COLUMN
デザイン思考はイノベーション促進に役立つ?メリットや事例を解説
イノベーションの実現は個人の能力やタイミングに依存しやすく、いつでもどこでも達成できるものではないと考えられがちです。
しかし、近年はイノベーション推進の国際的な枠組みが設けられたり、変革を促すための建設的なアプローチが普及しています。工夫次第で組織的にイノベーションを起こすことも可能になってきました。
この記事では、イノベーションを日常的に推進するための考え方の一つである、デザイン思考について解説します。
OKIでは、デザイン思考を用いて全社員参加型で変革を促す、オープンイノベーションの創出を推進するための共創パートナーを募集しています。詳しいOKIの取り組みについては、以下のページよりご確認ください。
目次
デザイン思考(デザインシンキング)とは?
デザイン思考とは、デザイナーが業務で用いる思考プロセスを用いることで、世の中の問題に対して解決策を見出したり、イノベーションを推進したりする思考法のことです。
このアプローチの最大の特徴は、ユーザー目線を第一とすることにあります。ユーザーが喜ぶもの、満足するものとは何かを考えながら潜在的な課題に向き合います。そこからアイデアを生み出し、製品化に向けたトライアンドエラーを推進することで、高い顧客満足度の達成を目指すものです。
デザイン思考は、2018年5月に経済産業省と特許庁が共同で発表した『「デザイン経営」宣言』でも触れられています。
同宣言はイノベーションにおけるデザイン思考への注目を呼びかけるものです。他社との差別化や市場優位性の獲得において、国レベルで推奨する思考プロセスであるともいえるでしょう。
デザイン思考が注目されている背景
デザイン思考に注目が集まるようになったのは、以下の2つの背景が挙げられます。
VUCA時代の到来
デザイン思考が注目される理由のひとつは、VUCA時代の到来です。VUCAは「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をとった言葉です。将来の予測が難しい状況になっていることを指します。
従来のサービス開発やプロダクト開発は、過去の事例に基づく仮説検証を行いながら進めていくことが当たり前でした。しかし、常識が次々とアップデートされていく今日においては、過去の仮説が成り立たなくなります。
このような時代に必要とされるのがデザイン思考です。ユーザーのニーズに寄り添い、急激な価値観の変化にも対応するアプローチとして注目されています。
DXの普及
多くの企業が取り組むDX推進においても、デザイン思考がカギを握ります。
DX施策は、単に最新のシステムを導入すれば良いということではありません。それを扱う従業員や、顧客のニーズに合った導入アプローチを実現できないと、期待する効果が得られないからです。
経済産業省が発表した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』でも、デザイン思考を持った人材が、UX(ユーザエクスペリエンス)を設計することを求めています。
DXの成功にはデザイン思考が欠かせないといえるでしょう。
デザイン思考とその他の考え方との違い
デザイン思考と似た思考法に、論理的思考や批判的思考、アート思考があります。デザイン思考とどのような違いがあるのか、確認しておきましょう。
論理的思考(ロジカルシンキング)との違い
論理的思考は、ビジネスの現場で広く用いられる思考アプローチです。特徴は、情報や客観的事実に基づいて問題解決の筋道を考えることにあります。物事の要点を明らかにしていく思考法です。
一方デザイン思考は、ユーザーのニーズを思考の起点とします。ニーズから課題を特定し、解決するための創造的なアイデアを探索していく思考方法です。論理的思考とは思考の起点やプロセスが異なります。
批判的思考(クリティカルシンキング)との違い
批判的思考は、物事に対して批判的・客観的な視点を持ち、課題解決を図るアプローチです。「これは本当に正解なのか」「他に良い選択肢はないのか」と自問自答しながら、効果検証を進めていきます。
ユーザー視点であるデザイン思考に対し、批判的思考は客観性を持ったプロセスであることが特徴です。
アート思考との違い
デザイン思考と合わせて近年注目されているのが、アート思考です。デザイン思考と同様に、新しいアイデアを創出するための思考方法です。組織や担当者が主体となり、自由な発想で企画を検討し、プロダクトを開発します。
デザイン思考と異なる点は、主体が組織や事業担当者にあることです。アート思考は組織や事業担当者の「自分目線」が思考の軸になる一方で、デザイン思考の軸はユーザーにあるという違いがあります。
デザイン思考導入の3つのメリット
デザイン思考は単に新しい考え方を現場にもたらすだけではありません。導入することで、3つのメリットが期待できます。
1.アイデアを提案しやすい組織になる
デザイン思考では、さまざまな意見を出し合うことが必要です。多くのアイデアを基にブラッシュアップしていくため、アイデアの質よりも量が重要になります。
実現の可能性を一旦無視してアイデアを共有する文化が根付くと、立場や役職に関係なく意見や提案を発表できます。多様なアイデアを具現化する組織へとアップデートされるでしょう。
2.イノベーションの創出を促進できる
多様なアイデアを誰でも提案できる組織になれば、それだけイノベーションのきっかけをつかみやすくなります。
イノベーションを成功に導く上で、ユーザー目線に基づくプロダクトの開発や改善が欠かせません。デザイン思考もユーザーのニーズを起点とするため、イノベーションと相性の良い思考方法です。前例にとらわれない新たなプロダクトが生まれることも期待できます。
3.社内コミュニケーションが活性化する
デザイン思考はアイデアの表明を促すため、必然的に社内コミュニケーションを活性化させます。
立場を気にせず意見交換できることで、社員にとって居心地の良い環境がつくられ、イノベーションも起きやすくなります。
デザイン思考により、誰が出したアイデアも採り入れられる組織づくりができるでしょう。
デザイン思考の5段階プロセス
デザイン思考は、以下の5つのプロセスで構成されています。
