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物流業界の2024年問題とは?影響と課題をわかりやすく解説
2024年問題とは、働き方改革関連法によって物流業界で起こるとされている問題の総称です。
働き方改革関連法を遵守するためには、業務効率を高め、物流業界の課題解消に取り組む必要があります。
この記事では、2024年問題について以下の内容を解説します。
- 働き方改革関連法によって起こりうる問題
- 物流業界の現状
- 2024年問題への具体的な対策
物流業界全体で取り組むべき諸問題と、具体的な解決法について解説しているので、ぜひ最後までお読みいただき参考にしてみてください。
目次
1.2024年問題とは
2024年問題とは、物流業界において、働き方改革関連法によって2024年以降に発生するとされる諸問題の総称です。
働き方改革関連法は、労働者のワークライフバランスを保つため、労働基準法をはじめとする法律を改正したものです。働き方改革関連法の主な改正点には、以下のようなものがあります。
- 時間外労働の上限規制
- 月60時間超の時間外労働の割増賃金率引き上げ
- 勤務間インターバル制の促進 など
これらの改正により、ドライバーの長時間労働が軽減され、労働環境が改善されるというメリットが期待できます。
ただし、働き方改革関連法の適用は、以下のようなリスクの発生も考えられます。
- ドライバーの収入減少
- 輸輸配送能力の低下や、割増賃金などによる運送会社の利益減少
- 運賃上昇による荷主の支払額増加
これらのリスクに対処するためには、2024年に向けて、輸配送の効率を高めるなどの対策をしておくことが重要です。
2.物流業界を取り巻く環境
現在、物流業界は多くの課題を抱えています。
ここでは、以下3つの課題について解説します。
- 低賃金・長時間労働
- ドライバー不足・高齢化
- EC市場拡大による輸送効率の低下
低賃金・長時間労働
物流業界における課題の1つ目は、ドライバーの低賃金や長時間労働です。
厚生労働省は、自動車運転者の労働時間と給与額について、以下の統計を発表しています。
所定内実労働時間数 | 超過実労働時間数 | 所定内給与額(月額)※ | |
---|---|---|---|
全産業平均 | 165時間 | 10時間 | 30万円 |
大型トラック | 176時間 | 35時間 | 27万円 |
中小型トラック | 176時間 | 31時間 | 26万円 |
※千円単位切り捨て、賞与等含まず
※出典:厚生労働省|参考資料1 改善br基準告示見直しについて(参考資料)
このデータから、トラックドライバーは全産業平均と比べ、労働時間が長く所定内給与額が低い傾向にあることがわかります。
ドライバー不足・高齢化
2つ目の課題は、ドライバーの人材不足や高齢化です。
厚生労働省は、ドライバーの有効求人倍率について、以下のデータを発表しています。有効求人倍率とは、求職者1人に対し何件の求人があるかを示す数値です。
有効求人倍率 (令和4年時点) |
|
---|---|
自動車運転の職業 (輸送・機械運転の職業) |
2.65倍 |
職業計 | 1.31倍 |
※出典:厚生労働省|一般職業紹介状況(令和4年12月分および令和4年分)について
トラック運転者の場合、平成30年時点での有効求人倍率は3.03倍になっており、これは求職者1人に対し3件以上の求人があるということになります。求人の数に比べて求職者が不足しているため、人手不足と言えます。
また、国土交通省の調査によると、ドライバーの年齢構成は以下のようになっています。
15歳?29歳 | 40歳?54歳 | |
---|---|---|
全産業 | 16.3% | 34.7% |
道路貨物運送業 | 9.1% | 45.2% |
EC市場拡大による多頻度小口配送の増加
3つ目の課題は、EC市場の拡大による多頻度小口配送の増加です。多頻度小口配送とは、小口の荷物を頻繁に輸送することです。スーパーマーケットや商店に商品をまとめて輸送するのではなく、個人宅に配送する宅配貨物が増えたうえに、配送時間の指定など顧客ニーズが多様化しています。これにより、輸送効率の低下が課題となっています。
