
OKI-EMSグループ Oneコネクトセールスプロジェクト「宇宙チーム」 左から
OKIアイディエス 村上 龍也、OKI 森本 さくら、OKIエンジニアリング 中村 隆治、OKIサーキットテクノロジー 工藤 真宏
従来の国家プロジェクトとは一線を画し、民間主導の宇宙開発、いわゆるニュースペース市場が立ち上がり、成長の兆しを見せています。今回は、OKI-EMSグループのOneコネクトセールスプロジェクト(注1)「宇宙チーム」のキーパーソンを紹介します。
幼少期からガンダムに魅了され続け、メカへの関心を原動力に大学では精密工学を専攻。就職氷河期の中、モノづくりにこだわった就活で苦戦していたところ、研究室OBから「OKI本体から分社する新会社で、一緒にユニークなプリンター開発をしよう」と誘いがあり、1996年に新たに設立されたOKIデータ(当時)に入社しました。
入社後はプリンターの実機評価を担当。その後、2~3年の経験を経て機構設計にも携わるようになり、やがてOKIデータの設計・開発現場で多くのプリンター開発に関わってきました。2018年にOKIアイディエス(EMSグループ会社)へ異動。EMSグループの営業メンバーを横断的に集めた「OneコネクトセールスPJ」に参画し、宇宙機器向け熱特性検証サービス「SimuValid™ (注2)(シミュバリ)」を考案・命名しました。現在はSimuValidのプロモーションを中心に、新規事業開発やグループ各社との連携にも注力し、宇宙分野という新たなフィールドでチャレンジを続けています。
SimuValidは、私自身がこれまでプリンター開発の現場で培ってきたシミュレーションや実機検証のノウハウを、宇宙機器の設計・開発へと応用したサービスです。真空環境を想定した熱解析シミュレーション、実機による熱特性のバリデーション(検証)、不具合発生時の部品レベルでの詳細解析の3つをワンストップで提供する画期的なソリューションです。また、EMSグループのOKIサーキットテクノロジーは、JAXAの認定を受け宇宙向けPCB基板の納入実績があること、OKIエンジニアリングは、スクリーニングなどで宇宙向け電子部品の品質向上に多くの実績がある事も大きなアドバンテージです。
SimuValidは、真空下での熱解析シミュレーションから不具合解析までをワンストップで提供し、ロケットや衛星搭載機器といった宇宙機器の設計・開発プロセス全体をサポートするサービスです。シミュレーションを活用することで、従来は実機試作を繰り返していた作業を机上で効率的に検討を進められるようになり、試作回数の削減や後戻りの防止に貢献します。さらに、宇宙空間を利用した通信や観測・監視といった社会インフラの発展にも寄与します。
プロジェクト発足当初は、市場ニーズの把握に苦労しました。転機となったのは、OKIアイディエスで毎月開催しているWebセミナーで「真空環境下における熱解析シミュレーション」を提案したことです。この発表に多くのお客様が興味を持っていただき、商品としての訴求ポイントや提供価値が見えてきました。また、組織横断型のプロジェクトのため、現在は窓口の一本化によるワンストップサービス体制の構築を推進しています。さらに、ニュースペース市場を牽引するスタートアップ企業は意思決定も非常に迅速なため、私たちもお客様のご要望に対してスピード感のあるアウトプットを心がけています。
SimuValidは、設計プロセスをパッケージ化したソリューションであり、お客様のニーズや技術課題に応じてメニューを柔軟に追加できる仕組みです。今後はセミナーなどのプロモーション活動を通じて現場のVoCを収集し、商品力をさらに高めるとともに、新たなニーズを発掘しビジネスとしての成功を目指します。また、個人的にはモノづくりへのこだわりから、設計シミュレーションにとどまらず、将来的には衛星の部品・モジュール製造までを受託できる体制を築くことを大きな目標としています。