COLUMN
体育授業での「データ活用」とは?運動の見える化で進める指導・評価と個別最適な学び

この記事で分かること
- GIGAスクール時代に、体育の授業が直面している変化
- 「速く・遠く」だけでは測れない、これからの体育評価のかたち
- 動画やタブレットでは見えない、運動の質の捉え方
- OKIの体育ICTソリューション「VISMONI」がもたらす、新しい体育の姿
GIGAスクール構想で1人1台の環境が整ったいま、国が次に据えているのがデータの活用です。2022年にデジタル庁や文部科学省などが「教育データ利活用ロードマップ」を公表し、学習履歴(スタディ・ログ)などを活かして、学習者主体の教育へ転換していく方針を示しました※1。
体育授業もタブレットで動きを撮影するなど、ICTの活用は広がっています。しかし、走る、跳ぶなどの記録以外のデータをいかに取得し、他教科のように学習データを指導や評価へ結びつけるかは容易ではなく、指導および評価は、教員の経験に頼らざるを得ないのが実情です。
この課題の解のひとつが、運動の「見える化」です。本記事では、体育でデータ活用が求められる背景と、それを実現する具体的な方法を、OKIのICT体育ソリューションも交えて解説します。
目次
体育の授業で「データ活用」が求められる背景
国が進める教育のデジタル化とデータ活用
2019年に文部科学省が打ち出したGIGAスクール構想。1人1台の情報端末と高速大容量の通信ネットワークの整備は概ね完了し、現在は端末の更新期を迎えるとともに、整備した環境をいかに活用するかが問われる段階に入っています。
その中核に位置づけられているのが、データの活用です。2022年にデジタル庁や文部科学省などが「教育データ利活用ロードマップ」を公表し、学習履歴(スタディ・ログ)などのデータを活かして、学習者主体の教育へ転換していく方針を示しました※1。
国が掲げる「個別最適な学び」と、指導と評価の一体化
データ活用が求められる背景には、国が掲げる教育の方向性があります。文部科学省は、すべての児童・生徒の可能性を引き出す「個別最適な学び」と、児童・生徒が互いに高め合う「協働的な学び」の実現を、教育政策の柱として掲げています。一人ひとりの状況に応じた指導を行うには、その児童・生徒が今どのような状態にあるかを、客観的に把握することが前提となります。
あわせて新学習指導要領では、学習評価を「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点に整理しており、これは体育・保健体育も同様です※2。単元の指導計画のなかで、いつ、どの場面で何を見取るのかを定め、指導と評価を一体のものとして進めることが求められており、評価を主観に偏らず行うために、児童・生徒の学びを裏づけるデータの役割は大きくなっています。
こうした方向性は、現場の教員にも受け止められています。スポーツ庁の全国調査※3では、体育・保健体育でのICT活用について、技能の習得や向上だけでなく、思考力・判断力・表現力の育成や、学びに向かう力の涵養(かんよう:時間をかけて育てること)といった面でも、有効と考える教員がいずれも9割を超えています。

体育でも広がるICT活用
こうした国の方針を受け、体育の授業でもICTの活用が広がっています。スポーツ庁が2021年に実施した全国調査※3では、体育授業でICT活用に取り組んでいる学校は56%にのぼりました。
活用の形はさまざまです。タブレットのカメラで動きを録画・再生してフォームを確認する方法や、ウェアラブル端末で心拍数などの運動・体調データを把握する方法などがあります。一方で、収集したデータを指導や評価にどう結びつけるかは、多くの学校にとって、これからの課題でもあります。
従来の体育の指導・評価が抱える課題
努力や成長を客観的に捉えにくい
体育の指導や評価は、これまで教員の目視や経験に頼る部分が大きいものでした。運動の様子は短時間で次々と展開するため、児童・生徒一人ひとりの動きや努力を、その場でくまなく把握することは容易ではありません。
その結果、評価に教員の主観が入りやすく、一人ひとりの努力や成長の度合いを客観的な根拠とともに示すことが難しいという課題がありました。とりわけ、運動量や体への負荷といった、外から見えにくい要素の把握には限界がありました。
一人ひとりに合った目標を設定しにくい
従来の体育では、速く走る、遠くまで跳ぶといった、結果の数値で優劣がつく目標が中心になりがちです。こうした目標のもとでは、体力や運動能力の差がそのまま結果の差として表れやすく、運動を苦手とする児童・生徒が意欲を持ちにくいという課題も指摘されてきました。
一人ひとりに合った目標を設定し、その達成度を見守るためには、外形的な結果だけでなく、個々の運動の質を捉える手立てが必要です。
グラウンドの通信環境という壁
体育授業のデータ活用には、通信環境の整備も課題です。スポーツ庁の全国調査※3によれば、常時接続できるWi-Fi環境は教室では95.6%である一方、体育館63.8%、グラウンド19.5%、武道場やプールも10%程度など、体育の授業が行われる場所の通信環境整備は遅れていることが示されています。

動画・タブレットだけでは見えないもの
外形は捉えられても、体の内側は見えない
体育のICT活用として広く行われているのが、タブレットやカメラを使った動画の撮影・分析です。自分のフォームを客観的に確認したり、お手本の動きと比較したり、仲間と映像を共有して助言し合ったりできる点で、大きな効果があります。
ただし、動画で捉えられるのは、あくまで体の外から見える動きです。心拍数や運動強度といった、体の内側で起きている変化までは把握できません。
必要なのは「運動の質」を示すデータ
たとえば、同じ距離を同じフォームで走っても、その運動が児童・生徒の体にどの程度の負荷をかけているかは、一人ひとり異なります。外から見える動きだけでは、この違いはわかりません。
指導や評価を高度化し、個別最適な学びを実現するには、運動の質を客観的に示すデータ、すなわち運動の見える化が求められます。動画による外形の把握と、データによる運動の質の把握を組み合わせることで、体育のデータ活用は次の段階へと進みます。
運動を「見える化」する「VISMONI」でのデータ活用
運動の見える化を実現するのが、OKIの体育ICTソリューション「VISMONI」です。