ドライバーの人手不足や高齢化が起きている一方で、商取引のEC化率は増加傾向にあります。これは、新型コロナ感染拡大による外出自粛や非接触ニーズの高まりが大きく影響していると考えられます。
※出典:経済産業省|電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました
EC市場のさらなる拡大によって、配送の多頻度小口化は今後も進むことが予想されます。
これらの課題解決と、働き方改革関連法の遵守のため、輸配送業務の見直しを行い業務効率を高めるための施策を取ることが重要です。
「2024年問題の解決に向けて業務効率化に取り組みたい」
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3.働き方改革関連法とは
働き方改革関連法とは、労働者のワークライフバランスを保つため、労働基準法をはじめとする法律を改正したものです。正式名称を「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」といいます。
働き方改革関連法では、2019年4月から順次、以下の法令が適用されています。
- 時間外労働の上限規制
- 時間外労働の割増賃金引き上げ
- 同一労働・同一賃金
- 勤務間インターバル制度の普及
物流業界にとって特に重要な上記のポイントについて、1つずつ詳細に解説します。
時間外労働の上限規制
働き方改革関連法の施行により、2024年4月からはドライバーの時間外労働時間が年間960時間を上限として規制されます。この上限規制は労働基準法第36条に基づいており、違反した企業には、経営者に対し6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が課せられます。
一般企業に適用される「一般則」では、時間外労働時間は原則月45時間、年360時間。臨時的な特別な事情がある場合のみ、年720時間、単月100時間未満、2?6ヶ月平均で80時間以内と定められています。
ドライバーの場合は、単月や2?6ヶ月平均の時間外労働の上限規制はありません。ただし、将来的には一般則を適用することについて引き続き検討するとされています。
※参照:全日本トラック協会 |トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン(解説書)
時間外労働の割増賃金引き上げ
働き方改革関連法では、時間外労働の割増賃金率が引き上げられる点もポイントです。
2023年4月以降、月60時間を超える時間外労働に対して、割増賃金率を50%に引き上げることになり、違反すると6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が課せられます。
これは、大企業では2010年から適用されている法令です。中小企業では月60時間を超えても一律25%の割増賃金率となっていましたが、今回の改正で中小企業にも適用されることとなりました。
※出典:厚生労働省|2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます
時間外労働時間と割増賃金の計算は、以下のように行います。
<時間外労働が月80時間の場合>
60時間分の割増賃金率:25%
20時間分の割増賃金率:50%
同一労働・同一賃金
同一労働・同一賃金とは、雇用形態に関係なく同じ内容の仕事をしている従業員に対して、同額の基本給や賞与を支払うことです。これは、パートタイム労働法や有期雇用労働法における改正で、大企業では2020年4月、中小企業では2021年4月より適用されています。
賃金だけでなく、教育や研修、福利厚生についても雇用形態によって差をつけないよう定められています。
この規定については、罰則は定められていません。
※参照:東京労働局|パートタイム・有期雇用労働法 ~同一労働同一賃金について~
勤務間インターバル制度の普及
勤務間インターバルとは、勤務終了から次の勤務開始までの間に休息時間(インターバル)を設ける制度です。
これまでドライバーは8時間の勤務間インターバルが設けられていましたが、2024年4月からは9時間?11時間のインターバル導入に向けて検討が進められています。
4.2024年問題によって想定される影響
