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分割配送とは?物流効率を高める新たな配送方法を徹底解説
物流業界では、慢性的な人手不足が課題となっていますが、法令改正によりドライバーの労働時間の削減が求められ、状況はさらに深刻化することが見込まれます。さらに、小口輸送の増加によりトラック積載率は低下傾向にあり、早急に配送効率を高めていかなければなりません。
これらの課題を解決する方法の一つが「分割配送」です。分割配送では、1つの納品先に荷物を分割して配送します。分割することで、ほかの納品先の荷物を積んだトラックの空いたスペースを活用した配送が可能になります。車両あたりの積載率を上げられるため、配送業務の総合的な効率化が期待できます。
この記事では、分割配送の仕組みやメリット、分割配送を取り入れるべき理由について解説します。
分割配送を採用した場合、1台のトラックに複数の配送先の荷物を積載するケースが多くなります。配送ルートはより複雑化するため、人の手で安定的に最適なルートを立案するのは困難です。記事の後半では、分割配送を含めた最適な配送ルートをAIで自動算出するOKIのサービス「LocoMoses(ロコモーゼ)」についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
分割配送とは?物流効率を高める配送方法
分割配送とは、1つの配送先に対して1台のトラックで対応するのではなく、複数台のトラックに分割して荷物を載せ、それぞれが複数拠点への納品を行うことを指します。
これまで主流だったのは、1つの配送先に対して1台のトラックで対応する「一括配送」でした。一括配送では積載率が低い状態で配送する場合もあるほか、1度に全量を載せられない場合は増便するなど、配送効率が低下しがちです。
分割配送では、1つの配送先の荷物を必要に応じて複数台に分割することで、車両の空いたスペースを有効活用できます。それにともない全体的な積載率が向上し、必要となる車両や人員、走行距離を削減できるため、効率的な配送が可能になるという点が特徴です。
人手不足や小口輸送の増加に対応するため、物流業界では配送の効率化が求められています。分割配送を取り入れれば限られた人数で効率よく配送することができ、人件費や燃料費のコスト削減にもつながります。
物流の配送ルート最適化が求められる背景
物流業界において、配送ルートの最適化は必要不可欠です。高効率の配送を実現するには、分割配送を導入した上で最適な配送ルートを算出するのがおすすめです。
ここでは、配送ルート最適化が物流業界に必要な理由について解説します。
トラックドライバー不足
配送ルートの最適化が求められる理由の一つが、トラックドライバーの不足です。
物流業界では、慢性的なドライバー不足が課題となっています。全日本トラック協会の調査によると、2023年3月時点で65%以上の企業がドライバー不足を感じていると回答しています(※1)。
また、鉄道貨物協会の見解によると、ドライバー不足は2025年度には52.0万人、2030年度には57.5万人まで拡大すると予想されています(※2)。
そもそも、労働人口自体が減少傾向にあるため、マンパワーだけに頼るのは困難を極めます。人手不足の問題に対応するため、AIやITシステムを用いた配送ルート最適化を行い、配送効率を向上させることが重要です。
※1 出典:全日本トラック協会|第121回トラック運送業界の景況感(速報)令和5年1月~3月期
※2 出典:公益社団法人鉄道貨物協会|令和4(2022)年度本部委員会報告書
小口配送の増加
EC市場の拡大にともなう小口配送の増加も、配送ルートの効率化が求められる背景の一つです。
経済産業省の調査によると、国内の物販系のEC市場は2017年時点で約8.6兆円であったのに対し、2022年では約14兆円規模にまで拡大しています(※3)。宅配便取扱実績についても、2017年時点での約42億個に対し2022年で約49億個と、5年間で約17%増加しています(※4)。
このように、EC市場の拡大にともなって、多頻度小口配送も増加の傾向にあるのが現状です。
EC市場と配送数は拡大・増加傾向にあるものの、物流業界は人手不足の傾向にあります。限られた人手で多頻度小口配送に対応するためには、配送ルート最適化による効率向上が必要となります。
※3 出典:経済産業省|令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書
※4 出典:国土交通省|令和4年度 宅配便等取扱個数の調査及び集計方法
働き方改革関連法の施行
働き方改革関連法の施行により、2024年4月からドライバーの時間外労働時間が年間960時間を上限として規制されることとなったことも、配送ルート最適化が求められる理由の一つです。
