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コラム2026年5月29日

なぜデザイン思考がイノベーションを成功させる?潜在ニーズのとらえ方と実践プロセスを解説

この記事で分かること

  • デザイン思考とは?他の思考法との違い
  • デザイン思考を組織に定着させる5つのプロセス
  • ビジネスで併用すべき4つのフレームワーク
  • 実践事例:OKIにおける取り組みと成果

イノベーションは、個人の才能や運に左右されるものと考えられがちです。しかし現在では、国際規格「ISO 56001」が策定されるなど、イノベーションを組織が仕組みとして推進するための、具体的な指針が示されるようになりました。

将来の予測が難しい現代において、過去のデータに基づいた分析だけでは、顧客の真のニーズをとらえきることはできません。そこで注目されているのが、「デザイン思考(デザインシンキング)」です。これは単なるアイデア出しのテクニックではなく、未知の課題に対して組織が価値を創出するための「共通言語」です。

この記事では、デザイン思考の基本から、導入のメリット、実務で使えるフレームワーク、さらには実践的な事例の取り組みと成果を分かりやすく解説します。

目次

デザイン思考(デザインシンキング)とは?

デザイン思考(デザインシンキング)とは、デザイナーが課題を解決する際に用いる「思考のプロセス」を、ビジネスの現場に応用した考え方です。

このアプローチの最大の特徴は、ユーザー目線を第一とすることにあります。顧客が口にする要望をそのまま聞くのではなく、その裏に隠れた「本人も気づいていない悩み」を深掘りします。そこから生まれたアイデアを素早く形にし、テストを繰り返すことで、高い顧客満足度と市場での優位性を生み出すことが目的です。

2018年には経済産業省からも「デザイン経営」の重要性が提言されました。現在では、国際規格「ISO 56001」において「新しい機会を見つけるための実践的な手法」として、世界中の企業で導入が進んでいます。

デザイン思考が注目されている背景

デザイン思考に注目が集まるようになった背景としては、以下の2つが挙げられます。

過去のデータが通用しない時代

現代は、激しく変化し先が見通せない、「VUCA:Volatility(変動性)/Uncertainty(不確実性)/Complexity(複雑性)/Ambiguity(曖昧性)」の時代です。

従来のビジネスでは、過去の事例を分析して「正解」を探せば済みました。しかし、価値観が多様化した現代では、過去のデータに頼るだけでは新しいヒットは生まれません。ユーザーの深層心理に寄り添うデザイン思考こそが、予測不能な市場での道標となります。

「システムやツール」ではなく「体験(エクスペリエンス)」を作るDX

多くの企業が取り組むデジタルトランスフォーメーション(DX)の目的は、単に便利なシステムやツールを導入することではありません。それを使う人が「使いやすい」「心地よい」と感じる体験(UX)を作ることが重要です。

経済産業省の「DXレポート ~ITシステム 2025年の崖 克服とDXの本格的な展開~」においても、デザイン思考を持った人財がUXを設計することの重要性が説かれています。デジタル化が加速する今日、人間中心のデザイン思考の重要性は、ますます高まっています。

デザイン思考と他の思考法との組み合わせ効果

デザイン思考(デザインシンキング)は万能な手法ではなく、状況に応じて他の思考アプローチと組み合わせることで、その真価を発揮します。ビジネスシーンで頻用される主要な思考法との決定的な違いと、具体的な組み合わせ方を整理しました。

他の思考法デザイン思考との違い組み合わせによる効果
ロジカルシンキング(論理的思考) 事実やデータに基づき、矛盾なく正解を導き出す「収束型」の思考

ユーザーの主観や感性を重視するデザイン思考とは対照的
デザイン思考で生み出したアイデアの実現可能性や収益性を、ロジカルシンキング(論理的思考)で検証することで、独創性とビジネス性を両立させます
クリティカルシンキング(批判的思考) 「その前提は正しいか」を客観的に疑う思考

共感をベースに可能性を広げるデザイン思考の盲点を突く
試作(プロトタイプ)の段階で、クリティカルシンキング(批判的思考)を用いて「真の課題解決になっているか」を再定義し、独りよがりの開発を回避します
アートシンキング(芸術的思考) 自身の内発的動機や「問い」を起点とする思考

