展開できるものです。今年度に新設されたグローバル事業推進本部や海外販社と連携して、海外市場のリサーチを始めています。従来の国内のモデルを開発してから海外に展開するということではなく、始めから海外も視野に入れて、それぞれの状況に応じた事業拡大を見据えて活動していきます。

吉原私が注目しているのは、あらゆるモノの流れです。色んな場面で人やモノの流れがあります。それをトレーサビリティする仕組みは、まさにOKIのセンシングの強みとも融合していきます。これから物流で広げていこうとしている強みは、あらゆる業界で応用できると考えています。そうすれば、OKIの既存事業である製造や流通、金融などでも使ってもらえるような商品になると考えています。
一方でグローバルでは、先進国・発展途上国双方で可能性があると思います。海外販社へヒアリングをしても、「たとえ4~5%であっても、効率化が図れることは衝撃的だ」という声をいただいています。分割配送については日本でサービスインしており、それを海外展開していくというステップを踏んでいますが、倉庫はまさに国内・海外で並行して進めていこうとしています。市場規模は圧倒的にグローバルの方が大きいですから、事業の加速性も出せると考えています。

藤原データ連携ができる世の中において、物流はすべての分野の基盤となるような領域です。製造、流通、金融、防災、これまでOKIが携わってきた分野で培った価値を、すべて強みとして発揮できる領域だと考えています。何より、2031年に向けて市場が非常に大きくなる分野ですから、OKIが物流領域に取り組まない理由はありません。これは確実に海外でも広がっていくはずです。お二人をはじめ強い意志を持つ仲間と共にぜひ前進していきたいと思います。

藤原CINOの写真
藤原CINO

※1 分割配送:ひとつの配送先拠点に対して複数台の車両で荷物を届ける配送方法。車両の空いたスペースを活用しやすく積載率向上など生産性の高い配送が可能となる。(詳細は、こちら

(2023年10月31日、OKI執行役員 CINO兼イノベーション事業開発担当 藤原 雄彦)

本記事およびOKIの「Yume Pro」については、こちらよりお問い合わせください。

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