働き方改革関連法の施行により、ドライバー・運送会社・荷主のそれぞれに影響が出ると考えられます。想定される影響は以下の通りです。
- 【ドライバー】時間外労働の減少による賃金低下
- 【運送会社】輸送効率低下・割増賃金上昇による利益減少
- 【荷主】運賃上昇による支払額の増加
2024年問題によって想定される影響について、詳細に解説します。
【ドライバー】時間外労働の減少による賃金低下
ドライバーへの影響として考えられるのは、時間外労働時間が減ることで賃金も低下する可能性がある点です。
時間外労働が年間960時間を上限として規制されるので、年間960時間以上の時間外労働をしているドライバーにとっては収入減となります。勤務間インターバルも8時間から9時間以上に変更されるので、1日に働く時間が限られます。
時間外労働の上限規制や勤務間インターバルによって、長時間労働による疲労や事故を防ぐ効果が期待できますが、運送会社はドライバーの賃金アップも検討していく必要が出てくるでしょう。
【運送会社】輸送効率低下・割増賃金上昇による利益減少
運送会社にとっては、輸送効率が低下して利益が減少する懸念があります。
ドライバー1人あたりの労働時間が減少するため、一度に輸送できる物量が減り、物流が滞ることが考えられます。また、時間外労働の割増賃金率の上昇で人件費の負担が大きくなり、運送会社の利益が減少する可能性もあります。
ドライバーの労働時間が減少しても輸送効率を落とさない仕組みや、割増賃金率が上昇しても利益を確保できる施策を検討していくことが重要です。
【荷主】運賃上昇による支払額の増加
働き方改革関連法の施行の影響で運送会社の利益が減少すると、荷主が支払う運賃が上昇する可能性があります。
荷主は顧客に価格転嫁せざるを得ない状況になるかもしれません。顧客に請求する配送料に運賃上昇分を上乗せするには、各企業間での協議や交渉が必要になるでしょう。
5.2024年問題に向けて必要となる取り組み
2024年問題によって生じる影響に対し、運送業界では以下の対策を重点的に行う必要があります。
- 労働環境の見直しと人材の確保
- 勤怠管理
- 輸配送の効率向上
運送業界で取り組むべき対策について、1つずつ解説します。
労働環境の見直しと人材の確保
2024年問題によるドライバーの労働時間減少に対応するには、ドライバーの数を増やすことが重要です。中長期的な視野を持ち、若手ドライバーの確保に注力すると良いでしょう。
しかし前述の通り、ドライバーは他の職業よりも人手不足なのが現状です。ただ求人を増やすだけでは、思うように人材を確保できない可能性があります。
人材を確保するためには、労働環境の改善が欠かせません。自社の労働時間や賃金、福利厚生などを見直し、ドライバーにとって魅力的な労働環境を作り上げることが重要です。
勤怠管理
時間外労働の上限規制や勤務間インターバル制度普及のために、勤怠管理をしっかりと行う必要があります。
時間外労働の上限については違反すると罰則が課せられるので、ドライバーの勤務時間を正確に把握することが重要です。
アナログな方法で勤怠管理を行うと、ミスや不正が起こることが考えられます。また、出退勤に必要な作業や勤務時間の確認作業が多いと、業務効率が低下する原因になります。
勤怠管理システムを導入して、正確かつ手軽に勤務時間を記録できる仕組みを作ることが重要です。
輸配送の効率向上
ドライバーの労働時間が減少しても物流が滞ることのないよう、輸配送の効率向上を目指すことも重要です。
輸配送の効率を高めるための方法には、たとえば以下のような方法があります。
- 輸送網の集約:物流拠点を1本化することで配送ルートを集約し、必要なトラック台数を減らす
- 輸配送の共同化:複数の物流会社が提携して共同配送することで、積載率を向上させる
- モーダルシフト:トラックによる長距離輸送を、鉄道・船舶等を活用した大量輸送に変更する
人手不足や労働時間問題を解消するための方法としても、輸配送の効率化は欠かせません。効率化によって作業時間の短縮や、積載率が改善されるだけでなく、CO2削減など環境面での貢献も期待できます。
6.2024年問題への対策にはAI活用がおすすめ
2024年問題に対処するための施策として、AIを活用する方法があります。