ユーザー起点(人間中心)のデザイン思考とは、軸となる「主語」が異なる
デザイン思考で行き詰まった際、アートシンキング(芸術的思考)を取り入れて既存の枠組みを壊すことで、非連続なイノベーションの起点にします

デザイン思考導入の3つのメリット

デザイン思考を組織的なプロセスとして定着させることで、以下の3つのメリットが期待できます。

1.アイデアを提案しやすい組織文化の醸成

デザイン思考では、初期段階でアイデアの「質」よりも「量」を重視します。実現可能性を一旦横に置き、自由に意見を出し合って磨き上げる文化が根付くことで、役職や立場を問わず発言しやすい、心理的安全性が確保できます。

2.イノベーションの創出を促進できる

多様なアイデアを誰でも提案できる組織になれば、イノベーションのきっかけがつかみやすくなります。

イノベーションを成功に導くには、ユーザー目線に基づくプロダクトの開発や改善は欠かせません。デザイン思考もユーザーのニーズを起点とするため、前例にとらわれない新たなプロダクトの開発や、既存事業の改革にもつながります。

3.社内コミュニケーションが活性化する

「ユーザーにとって何が良いか」という共通の視点を持つことで、部署間の壁を越えた対話が活性化します。

異なる専門性を持つ人財同士の化学反応を誘発し、組織の硬直化を防ぎます。

デザイン思考の5段階プロセス

デザイン思考を形骸化させず、実務で成果を出すためには、以下の5つのステップを意識的に回していくことが重要です。

ステップ概要と目的具体的なアクション(手法例)
1. 共感 (Empathize) ユーザーの行動や発言から、本人も気づいていない「潜在ニーズ」を掘り起こす 徹底した行動観察(オブザベーション)/デプスインタビュー/共感マップ
2. 定義 (Define) 収集した膨大な情報を分析し、解決すべき「本質的な課題(インサイト)」を特定する ペルソナ設定/ユーザー・ジャーニー・マップ/取り組むべき「問い」の言語化
3. 創造 (Ideate) 既存の枠組みに捉われず、課題解決のためのアイデアを大量に発散させる ブレインストーミング/HMW(How Might We?:どうすれば~できるか?)思考
4. 試作 (Prototype) 早期にフィードバックを得るため、低コストかつ迅速に目に見える形にする ペーパープロトタイプ/低忠実度(Low-fi)モックアップ/ストーリーボード
5. テスト (Test) ユーザーに試作を提示し、得られた知見を元に前プロセスへ戻って改善(ループ)する ユーザーテスト/プロトタイプへのフィードバック収集/高速な軌道修正

このステップを繰り返すことで、デザイン思考に基づく組織文化が醸成されます。

デザイン思考に役立つ主なフレームワーク

デザイン思考を抽象的な概念に留めず、具体的なビジネス成果へと結びつけるためには、議論を構造化し、視覚的に整理するためのフレームワークの活用が欠かせません。

ここでは、ビジネスで有効性の高い4つのフレームワークをピックアップして解説します。

1.ビジネスモデルキャンバス(BMC):事業の全体像と整合性の検証

ビジネスモデル・キャンバス(BMC)とは、事業の構造を「顧客セグメント」「提供価値」「収益の流れ」など、9つの主要な要素に分類して1枚の図に可視化する手法です。

デザイン思考の「創造・概念化」プロセスにおいて、アイデアを単なる「点」で終わらせず、持続可能な「ビジネスの仕組み」として構築するために使用します。

とくに、ターゲットとする顧客が抱える課題に対し、自社のソリューションがどのような独自の価値(バリュープロポジション)を提供するのかを客観的に俯瞰することで、議論の脱線を防ぎ、論理的な整合性を確保します。

2.共感マップ:ユーザーの深層心理とインサイトの特定

共感マップとは、ターゲットとなるユーザーが置かれている状況を「何を見て、何を聞き、何を考え、何を行っているか」という多角的な視点から整理するフレームワークです。

「共感」プロセスの核心を担うこの手法は、ユーザーの表面的な行動だけでなく、その裏側に隠れた感情的な「痛み(Pain)」や、真に求めている「利得(Gain)」を浮き彫りにします。

