COLUMN
AIを活用したビジネス創出の壁とは?OKIが示すAIガバナンス実践ガイド
生成AIをはじめとするAI(人工知能)は、業務効率や創造性の向上を支える革新的な技術として注目を集め、「AX(AIトランスフォーメーション)」という言葉も登場しています。しかしその一方で、企業は倫理、法規制、セキュリティなど、AI特有の新たな課題にも直面しています。
これらの課題を克服し、生成AIなどAI技術の恩恵を最大限に享受するためには、AIガバナンスの確立が不可欠です。そこで本記事では、AI技術のビジネス活用における主要な課題と、OKIが培ってきた知見に基づく解決策を解説、AIガバナンスの重要性を理解し、実践的な戦略を立てるための羅針盤となる情報を提供します。
生成AIを含むAI技術のビジネス活用に課題を感じている方、必読の内容です。
目次
そもそもAI(人工知能)とは?
AI(人工知能)とは、人間の知的活動の一部をコンピューターに代替・支援させるための技術の総称です。たとえば「ルールに従って判断を下す」「画像や音声などを認識する」「データからパターンを見出して予測を行う」といった能力をコンピューターに持たせる取り組みは、すでに多くの分野で実用化されています。
特に近年のAIの進化を加速させた技術として注目されているのが、「ディープラーニング(深層学習)」です。これは大量のデータをもとにAIが自ら特徴を学習する手法であり、顔認証や物体検出などの画像認識、音声認識、自然言語処理といった高度な処理の精度向上に大きく貢献しています。すでに製造業における不良品検知、金融分野での不正検出、医療分野での画像診断支援など、実社会のさまざまな場面でAIは活用されています。
こうした入力や分析を行うAIに対し、近年急速に注目を集めているのが「生成AI(ジェネレーティブAI)」です。生成AIは、学習したデータをもとに新しいテキストや画像などを自律的に生成することができる、いわば“創造するAI”です。その応用範囲はビジネスや創作活動など多岐にわたり、新たな価値を生み出す力として期待が高まっています。
次章では、この生成AIがどのような技術なのか、そしてビジネスにおける可能性とリスクについて詳しく見ていきます。
生成AIとは?ビジネスにおける可能性とリスク
生成AIとは、データから学習し、テキスト、画像、音声、動画など、多様なコンテンツを自律的に生成するAI技術です。マーケティング、開発、顧客対応などビジネスのさまざまな領域で、生産性向上、創造性と顧客体験の向上といった価値を生み出す可能性を秘めており、活用への期待が高まり続けています。
一方で生成AIには、セキュリティや著作権に関する懸念に加え、「ハルシネーション」と呼ばれる事実に基づかない情報を生成してしまうリスクも存在します。
生成AIなどAI技術の活用における主な課題と対応策
それでは生成AIなどAI技術の企業活用における代表的な3つの課題と、その対応策を見ていきましょう。
課題①:倫理・法的・セキュリティリスク
生成AIの活用は倫理、法的、セキュリティなど、さまざまなリスクを伴います。これらのリスクを適切に管理し、AIの信頼性を高めることが重要です。
- 倫理的なリスク: バイアスや偏見の増幅、プライバシー侵害、差別的なコンテンツの生成など
- 法的なリスク: 著作権や知的財産権の侵害、データ保護規制違反、説明責任の欠如など
- セキュリティリスク: 悪意のある利用、データの不正利用、システムへの攻撃など
対応策①:AIガバナンス体制の構築とリスク評価
これらのリスクを適切に管理するためには、AIガバナンス体制の構築と、AI導入・運用におけるリスク評価が不可欠です。
- ガバナンス体制構築: AI活用に関する方針、ルール、責任体制を明文化します。たとえば倫理指針の策定、意思決定プロセスの明確化、責任者の任命といった施策が含まれます。
- リスク評価: AI導入・運用におけるリスクを洗い出し、影響度と発生可能性を評価します。具体的には、AI活用による倫理的なリスク、法的リスク、セキュリティリスクなどを評価し、それらのリスクを軽減するための対策を検討します。
課題②:AI活用を支える環境構築
企業が生成AIをビジネスに活用するためには、AIモデルの開発・運用を効率的に行うための環境構築が重要です。具体的には、AIモデルの開発に必要なハードウェア(クラウドプラットフォーム)、ソフトウェア、データセット、開発ツールなどを提供する開発環境と、開発されたAIモデルを実際のビジネスプロセスに組み込み、安定的に運用するための運用環境を適切に構築する必要があります。
対応策②:安全で効率的なAI開発・運用環境の構築
AI開発・運用環境の構築においては、以下の点を考慮することが重要です。
- セキュリティ: AIモデルやデータを保護するためのセキュリティ対策を講じる
- スケーラビリティ: データ量の増加や利用者の増加に対応できる拡張性を確保する
- 柔軟性: さまざまなAIモデルや開発ツールに対応できる柔軟性を確保する
- 効率性: AI開発・運用プロセスを効率化するためのツールや仕組みを導入する
課題③:ハルシネーションと情報の信頼性
生成AIは学習データに基づいて新たなコンテンツを生成しますが、その過程で、事実に基づかない情報をあたかも事実であるかのように生成する「ハルシネーション」と呼ばれる現象を起こすことがあります。
ハルシネーションは、ビジネス利用において誤情報の拡散、顧客への誤った情報提供、企業の信頼性低下など、さまざまなリスクをもたらします。
対応策③:RAG(Retrieval Augmented Generation)による精度向上