働き方改革関連法とは、労働者のワークライフバランスを保つことを目的に、労働基準法をはじめとする法律を改正したものです。改正内容としては時間外労働の上限規制のほか、時間外労働の割増賃金率引き上げ、勤務間インターバル制度の普及などが含まれます。
働き方改革を推進しドライバーの労働環境を改善するため、配送ルート最適化を含め配送効率向上の施策を取ることが重要です。
このように、働き方改革関連法によって2024年以降に発生するとされる諸問題のことを「2024年問題」といいます。2024年問題については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
「2024年問題に向けて、ドライバーの労働時間を短縮したい」
「人手不足に対応するため、配送を効率化したい」
このような悩みに向き合い、OKIでは物流業界の社会課題を解決するためのイノベーションを共創するパートナーを募集しています。
OKIが提供する配送計画最適化サービス「LocoMoses」では、配送のルートを最適化し労働時間や車両の稼働数を減らすことを可能にします。条件を入力すれば誰でも配送計画を作成できるため、配送品質や効率の標準化、属人化解消にもつながります。
ご興味のある方は、ぜひ以下のページをご参照ください。
分割配送を行う3つのメリット
分割配送を行うと、さまざまな面でメリットが得られます。
ここでは分割配送の導入による、以下3つのメリットについて解説します。
- トラックの積載率を高められる
- 走行距離を削減できる
- 人件費や車両費を削減できる
トラックの積載率を高められる
分割配送の最たるメリットは、トラックの積載率を高め配送を効率化できるという点です。
1つの配送先に対して1台のトラックで配送すると、積載率が低い状態で配送するケースもあり非効率となってしまいます。分割配送の場合は、できるだけ積載率が高い状態で出発し荷物を運搬できるため、配送効率を向上させることが可能です。
たとえば3つの配送先に対して積載率60%のトラックが3台必要である場合、分割配送を行うことで積載率90%のトラック2台の稼働で対応できます。車両あたりのデッドスペースを減らし、容量を最大限に活用することができるようになるということです。
このようにトラックの積載率を高めることによって、次に説明する走行距離や労働時間の削減、人件費や車両費の削減を実現できるようになります。
走行距離を削減できる
分割配送によって走行距離が短縮されます。その結果、物流業界で課題となっているトラックドライバーの長時間労働を改善できる点がメリットです。
先ほど挙げた例では、2台のトラックが寄り道するという形で合計3つの納品先への配送を行うことになります。3台がそれぞれ往復するよりも、総走行距離を短縮することができます。
人件費や車両費を削減できる
分割配送は、人件費や車両費といったコストの削減にもつながります。
分割配送を取り入れることで総合的な配送時間が短縮されるため、人件費の削減につながります。もしくは、同じ人件費でより多くの荷物を運ぶことが可能です。
配送が長時間化して時間外労働や深夜労働、休日出勤などが増えれば割増賃金が発生し、人件費が膨れ上がってしまいます。分割配送で労働時間を短縮することで、人件費の削減が期待できます。
また、分割配送は総走行距離を短くすることから、燃料費を抑えられます。従来であれば3台のトラックが必要なケースを2台で対応できるという具合に、車両の稼働数削減にもつながります。これに付随して、車両費や維持費が削減できる可能性があるという点もメリットです。あるいは空いた車両でより多くの荷物を運べるようになり、売上増加も期待できます。
分割配送が有効なケース
分割配送は、すべての配送で採用できるわけではありません。また、効果が出やすいケースとそうでないケースがあります。
分割配送が有効になるのは、以下のようなケースです。
- 納品先における2回納品の許容
- 1納品先での積載率50%超えの物量
分割配送では、同じ納品先に別々のトラックで配送されることになります。荷物の納品先が2回以上の受け取りを許容している場合に、分割配送が可能となります。
また、分割配送は、1つの納品先での積載率が50%以上の場合により高い効果が生じます。具体的には、以下のような場合に分割配送で効果が出やすくなります。
区分 | 分割配送がおすすめのケース |
---|---|
配送物量(配送先ごとの物量) |
・11ケース以上 |
運送車格(配送運用している車格) |
・中型車:4~8トン |
1配送先あたりの積載率 |
・50%以上 |
納品先ごとの事情や配送量などを考慮しながら、分割配送を取り入れるべきか検討してみてください。
分割配送を実現するOKIの配送計画最適化サービス「LocoMoses」とは?