これにより、開発側が陥りがちな「思い込み」を排除し、ユーザー自身も言語化できていない本質的な欲求(インサイト)の発見に繋げます。

3. カスタマージャーニーマップ:体験の時系列可視化と接点の最適化

カスタマージャーニーマップとは、ユーザーが製品やサービスを認知し、検討、購入、そして利用に至るまでの一連の体験を時系列で可視化するアプローチです。

各タッチポイント(接点)におけるユーザーの行動だけでなく、その時々の「思考」や「感情の浮き沈み」を詳細に記述します。体験全体を俯瞰することで、どのフェーズで不満や障壁(ペインポイント)が発生しているかを特定し、改善の優先順位を明確にします。

これにより、部分最適ではない「顧客体験全体(UX)の最適化」が可能になります。

4.SWOT分析:ニーズと戦略的リソースの融合

SWOT分析とは、経営や販売戦略を立てる際に使用される、自社の内部環境と外部環境を整理するフレームワークです。強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つの側面から整理、分析します。

「テスト」を経て磨き上げられた解決策を、自社の内部能力や市場の外部環境と照合。外部環境の「機会」を逃さず、自社の「強み」をどう活かすか、あるいは「弱み」をどう補完するかを整理することで、デザイン思考から生まれたアイデアを、現実的かつ競争力のあるビジネス戦略へと昇華できます。

デザイン思考の実践事例

イノベーション・マネジメントシステムの認証を取得している企業は、日本国内ではまだ限定的ですが、国際標準に基づいた変革に取り組む組織は着実に増加しています。ここでは、製造業における先進的な一例を紹介します。

OKIが推進する「全員参加型イノベーション」

OKIでは、イノベーションを一部の専門組織や個人の才能に頼るのではなく、全社員が日常的に取り組む「全員参加型イノベーション」として定義。デザイン思考は、その活動を支える重要な共通言語の一つです。

以下に、主な取り組みをご紹介します。

イノベーション・マネジメントシステム「Yume Pro」

SDGsが掲げる社会課題やお客様の課題解決の解決に向け、パートナーと共にデザイン思考を用いて新たな価値を「共創」する、OKIのイノベーション活動の総称です。

「Ⅰ経営層による文化浸透」、「Ⅱ社員の実践支援」、「Ⅲイノベーション教育」、「Ⅳイノベーション・マネジメント」の4つの施策を柱に推進しています。

以下2つは、OKIのイノベーションの取り組みを、社外の方に向けて行う取り組みです。

OKIブレイクスルーキャンプ

イノベーション・マネジメントシステム(IMS)のプロセスを体感し、デザイン思考による課題探索プロセスを体験できる1日完結型のワークショップです。

新規事業開発や既存事業の変革、業務改善に携わる方々に向けて、顧客視点から課題をとらえ、解決策の発想に繋がる実践的な学びをご提供。身近な例題を用いた演習形式で、理論だけでなく「実務にどう活かせるか」を体感できます。

IMS(イノベーション・マネジメントシステム)支援サービス

自社が日本初・製造業世界初の「ISO 56001」認証取得(2025年7月)を通じて培ったノウハウを体系化。デザイン思考を単なる手法に留めず、「組織能力としてのイノベーション」を定着させるための仕組み構築を伴走支援します。

まとめ

デザイン思考は単なるアイデア出しのテクニックではなく、不透明な市場において顧客に選ばれ続ける価値を創出し続けるための「生存戦略」そのものです。

5つのプロセスを回し、常にユーザーの本質に立ち戻ることで、イノベーションは偶然の産物から組織的に管理可能なプロセスへと進化します。最新の国際規格に基づいたイノベーション・マネジメント・システム(IMS)の実装と、デザイン思考の実践を両輪で回すことで、持続可能な未来を構築しましょう。

OKIではデザイン思考が活きる「オープンイノベーション」を通して、共に社会課題解決に取り組む共創パートナーを募集しています。

実践経験豊富なOKIと一緒に、デザイン思考でイノベーションを推進しませんか?

編集部
OKI STYLE SQUARE VIRTUAL編集部 イノベーション担当
社会の課題が複雑化する現代において、新しい価値創造の重要性が高まっています。OKIは、長年培ってきた技術と「共創」の精神を掛け合わせ、お客様やパートナー様とともに、社会の発展に貢献するイノベーションを生み出し続けています。専門家を交えたメンバーが、未来を拓くイノベーションの最前線について、皆様に役立つ情報をお届けします。
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