教員にとってのメリット|勘に頼らず、データを根拠に指導・評価できる
体育の指導や評価は、教員の目視や経験に頼らざるを得ない場面が多いものでした。VISMONIは、リストバンド型センサーで心拍数や消費カロリーといった運動データを自動で記録し、教員の手元のモニタリング端末に表示します。運動強度や心拍数をもとに、児童・生徒一人ひとりに適した運動負荷を目標として設定でき、無理のない指導が可能になります。
また、授業時間内の運動量や、単元を通じた変化を数値で確認できるため、これまで見取りにくかった努力や成長を、根拠とともに評価へ反映できます。記録や集計をシステムが担うことで、教員は生徒と向き合う時間や、指導そのものに注力できるようになります。
児童・生徒にとってのメリット|自分のデータで、運動を「自分ごと」にできる
児童・生徒にとっては、これまで見えなかった自分の運動が、数値として見えるようになります。持久走の心拍数の変化などをモニタリング端末で振り返れば、感想だけにとどまっていた振り返りが、根拠に基づく具体的なものへと変わり、次にどう動くかを自分で考えられるようになります。
速さや距離といった結果だけでなく、自分がどれだけ努力したかがデータに残るため、運動が苦手な児童・生徒も、自分に合った目標を持って取り組めます。こうした積み重ねが、主体的に学習に取り組む態度を育てます。
これらを支える仕組み
児童・生徒がリストバンド型センサーを腕に着けると、心拍数・体表温度・歩数・消費カロリーの4つのデータが自動で収集され、これまで記録に残らなかった運動の質が、数値とグラフで蓄積されていきます。

こうしたデータ活用は、授業のあいだ計測が途切れないことが前提です。しかし、前述のとおりグラウンドの通信環境は整っていないのが実情です。VISMONIは、OKIが長年培ってきた920MHz帯の無線通信技術により、この壁を越えます。障害物に強く遠くまで届くこの技術で、屋外のグラウンドでも通信が途切れず、基地局1台で40人のデータをリアルタイムに蓄積。授業を重ねるほど、比較できるデータがたまっていきます。

導入に必要な機材は、リストバンド型センサー・充電ボックス・基地局3点とPCやタブレットなどのモニタリング端末です。和歌山大学教育学部の教授と共同開発した授業手引書も用意されており、持久走やボール運動、陸上運動、体つくり運動など、さまざまな種目でのデータ活用に対応します。導入準備の負担が少なく、さまざまな体育授業にすぐに取り入れられます。

体育ICTソリューション「VISMONI」のご紹介[03分23秒]
実証実験で確認された効果
VISMONIに用いられている技術は、実際の学校現場での実証を経ています。和歌山市立小学校や大阪教育大学附属小学校では、目標とする心拍数を一定に保って走る持久走に取り組みました。速さや距離を競うのではなく、自分に合った心拍数を保つことを目標としたことで、運動が苦手な児童も、自分のペースで積極的に参加しました。

走り終えた児童からは、「最初にペースを上げすぎてしんどくなった」「心拍数を140くらいに抑えたら、最後まで楽に走れた」といった声が上がりました。速く走れた、頑張ったという感想にとどまらず、自分の走りを数値で振り返り、次への改善につなげる姿が見られました。
OKIは横浜のオープンイノベーション推進機関「横浜未来機構」主催のイベント「YOXO FESTIVAL 2026」に出展。体育ICTソリューションを活用した「みらいの体育」体験では、参加した子どもたちがOKI提供のウェアラブルデバイス(リストバンド型センサー)を装着。反復横跳びやパンチングマシンで、身体を動かしました。デバイスから取得した心拍数などの運動情報がディスプレイに表示される中、色と数字で自分の状態を確認しながら個人の運動能力に適した心拍数のキープにチャレンジした子どもたちや保護者からは、「上手くできた!」「流行りそう!学校の授業でも使ってほしい」といった声が、寄せられました。

こうした一人ひとりの取り組みの記録は、教員にとっても、指導と評価を支える客観的な材料となります。VISMONIは、体育の学びを、感覚だけに頼らないものへと変えていきます。
まとめ
GIGAスクール構想の進展により、データを活かした学びは、体育においても現実のものとなりつつあります。運動を見える化することで、これまで主観や目視に頼らざるを得なかった指導・評価に、客観的な根拠を加えることができます。
運動の質を示すデータは、教員の指導と評価を支えるとともに、児童・生徒自身の振り返りと自己調整を促し、個別最適な学びを後押しします。結果の数値だけで測るのではなく、一人ひとりの運動の質に目を向けることが、これからの体育に求められます。
OKIは、体育ICTソリューション「VISMONI」を通じて、こうした取り組みを支援しています。実証で確認された効果や、仕様・料金、導入の進め方について、お気軽にOKIまでお問い合わせください。
出典
※1 デジタル庁・総務省・文部科学省・経済産業省「教育データ利活用ロードマップ」(2022年)
https://www.digital.go.jp/news/a5F_DVWd
※2 スポーツ庁「新学習指導要領に対応した学習評価(小学校 体育科/中学校 保健体育科)」
https://www.nits.go.jp/materials/youryou/files/041_001.pdf
https://www.nits.go.jp/materials/youryou/files/051_001.pdf
※3 スポーツ庁「児童生徒の1人1台のICT端末を活用した体育・保健体育授業の事例集」
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop04/list/1398875_00001.htm
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