分割配送を取り入れた配送ルートの組み合わせは膨大です。どのルートが最適かを一つひとつ検証するのは現実的ではありません。分割配送を前提とした配送ルートの最適化には、ルートの算出と検証を自動で行うシステムの導入が不可欠だと言えます。
OKIでは、分割配送を実現する配送計画最適化サービス「LocoMoses(ロコモーゼ)」を提供しています。ここでは、LocoMosesの特徴や機能、メリットについて解説します。
LocoMosesの仕組み
LocoMosesは、入力された配送要件に基づいて、分割配送を含む最適な配送計画をAIで作成し提供するサービスです。
配送先位置、配送車両の積載可能量・運行可能便数、荷物量、納品時間などの配送要件を入力すると、AIによって最適な配送計画が作成されます。燃料費や高速道路料金を含めた最小コストの計画を算出し、熟練の社員と同等レベルの立案ができるため、配送効率の標準化を図ることができます。
SaaS型のサービスとなっており、輸配送システム(TMS)とAPI連携することでLocoMosesの機能をご利用いただけます。
配送拠点(エリア)ごとに配送先の数に応じて料金が発生する仕組みで、SaaS型のサービスのため初期費用なしで利用できます。(輸配送システムの料金は別となります)
LocoMosesの主な機能
LocoMosesでは、配送先ごとに以下のような条件の指定が可能です。
- 配送時間
- 対応車両
- 分割配送の可否 など
ただし、ルートを最適化できたとしても、渋滞や交通規制などがあると配送時間に遅延してしまう原因となります。こうした状況にも対応できるように、LocoMosesは「配送先組み合わせ除外機能」を搭載しています。渋滞や交通規制などのリスクを回避した配送ルートの計算が可能です。
【配送先組み合わせ除外機能】
高速道路の利用基準(距離)に基づき、配送区間ごとに高速道路の利用採否を細かく判断して配送ルートを提示することも可能です。全配送ルートを一律で「高速道路使用」と設定するのではなく、あらかじめ設定した距離に従って区間ごとに高速道路を利用するかどうかを自動選択するため、有料道路使用のコストを削減できます。
【高速道路の利用判断】
このようにLocoMosesは、条件に合わせて最適な配送計画を導き出します。ひいては、各社のコスト削減計画に貢献できるでしょう。分割配送も取り入れた配送計画を立案するので、積載率の向上や稼働車両の削減によって更なるコスト抑制の効果も期待できます。
LocoMoses導入で得られる効果
LocoMoses導入により、以下のような効果が得られます。
- 配送計画業務の標準化・工数削減・属人化の解消
- 燃料費・車両費・人件費・有料道路使用料などのコスト削減
- CO2排出量の削減による、SDGs準拠・社会的信頼の向上
まず、配送計画業務の効率化が期待できます。LocoMosesは、熟練の社員と同等レベルで最適な配送ルートの立案が、誰でも可能となるからです。
複雑な条件を組み合わせて配送ルートを算出しようとすると、ベテランの社員であっても膨大な時間や業務負荷がかかります。LocoMosesは社員のスキルに依存せず自動で配送計画を算出できるため、配送計画業務の工数を減らし属人化を解消できます。
LocoMosesで算出された最適な配送ルートによって車両走行距離を短縮できるため、燃料費や車両費、人件費といったコストの削減が可能です。また、高速道路の利用採否も細かく選択できるため、有料道路使用のコストも削減できます。
走行距離を短縮することによってCO2排出量も削減できるため、SDGsの準拠や社会的信頼の向上にもつながります。
LocoMosesの活用事例(株式会社 ロンコ・ジャパン)
LocoMosesは、2020年よりOKIが株式会社 ロンコ・ジャパンと実証実験を行いながら共創した製品です。
2021年の実証実験では、トラック13台分の走行距離を1日あたり約300km削減することに成功しました。その後の実証実践では、車両台数15台、配送店舗数約50のエリアで年間約700万円のコストを削減できるという結果になりました。これは、新たに追加された機能である「配送時間調整プログラム」の効果もあります。また、CO2は年間で約440kgを削減できるとのデータも得られています。
走行距離 |
1日あたり約340km削減(15台分の合計値) |
---|---|
コスト |
年間約700万円削減(燃料費+高速道路利用料) |
CO2 |
年間約440kgの削減効果(見込み) |
まとめ|分割配送を取り入れて効率的な配送を実現しよう
ドライバー不足に対応するため、物流業界では配送効率を向上させ、限られた時間や人員でできるだけ多くの荷物を配送することが求められています。積載率を高め、トラックの稼働数や配送頻度を減らすためには、分割配送の手法を取り入れて配送ルートを最適化するのがおすすめです。
分割配送は、1つの配送先に分割して荷物を配達する配送方法です。積載率の向上により、多くのメリットが生じます。
しかし、分割配送を考慮にいれた上で配送ルートを算出しようとすると、ルートの候補と荷物の積載のパターンが膨大になります。これらの候補が最適かどうかを一つひとつ検証するのは多大な労力を要するため、自動で最適な配送ルートを算出するシステムの導入が推奨されます。
OKIの配送計画最適化サービス「LocoMoses」では、納品時間帯や積載可能量、運行便数、配送先ごとの分割の可否といったさまざまな配送条件を満たす配送ルートを、AIで自動算出します。
配送計画策定のための業務に膨大な時間や負荷がかかっている、配送効率を高めてコスト削減や新しい配送先の追加をしたいといった場合には、ぜひLocoMosesをご検討ください。
「自社でも分割配送の効果が出るか知りたい」
「具体的にどれだけ効果が出るかシミュレーションしたい」
など、分割配送やAIによる配送ルート最適化にご興味がある方は、まずはお気軽にご相談ください。現状や課題をお聞かせいただき、個社の状況に合わせたシミュレーションをご提示します。
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