RAG(Retrieval Augmented Generation)は、生成AIが特定の知識ソースを参照することで、ハルシネーションを抑制し、生成する情報の精度を高める技術です。RAGは、生成AIが質問応答や文章生成を行う際に、まず、関連する情報を特定(たとえば企業内)のデータベースや文書から検索し、その情報を基に回答や文章を生成します。これにより、生成AIはより正確かつ最新情報に基づいたアウトプットを生成することができます。
RAGは、生成AIの精度向上だけでなく、透明性向上にも貢献します。RAGを活用することで、どのような情報に基づいてアウトプットを生成したのかを追跡することが可能になり、生成AIの説明責任を高めることができます。
なぜ今、AIガバナンスが求められるのか
今まで述べてきたように、生成AIなどAI技術の急速な進化と普及に伴い、その活用における倫理、法的、セキュリティ上のリスクが顕在化してきました。これらのリスクを放置すると企業としての信頼を損なうだけでなく、法的責任を問われる可能性もあります。
こうしたリスクに対応するためには、企業がAIの利用方針・責任体制・リスク管理を包括的に定める「AIガバナンス」の整備が欠かせません。
企業は信頼性のあるAI活用を実現するために、このガバナンス体制を早期に構築・管理する必要があります。
では実際にAIガバナンスを先進的取り入れているOKIの取り組みをご紹介します。
長年にわたりAI技術の開発・運用を続けてきたOKIは、その実績と姿勢から多くの示唆を提供しています。
OKIの先見性と先進的なAIガバナンスへの取り組み
1960年代からのAI技術開発:社会の「大丈夫」を支える
OKIは1960年代からAI技術の研究開発に着手し、半世紀以上にわたり、社会の「大丈夫」を支えるAI技術の開発と製品提供を行ってきました。初期の文字認識技術の開発から、現在の高度な生成AI技術の研究まで、常にAI技術の最前線を走り続けています。
OKIの長い歴史の中で、さまざまなAI技術を開発し、社会のさまざまな分野に貢献してきました。たとえば、OKIの生体認証技術は、金融機関のATMや空港の入国審査などで活用され、安全で便利な社会の実現に貢献しています。また、OKIの画像認識技術は、製造業における不良品検知や、医療分野における画像診断支援などに活用され、生産性向上や品質向上に貢献しています。
国内最大規模のAI学会への支援で業界に貢献
OKIはAIに関する学会として国内最大規模となる人工知能学会の全国大会(JSAI2025)のプラチナスポンサーとして支援し、多くの発表と展示を行っています。AI技術の発展に貢献するOKIの姿勢は、業界からの信頼につながっています。
OKIは研究者との交流などを通してAI技術の発展に貢献するとともに、最新のAI動向を把握し、自社の技術開発に活かしています。
2018年度「OKIグループAI原則」策定:早期からのAIガバナンス
OKIはAIガバナンスの重要性を早くから認識し、積極的に取り組んできた企業の一つです。
2018年度には業界に先駆けて「OKIグループAI原則」を策定しました。この原則はAI倫理、プライバシー保護、説明責任、透明性など、AI活用に求められる基本方針を包括的に定めたものです。
OKIでは、「OKIグループAI原則」を策定とともに、OKIグループのAI製品の提供やAI技術活用のガバナンスに取り組んできました。倫理的なAI活用を推進し、お客様に安心してAIを活用していただけるよう、先進的な取り組みをグループ全体で進めています。
さらに、整備されつつある各種AI規制に対してもスピード感を持った対応が重要で、生成AIやその周辺技術は変革のスピードが速いため、AI技術活用のガイドライン、世界各国で整備されつつあるAI関連の規制やルールを継続的に見て、AIガバナンスの取組みを進めています。
AIのリスク管理と品質マネジメント
OKIでは、お客様や社会に受け入れられるAI製品を提供するため、製品開発の最初から出荷に至る各プロセスにおいて、契約ガイドラインやひな型、品質チェックリストを整備しています。また、倫理や関連法令でのリスクをチェックする仕組みを追加し、品質マネジメントシステムに組込んでいます。
グループ内コミュニティーによるAI人材の育成
全社でのAI利活用の浸透を目的として、OKIグループ内コミュニティー活動を行っています。AI教育は営業、技術部門、生産・共通部門といった役割に応じ、基礎から実践までの教育を実施。倫理面についてはワークショップ型の研修により、AIの導入において配慮すべきことを事例ベースで議論することで、より安全なAIの提案・提供ができるよう啓蒙活動を行っています。
また、生成AIの活用においては、これらのコミュニティー活動のもと「OKI AI Chatシステム」という生成AI基盤はOKIグループ社員5000人以上に安心安全に活用されています。
まとめ
ビジネスの可能性を大きく広げる技術として期待の高い生成AIをはじめとするAI技術ですが、ビジネスに活用するためにはリスクや課題を正しく把握し、AIガバナンスの確立をはじめ、会社としての方向性をしっかりと定める必要があります。
OKIは長年培ってきたAI技術とノウハウに加え、お客様の課題に寄り添うコンサルティング力で、生成AIなどAI技術の導入から運用まで、お客様のビジネス成長を支援。AXを加速させます。
生成AIをはじめとするAI技術のビジネス活用もしくはOKIとの共創にご関心のある企業様は、コチラまでお気軽にご相談ください。
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