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EMS(電子機器製造受託)=「下請け」は間違い? EMSが提供するサービスと類似業態との違いを解説!
EMS(Electronics Manufacturing Services)とは、電子機器製造受託サービスを意味する言葉です。すなわち、製造業(メーカー)の顧客から製品の設計や製造プロセスの一部または全てを専門企業が受託するもので、当社も提供しています。
EMSという言葉は他の事柄を指すこともあり、当社のようなメーカーの社内でも誤解や混乱を招くことがあります。そこで、企業内および企業間でのコミュニケーションを円滑に進められるように、EMSに関連する同じ略語や類似する言葉の違いや共通点を解説します。
目次
さまざまな「EMS」
EMSという略語が指す事柄には、Electronics Manufacturing Services(電子機器製造受託サービス)以外にもさまざまなものがあります。同じ「EMS」でも、環境マネジメントシステムやエネルギー・マネジメントシステムは、多くのメーカーで取り組んでいるため、略語ではどれを指しているのか分からなくなることがあります。そこで、他にどのようなEMSがあるのかを説明します。
日本郵便株式会社 国際スピード郵便(Express Mail Service)
日本郵便が提供する国際的な速達郵便サービスです。多くの国や地域への高速な郵便物輸送サービスを提供し、荷物の追跡や配達確認サービスも含まれています。
環境マネジメントシステム(Environmental Management System)
企業や各種団体が環境に与える影響を管理し、改善するためのフレームワークで、組織の環境目標の達成、法規制の遵守、継続的な改善を推進するための仕組みです。環境マネジメントシステムの国際的な規格としてISO 14001があり、多くの企業がこの規格に沿って、環境に関連する業務を進めています
エネルギーマネジメントシステム(Energy Management System)
企業や各種団体がエネルギー消費を監視、計測、制御し、効率的にエネルギーを使用するためのシステムです。これにより、エネルギーコストの削減、CO2排出量の削減など、環境や経済面での利益をもたらすことが期待されます。
以下、本項ではEMSという語を電子機器製造受託サービスの意味で使います。
EMS=「下請け」ではないのか?
他の企業から製造を請負うのですから、EMSは「下請け」と呼んでもよいように思えます。しかし、EMSは「下請け」と呼ばれません。それは、EMS企業がビジネスモデルを進化させ、顧客へ提供する価値を拡大してきたからです。
一般的な「下請け」は、委託元企業から材料や部品を支給され、委託元からの指示にしたがって、加工や組み立てなどの作業を行って納品する業態です。ここでは、「加工や組み立て」の作業のみが委託元への提供価値であり、下請け企業がプロセスを工夫する余地はあまりありません。特に、製造コストの低さだけで「下請け」を選択すると、新しい製品を製造委託する際の量産ラインの立上げやQCD改善指導などで委託元の業務負荷が高まることもあります。
これに対して、EMSは、設計や部品の選定・調達、アフターサービスなど「製造そのもの」以外のプロセスにも対象を広げています。それにより、顧客はたとえば次のような更なるメリットを享受できます。
・EMS企業が一括調達しているより低コストな部品を提案
・EMS企業が設計変更を提案し、製造のリードタイムを短縮
代表的な大手EMS企業である台湾の鴻海精密工業(Foxconn)などは、2000年代から、「IT機器の研究開発から小売りまでを一括して請け負えるだけの実力」(出典①)で、顧客企業の「非中核業務の代行業」(出典②)となり、今でも成長を続けています。すなわち、単なる「下請け」ではなく、顧客企業と価値を共創する業態が「EMS」である、ということができます。
【出典】日本経済新聞電子版
① 2012/7/16 「EMSは「下請け」じゃない、総合サービスと先端技術を駆使」
② 2014/8/19 「アジアTrend 鴻海の下請けパワー「隠れ自社ブランド」の実力」
EMSと類似する業態
EMSと類似する業態を指す言葉があります。以下の業態に厳密な定義はなく、同じサービス名称でも提供する企業によって提供範囲が異なります。傾向としては、単なる「製造下請け」から前後の工程へサービスを拡大しているといえます。
OEM
OEMとは、Original Equipment Manufacturerの略で、もともとは特定の製品を製造するメーカーを指していました。しかし、現在では、他の企業からの設計や仕様に基づいて製品を製造するメーカー、またはその製品自体を指すことが一般的です。一般的には、ブランド名を持たない製品を製造し、それを他の企業がブランド名をつけて販売する形態を指します。
ODM
ODMとは、Original Design Manufacturingの略で、製品の設計から製造までを一貫して行うサービスを指します。ODM企業は、自らの設計や技術を基に製品を製造し、他の企業ブランドでの販売を可能にします。つまり、特定のブランドオーナーのために独自の設計製品を作成し、その後、ブランドオーナーがその製品を自らのブランド名で販売する形となります。
OEMやODMは家電などの電機・電子機器のみならず、飲食品や化粧品・薬品などでも一般的な業態で、同じ仕様の製品がOEM供給され、複数ブランドで販売されていることが多々あります。そのため、競合と差別化したコア製品には向いておらず、製品ラインナップを拡充する場合によく用いられます。
DMS
DMSとは、Design and Manufacturing Serviceの略で、設計から製造までの一連のサービスを提供することを指します。前節でEMSは「製造そのもの」以外のプロセスにも対象を広げていると述べましたが、「設計」に重きを置いた呼び方がDMSです。
設計では、DMS業者が有している先端技術・ノウハウなどを活かして、顧客製品の高度な要件を実現することができます。また、その際の情報保護や知的財産の扱いなどに対して、顧客の意向が考慮されます。
つまり、DMSは、自社のコアとなる独自製品を開発・製造するのに向いているといえます。
ファウンドリー(Foundry)
半導体産業では、製造に特化した企業をファウンドリーと呼びます。ファウンドリーは、最先端の半導体を大量生産できる大規模な製造設備を有し、優位性を確立しています。代表的なファウンドリーは、TSMC、UMC(台湾)、サムソン(韓国)、グローバルファウンドリーズ(米国)などです。TSMCは日本の熊本に半導体工場を建設中です。
まとめ
ここまで、EMSに関する語について説明してきました。本項が、企業内および企業間でのコミュニケーションを円滑に進めるための基礎知識として参考になれば幸いです。
なお、OKIのEMS「Advanced M&EMS」も「単なる下請け」ではありません。どのような価値を提供しているのか? について「Advanced M&EMS」サイトで説明しております。
また、「いろいろなEMS」で触れた環境マネジメントシステムやエネルギー・マネジメントシステムに関する取り組みもサイトで公開しておりますので、ぜびご覧ください。
【OKIのEMS(設計・製造受託サービス)「Advanced M&EMS」】
https://www.oki.com/jp/Advanced-ems/
【モノづくり基盤強化】
https://www.oki.com/jp/dx/four-quadrant/smart-factory.html
【環境への取り組み】
https://www.oki.com/jp/eco/
【サステナビリティ】
https://www.oki.com/jp/sustainability/
【エネルギーに関する取組み】
OKIクロステック プレスリリース 2023/7/12「分散型エネルギーリソースを活用した実証事業を開始」
https://www.oki.com/jp/press/2023/07/z23028.html
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