AIとは、コンピューターが膨大なデータから学習した内容に基づき、予測や分析、判断を自動で行う技術のことを指します。AIを活用すれば、人の手で行われていた作業を代替できるようになるため、人手不足が深刻な物流業界でも導入する企業が増えています。
物流業界におけるAI活用法や、実際の事例を解説します。
物流にAIを活用する方法とは
物流業界においてAIを活用すると、以下のことが実現できます。
- 在庫の最適化
- 輸送ルートや人員配置の最適化
- 物流予測
AIが行うのは分析や判断のみですが、実際の作業はIoTという技術を用いて自動化できる場合があります。
IoTとは「モノのインターネット(Internet of Things)」という意味で、パソコンやスマートフォン以外の様々な機器にインターネットを接続して操作する技術のことです。AIとIoTを連携させることで、以下のような作業を自動化することができます。
- 検品作業
- 荷物の仕分け作業
- 入出庫作業
AIやIoTを用いることで、省人化や業務効率化が期待でき、人手不足などの課題解決につなげることができるでしょう。
物流AIソリューションによる業務効率化の事例
実際に物流にAIソリューションを活用している2つの事例を紹介します。
①日本通運×ラピュタロボティクス|AIロボティクスによる倉庫業務の省人化
②沖電気工業×ロンコ・ジャパン|AIによるルート配送最適化
①日本通運×ラピュタロボティクス|AIロボティクスによる倉庫業務の省人化
国内外にネットワークを持つ大手物流企業の日本通運株式会社と、ロボットソリューション開発企業であるラピュタロボティクス株式会社は、AIロボティクスによる倉庫業務の省人化を推進しています。
両社は倉庫内のピッキング作業を自動で行うピッキングロボットを2018年より共同開発し、検証を続けていました。2020年から物流倉庫内で本格的に稼働しています。
自動ピッキングロボットは、ピッキング指示のデータを受信したロボットが荷物のある場所まで自動で走行する仕組みです。人間の作業者が荷物をピックアップしてカートに乗せると、次の梱包場所までロボットが自動で運搬します。
これにより、ピッキング作業の効率化と生産性向上、作業者の負荷軽減が期待できます。
②沖電気工業×ロンコ・ジャパン|独自のAI手法によるルート配送最適化
最後に、沖電気工業株式会社(OKI)が、運送・物流企業である株式会社ロンコ・ジャパンの協力のもと、OKI独自のAI手法による配送ルート最適化の実証実験を行った事例を紹介します。
OKIは、配送要件に基づき、コストが最小になる最適な配送ルートを組むアルゴリズムを開発しました。これにより、配送効率の改善だけでなく、熟練社員に依存していた配車調整業務を平準化させ、業務の属人化を解消することもできます。
2021年2月の実証実験では、熟練のドライバーよりもアルゴリズムによって最適化されたルートの方が、1日あたりの総走行距離が約300km少ないという結果が出ています。
配送ルート最適化のアルゴリズムによって、燃料代やCO2排出量の削減が期待できます。
7.まとめ|OKIとの共創に向けて
2024年問題とは、働き方改革関連法で時間外労働の上限や割増賃金率などが変更されることにより、物流業界で生じる諸問題の総称です。
物流業界は、人手不足やドライバーの高齢化、低賃金・長時間労働といった課題を抱えています。働き方改革関連法を遵守しながら課題を解消するためには、業務効率化の施策に注力する必要があります。
物流業界における業務効率化には、AIの活用がおすすめです。AIの画像認識技術を用いた検品作業や配送ルート最適化により、業務スピードの向上やコスト削減といった効果が期待できます。また、AIと連携したIoT技術により、ピッキングや仕分け、入出庫作業の自動化も実現が可能です。
OKIでは、全員参加型のイノベーション創出に向けた取り組み「Yume Pro」を展開しています。パートナー企業と共創しながら、物流分野に革新を起こし、2030年のサプライチェーン構築の完全自動化を目指します。
OKIでは現在、共創パートナー企業を募集しています。物流業界におけるイノベーション創出にご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。
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