それぞれのプロセスでどのような手続きが必要なのか、確認しておきましょう。
1.共感(Empathize)
デザイン思考のスタート地点はユーザーへの共感です。ユーザーが何を考えているのか、どんなことに悩んでいるのかを明らかにするために、まずは情報収集を行います。
インタビューやアンケートなどの施策を用いて、ユーザーと同じ視点に立って情報を収集しましょう。
2.定義(Define)
ユーザーの考えていること、感じていることを基に、取り組むべき課題を定義する作業に移ります。
ユーザーが感じていることを言語化することで、本当に必要なことや対処すべき課題を明らかにできます。
ユーザーの意見の背景にあるものを探っていくと、ユーザーが自覚していない本質的な課題が見つかることもあるでしょう。
3.創造・概念化(Ideate)
定義した課題に基づき、それをどのように乗り越えるのが良いのか、多様なアイデアを募ります。
できるだけ多くのアイデアを出すことが重要です。ブレインストーミングなどのアイデア出しの手法を有効活用し、自由な発想でアイデアを出し合いましょう。
4.試作(Prototype)
課題の解決につながりそうなアイデアが生まれたら、試作する作業へ移ります。作成するプロトタイプはコストを掛けず、すぐにできるものが望ましいです。
形にすることで、改善点や効果が見えてきます。議論を深め、精度を上げることができるでしょう。
5.テスト(Test)
プロトタイプの修正を繰り返しながら、ユーザーテストも進めます。社内だけでなく社外のユーザーにも試験的に利用してもらい、フィードバックを獲得する工程です。
得られたフィードバックや知見を踏まえ、さらなる改善を進めることで実用化に向けた形づくりを進めましょう。
この手続きを繰り返すことで、デザイン思考に基づく問題解決を実現できます。
デザイン思考に役立つ主なフレームワーク
デザイン思考をより有効活用するためには、いくつかのフレームワークを使い分けることも大切です。
ここではビジネスの現場で採用されている、主なフレームワークをピックアップして解説します。
1.ビジネスモデルキャンパス(BMC)
ビジネスモデルキャンパスは、事業の全体像を客観的に可視化できるフレームワークです。
誰に、どんな価値を提供するのか、顧客とどんな関係を構築するのかなど、9つの要素から事業を具体化させます。見えた課題や強みを検証することで、提供するサービスのブラッシュアップを図る方法です。
ビジネスモデルを実用性の高い視点から整理することができるので、議論が見当違いの方向に進むことを回避できます。
2.共感マップ
共感マップは、ユーザーが考えていること、実際の行動、価値観などを整理するためのフレームワークです。
ユーザーを理解するには、ユーザーの主観に立つだけでなく、ユーザーを俯瞰して見つめることも重要です。共感マップを作成することで、ユーザーの人物像やプロダクトに対して抱く感情や課題を効果的に発見できます。
ユーザーへの本質的な理解が不足していると感じる場合、有効なアプローチです。
3.ジャーニーマップ
ジャーニーマップは、製品とユーザーの関わりを可視化するアプローチです。ユーザーの思考や感情、実際の体験を時系列にまとめ、製品とのタッチポイントやニーズの発生などを整理します。
ユーザーがいつどこで、どのように製品と関わっているかが把握できるため、ユーザーへの共感を一層深めることにつながります。
また、どのように製品が利用されているかを改めて確認する機会にもなります。この過程から新しい発見を得ることもできるでしょう。
4.SWOT分析
SWOT分析は経営戦略を立てるために、自社の内部環境と外部環境を整理するフレームワークです。「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つの側面から分析します。
自社の強みや弱み、潜在的に抱えている機会や脅威を整理することで、顧客課題の解決にも有益な材料を得られます。
デザイン思考の実践事例
デザイン思考は、すでに多くの企業で取り入れられている実用性の高い思考アプローチです。ここでは、代表的な実践事例を紹介します。デザイン思考の具体的な実施方法に注目してみましょう。
沖電気工業株式会社(OKI)
OKIはイノベーションを遂行する上で、イノベーション・マネジメントシステム(IMS)の活用とデザイン思考の両立が重要だと考えています。OKI独自のIMS「Yume Pro」を活用し、デザイン思考の浸透に注力しています。
現在変革に取り組んでいるのが、受注型ビジネスから提案型ビジネスへの転換です。そのために、デザイン思考を取り入れた実践研修やお客様やパートナー企業と共に実践する「共創ワークショップ」を実施しています。
長らく受注型ビジネスをおこなってきたOKIは、ユーザーの悩みなどを聞き出すことを苦手としていました。実践的な研修やお客様との共創によりこれを克服し、提案型の体質に転身することで、より積極的なイノベーション活動の推進を図っています。
デザイン思考のメソッドをYume Proにも落とし込み、ブラッシュアップすることで、IMSを有効活用できる組織への変革を進めています。
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この記事では、デザイン思考とはどのようなアプローチなのか、なぜ多くの企業が必要としているのかについて解説しました。
デザイン思考はユーザーの目線に立って課題解決や製品の改善を目指す、比較的新しい取り組みです。実施にあたっては組織のマインドセットを根本から考え直す必要もあるかもしれません。ある程度の時間と工夫が求められるでしょう。
とはいえ、デザイン思考を導入することによる恩恵は大きいです。すでに複数の企業がデザイン思考を取り入れた全社的なイノベーションに取り組み、成果を挙げています。
成功事例を参考にしながら、段階的に採用していくことが重要です。
OKIではデザイン思考が活きる「オープンイノベーション」を通して、共に社会課題解決に取り組む共創パートナーを募集しています。
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